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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第5章;弟子達との修行
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ドッカン型の魔術士

 ジョーとカティアは振り返る。

 大きな音がして地面が揺れる衝撃波を感じていた。


「なんだ?」と自然に疑問符の言葉を吐き出し、自然と音のする方を振り向いたジョーの見つめる先には土煙が上がっている。


 ジョーは立て掛けてある蛇腹刀と鞘を背負い「カティア、様子を見て来る」と言って駆けだした。


「し、師匠、わたしも!」と、カティアもジョーに続いていった。


***


 ジョー達はサイリアが魔術訓練で使っている場所に到着した。


 河原の1カ所に黒い塊、それも巨大な拳のような巨岩が出来上がり、周囲の岩を押し潰して粉々に砕き、地面を陥没させている。あまりに不自然に出来た光景にジョーは驚く。


 更に周囲を見渡す。すると――近くに声が聞こえていた。


 その一画でサイリアとメリーダが騒いでいる。そして――その騒ぎの中心の河原の地面にフィフィが倒れ込んでいた。


「サイリア、どうした!?」

 ジョーはすぐに状況を確認する。


「フィフィが、フィフィが魔術撃ったら倒れちゃって」と、動揺するサイリア。

 メリーダもフィフィに呼びかけているが返事は無い。

 ――意識が無いようだ。


「ちょっと退()いてくれ……」

 ジョーはそう言ってメリーダを退かし、頭に傷が無いか確かめた後、仰向けにした。

 

(顔面蒼白で呼吸も荒い、目の下に青黒いクマが出来てる……)

 ジョーは手袋を外し、そっとフィフィの首元に手を当てる。

(脈は速いな……でも、少し弱い)

「マナ欠乏症の症状だな。メリーダはフィフィの両脚を膝に乗っけて高くしてくれ。カティアは布を持って来てフィフィの頭の後ろに入れて、そのまま固定しておくこと。サイリアはこの場で周囲の警戒とフィフィの容体を確認していてくれ」

 ジョーは素早く命令し、立ち上がった。


「は、ハイ!」、「師匠、押さえるだけでいいの」

 メリーダとカティアは反応する。

「あぁ、できれば問いかけに答えるか確認してくれ。サイリア、後は頼んだ」とジョーは声をかける。


「わ、わかった!」


 そうして、ジョーは薬を取りに洞窟に駆けて戻った。


***


 暫くして――。


 フィフィは眼を覚ました。

「フィフィちゃん、大丈夫?」

 カティアはいままで心配そうに見つめていたので、すぐに彼女が目を覚ました事に気がついた。

 

 カティアの声に反応してジョーもサイリアもメリーダもフィフィの顔を覗き込む。

 全員が安堵の表情を浮かべた。


「大丈夫か……。まだ起きちゃ駄目だぞ」

「フィフィ、大丈夫? 心配したのよ」

「顔色は悪いようですが……、意識を戻したのは一安心ですね」


 それぞれに言われ、フィフィはまだ呆けていた。「……はい」としか反応をしない。


「よかった、心配したんだから……」

 カティアは心配そうにフィフィの手を取る。


「あれ? カティアちゃん、わたし……、どうしたの?」

「フィフィちゃんは“マナ欠乏症”になって倒れたの……」


 カティアはそう告げる。


“マナ欠乏症”とは――魔力を短時間で大量に消費すると起こる体調の変化も一部。魔力(マナ)とは生命力と直結する力に近い。魔力が無くなってくると、動悸(どうき)が激しくなる、息切れ、倦怠感、頭痛が現れ、重度になると意識混濁、失神などの症状も現れる。その為、素早く周囲いで治療を行い、魔力回復薬を飲ませる等の処置が必要な症状。


「フィフィ、サイリアから大体の事情は訊いた……――」

 ジョーは少し難しい顔になりながらフィフィに告げる。


 ジョーはフィフィが気を失っている間に粗方の事情を確認していた。

 

 事の成り行きは単純で、始めは昨日と同じく“走り撃ち”の訓練を行い、上手くいかないフィフィにサイリアが気分転換に属性魔術の練習をやらせた。

「気分転換だから思いきり撃っていいわよ」というサイリアの言葉の通り大型の魔術を“思いっきり”撃った結果。フィフィは“マナ欠乏症”で倒れたという事だった。


 事情を説明してフィフィは「覚えています。魔術発動した後で意識が無くなっちゃって……」と、寝くなりながら返事を返した。


「うん、それで“マナ欠乏症”になったフィフィに、魔力回復薬を飲ませて現在に至るという訳だ。身体の方は動きそうか?」


「ハイ……けど、凄く重く感じます」


「だろうな、回復しなくて倦怠感が残っているだろうからな……。しばらく、そのまま休んでいた方がいい」


 ジョーはそう告げるとフィフィは「……ハイ」と答えた。


「サイリア師匠、でも、なんでフィフィちゃんは属性魔術を撃っただけで倒れちゃったんですか?」

 話しの流れを聞いていたカティアがサイリアに質問をした。


「アッ、う~ん、多分、何だけど……」

 サイリアは口元を歪ませて言うのを躊躇っている。


「たぶん、フィフィは“ドッカン型の魔術士”だったんだろ?」

 と、ジョーは告げた。


「うん、たぶん、そうかも……」

「ジョー師匠、“ドッカン型”ってなんですか?」

 更なる疑問にカティアは質問する。


「魔術士のタイプの事だな。魔弾1つとっても人によって攻撃速度や威力、操作性が違うだろ? それのタイプの事だ。ドッカン型は別名で“一発集中(ドッカン)型”と言った方がいいかな?他には“速度重視型”、“操作重視型”、“中間(バランス)型”とかに分けられるらしい。詳しい事はサイリアに訊いてみろ」


 ジョーは目線をサイリアに向けた。

 それに呼応するように皆の注目が集まる。


「ジョーの言う通り、フィフィは“一発集中型”の傾向が強いタイプだと思うの。普通の人よりも1つの魔術に込められる魔力が多いのよ。持っている全魔力量を100だと仮定するとして通常の場合、1つの魔術に10か20が込められる限度だと思うけど、フィフィの場合は70から90も大量に込められてしまうのよ。だから威力が高い魔術が発動出来るの……」

 と、サイリアは告げた。しかし、難色を示し、悩ましい表情であった。


「師匠、それって良い事じゃないんですか? 威力の高い攻撃が出来るんですよね?」

 カティアは空気を察し、質問を重ねる。


「えぇ、でもね……。圧倒的な威力の攻撃だけど、“マナ欠乏症”になり易いの。通常であれば、連続魔術を行使したりして“マナ欠乏症”になるんだけど……。フィフィの場合は1回でなっちゃうのよね。それだと……――」


 そこまで言ってサイリアは止まってしまった。


「師匠?」

 カティアは心配そうに問いかける。


「サイリアの言いたい事はわかる。もし、依頼の途中で“マナ欠乏症”になってしまったら、それはフィフィのみならず。全員が危機を迎えるという事だ。普通なら、そうならない為に細かい休憩を挟んで、体調の確認をし、魔力量に余裕をもって冒険者は仕事を進めていく。退却の時の分も魔力を残さないとダメなんだ。でも、フィフィは1発に使う魔力がデカイ、当然に倒れる確率が増す。そうなると、不意に魔物に襲われる時に逃げる事ができないし、動けない者を抱えて逃げるのも大変な負担になる。怪我人を抱えている事と同等になるということだな」


 ジョーはそう付け加えた。

 依頼の最中にそのような最悪な場面に遭遇したら全滅の危険も出てくる。抱えて逃げても抱えている者は満足に戦う事も出来ない。例として5人組のパーティだった場。2名動けず、3名のみで警戒して進まなくてはならなくなり、負担も多くなると予想外の出来事で死ぬ可能性も高まり、最悪、見捨てるかどうするかの議論に発展し、判断を誤る事もあり、その結果として全滅または余計な犠牲がでるかもしれない。


 ジョーは夜の勉強会で弟子達に怪我や病気の対処について説明していた。

 怪我人の救助はその都度判断し、依頼を断念する場合に逃げる時の危険性についても説いていた。


「そう言う事になるのよ。高い威力の攻撃は戦局を変えるかもしれないけど……。その後の事まで考え無いと……フィフィも(みんな)も危険になっちゃうの」


 サイリアの発言に、「そうなんですか……」と、フィフィではなくカティアが落ち込んでいく。





フィフィの素養については――モノをよく食べるなど、色々と入れております。

魔術タイプのお話ですね。

同じ魔術でも威力や速度は違ってくると作者は解釈しています。

むしろ、唱えただけで同じ速度、同じ威力、同じ範囲の魔術は珍しいかと思っています。

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