ジョー先生のお悩み相談
「でも、どうするんですか? どうやってこれからやっていくんですか?」
カティアの急な質問にジョーとサイリアは黙った。
これまでは平均的に訓練を重ねてきたのだが、ここにきて専用の訓練に移行するとは思ってもいなかったので全くの白紙状態であった。
「そうだな……。とにかく、最大魔力量を上げないとどうしようもないな……」
「そうね……とにかく、それが一番早いかな? 後は魔力操作の訓練をしっかりとさせて上手にやらせないと」
ジョーの意見にサイリアも同意して、なにやら曇った表情を浮かべていた。
そのままお茶を飲んでいく2人はひと息ついて考えていた。
「師匠、それってどうやるんですか?」
「なんだ? カティアは冒険者学校とかで習わないのか?」
「エッ……」
気不味い表情を浮かべるカティア。
「お前、授業を聴いて無かったな……」
ジョーは正解を述べる、まさにその通りだった。カティアは友達の居なかった時代に、それほど真剣に授業を聴いていない。フィフィと仲良くなってから徐々に成績は上がっているのだが―――。
「まぁいい、とにかく魔力量を上げる事は容易では無いにしろ出来る。筋肉とか体力と一緒だ!
使わせて→寝て→回復させる。
これを繰り返させる。そうすると上がっていく。まずは、それからだな……」
「そんな単純なんですか、師匠?」
「単純じゃないよ。言葉にすると簡単だけど、実際に長い時間寝るし、その分周りも守ってやらないといけない。町のように安全じゃないからな……」
「それも、そうですね……」
カティアもどこか腑に落ちた表情を浮かべる。
(しかし、最大の問題は『魔力回復薬』を使わないといけない……)
1つ銀貨1枚もする魔力回復薬はこの訓練に欠かせない。
ジョー達にとって、銀貨1枚でも手痛い問題なのだ。積み重なれば大量消費でおカネが消えていく事は目に見えていた。
――そんな問題を抱えながら、ジョー、サイリア、カティア、メリーダは休憩を行い。
すこし、暗く難しい顔のまま時間を過ごす。
カティアもメリーダも黙りこくったジョーとサイリアに気を使って静かに過ごしていた
その後、ジョーがカティアとメリーダを引き連れ、剣術訓練へと戻っていった。
***
夜になり――カティア達も寝静まり、ジョーとサイリアは2人だけで明日の打合せをしていた。
「じゃあ、ジョー。明日から午前の訓練が終わったらフィフィを預かるわよ」
「いいよ、それで、俺は2人を見ていくから。サイリアはフィフィの魔力が無くなったら知らせてくれ」
「わかった」
「その後で俺が運ぶから。仕方ないけど、交代しながら訓練を進めていくぞ」
「それでもいいけど、洞窟内で見ておくの?」
「それがいいだろ?」
「じゃあ、1刻(=2時間)程度で交代ね」
「あぁ、それでいい」
焚火にあたりながら予定を確認していく――。
そんな2人だけの時間が終わると――。
「よし、終わり」
サイリアが声を出して、身体を伸ばす。
「あぁ、じゃあ寝ろよ」
「わかったぁー、もう寝るね」
どことなく間延びした声を出しながらサイリアは目を擦った。
【おやすみだな、サイリア】
壁に立て掛けてある蛇腹刀が挨拶をする。
「おやすみ、スネーク」
サイリアも声をかけ、静かに寝床に歩いていった。
ジョーは席を座り直し、ランプを近くに置いて静かに本を読み始める。
しばらく、そのまま焚火の音だけが洞窟内から聞こえてきた。
【そう言えば、ジョー……】
「何だよ、スネーク……」
【明日のメシはもう少し塩味を肉に効かせてくれ】
「おい、いま言う事か!?」
【バカモン、最近、焼き方が荒いぞ】
「急にグルメぶるなよ。食べなくても平気だろ――」
そんな不毛な会話が続くほど夜の見張りは暇になる。
会話をして眠気を飛ばすという効果もあるのだが、ジョーとスネークの会話は只の言い争いに近い。
そうこうしていく内に――また、会話も無くなり時間だけが過ぎていく。
***
夜も更けてくると――モゾモゾと寝床が動いた。
中から出てきたのはフィフィだった。
「なんだ、フィフィ眠れないのか?」
ジョーの問いにフィフィは「……ハイ」と頷いた。
そのまま、何かいわれるでもなく、自然とジョーの居る焚火の近くに歩いていくと、そのまま近くに座った。
ジョーは何も言わず、お湯だけを注いでフィフィに渡す。
「んッ……」、その咳とも取れる声に自然とフィフィは動かされ、金属の容器に入っている器を受け取ると、中から少し湯気が立っていた。
「身体を温めれば自然と寝つける……」
「ありがとうございます、師匠……」
「いいって……」
そのまま、また無言でジョーは本を読みだし、フィフィは少しずつ白湯を飲んだ。
再度の静寂。焚火のはねる音だけが聞こえていた。
「わたし、足手まといですよね……」
突然、フィフィがそう言い出した。
ジョーは顔を向けると、フィフィが落ち込んでいる事を確認する。
そっと、読んでいる本を閉じて――ジョーは1つ咳をした。
「ゴホン……。いいか、フィフィ、『足手まとい』という言葉には語弊がある――」
――ジョーはニカっと笑った。
「――『大足手まといだ』」と言った。
フィフィはその言葉に固まる。
しかし、ジョーはそのまま続ける――。
「でもだ、俺はフィフィの師匠である。だから、足手まといだろうがなんだろうが関係ない。師匠として助けるし、守ってやる。それくらい強いし、余裕があるからな」
と――笑みを送る。
それは――『全く問題ない』と言っているのと同じ事だった。
フィフィ、嬉しそうに頷いた。
「それで、なんだ、自信でも無くしたのか?」
ジョーは尋ねる。
「……はい、私が“一発集中型”の魔術士だってわかってから……迷惑だろうと思って。カティアちゃんにも迷惑かけちゃうし……。皆さんの訓練でもあるのに……、それに色々聞きました」
「だから、言ったろ。それくらい問題無いよ。修整は効くし、俺達もその道のプロだ、まかせとけ、……それに早めにタイプが分かって良かった。考えてもみろ、本番だったら危ない話しだか、訓練でよかったんだ」
「……はい」
「それに、フィフィ。1つ言っておく、いいか?」
ジョーは今迄に無く真剣な目を向けた。
「な、なんですか?」と彼女はたじろぐ。
「フィフィは“一発集中型”だから落ち込んでいるのか?」
「はい、扱いづらそうだと思って……」
「俺達も始めは焦ったよ。フィフィみたいに偏っているのは滅多にいないからな……10000人の中で1人か2人いればいいほうだ」
「そうなんですか?」
「あぁ、始めから高威力の魔力を込めるのは、それほどに難しい大抵は修行を積んで徐々に威力を上げていくもんなんだ」
「そうなのですか……」
「でもいいか? 1つの高い攻撃が出来るのも才能の1つだ。それを良い才能にするか、悪い才能だと思うかはフィフィ次第だ。『だったら伸ばせ、限界まで伸ばしてみろ。そうすれば全てが変わるぞ!』」とジョーは熱く伝える。
焚火の熱にも負けないようにしっかりと目を見て熱意を伝えた。
一芸に秀でていても才能を開花することなく消えていく人をよく見ます。
スポーツ選手にもいると思いますが、才能だけの存在は10年後によく消えています。
短絡的に考えて『才能に溺れる』と表現していいかもしれません。
ジョー達の場合、平均的な力が必要なのかもしれません。
~才能の無い作者より~




