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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第5章;弟子達との修行
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サイリアの魔術訓練~その2

 フィフィは走りながら的当てを開始していた。

 だが、走っているとは言えない。歩いていると走っている中間である『早足』で魔術の矢を放っていた。


 1つ目の的に当てて喜んだが、次の的に移行するまでの間に油断があり――過程での遅れが生じる。

 そして、2つ目に入る前に焦る。フィフィは焦って一生懸命に魔力を集め、何とか的近くに当てた。

 その時に油断。――結果、盛大に転んだ。



「うぅぅ……痛いよぉ……」

 泣きごとを言っているフィフィにサイリアは駆けだした。

 カティアも心配そうにのぞき込む。


「大丈夫、フィフィ?」

 サイリアはすぐに患部を確認した。傷は(てのひら)と膝にすり傷を負っているだけなのだが、血が(にじ)みでいていた。

「怪我をした患部を出してね……」

 サイリアがお願いすると、フィフィは涙目になりながら手を突き出した。


「水よ、集まり私に恵みを、…水流(ウォーターラッシュ)


 サイリアがそう唱えると、指先に小さな魔術陣が出来上がり、そこから水が流れ出る。傷を洗い流す程度の水流で血が滲み出ている部分に水を当てると、傷口が綺麗になる。掌の傷は浅い、膝の方が深いようだ。そのままサイリアは魔力を手のように使い患部を圧迫した。


「大丈夫?」

 サイリアは尋ねる、フィフィの顔色を伺いながらついでに患部の状態を確認している。


 ――フィフィは2度頷いた。


「よし、小石とか傷口に入っていないね。膝の方も大丈夫かな? 水で流れちゃったかな?」

 患部を確認しているサイリア。

 傷口に小石等を取らずにそのまま回復魔術をかけてしまうと、身体の中に石が入ったままになるので注意深く見渡していく。


「よし、『精霊達よ……かの者の傷を癒し、力を取り戻させよ……ミリード、フィフィ、ケルン……精霊氣回復(アルシヒルン)』」


 サイリアの回復魔術は傷口付近で淡い光を帯びて、フィフィの傷を癒していった。

 みるみる傷口が塞がり、そのまま(かさ)(ぶた)となって、皮膚が剥がれ落ちる。


「フィフィ、問題無い?」


「ありがとうございます……サイリア師匠」とフィフィは涙目を拭いてお礼を言った。


「そう、よかった」


 サイリアは優しく笑い、そして、立ち上がる。

 フィフィも釣られるように立ち上がると、もう一度頭を下げた。


「別にいいのよ、気にしないでね」と、サイリアは気恥ずかしそうに手を振る。


「師匠、フィフィちゃんの傷口を魔力で覆っていたけど、アレはなんですか? 魔力操作で何かしていたんですか?」


 様子を伺っていたカティアはフィフィが無事と解るとすぐに矢継ぎ早に気になる事を質問していく。


「ちょ、ちょっとカティア落ち着こうね。順番に説明していくから。まずは的当てについて確認を取っていくわよ。さぁ、並びましょう」


 サイリアは猪突猛進気味なカティアを制止させ、手を叩いて、話しを区切った。


――閑話休題。


 サイリアは1回目の走り的当てを終え。カティアとフィフィを前に仕切り直している。


「じゃあ、先ずは総評よ。カティアは少し焦りすぎね。魔術は呼吸(リズム)が大事よ。自分の想像を固めて、一定の間隔で放つ事が重要になります。魔力形成と魔力量の移行は特に自分の中の魔力の流れを意識しましょう。素早い魔力形成は重要な事ですが、魔弾の質も意識しましょうね」


「はい、次は気をつけます」とカティアはもう立ち直っていた。

 失敗し立ち直るまでが異様に早い。

(カティアは前向きね)とサイリアにはないカティアの精神性(メンタル)が羨ましかった。


「次はフィフィね。しっかりと落ち着いてやる事をやっていたけど、周囲の環境にも配慮しましょうね。特に魔術の撃ち終わりに隙が出来る事が多いわ。魔術士にとってそれは危険よ。足元も確認も怠らないで、もし魔物が迫って来たら、転んだままでは危ないから」


「はい……すいません」とフィフィはどこか暗く返事をする。


(フィフィはどこか気にしすぎね……)

 サイリアはカティアとは違い、考え過ぎる事の多いフィフィを何かしら可愛く思っている。


「それに2人共。走っていると魔弾の速度と操作性が落ちているわよ。この訓練はいかに走りながら魔術を放つ事が出来るかの訓練です。普段の的当てと変わらない操作攻撃を心がけましょう」


「師匠、質問です。魔術って走りながら撃つ意味はあるんですか?」


「カティア、いい質問です。魔術とは集中を要するものですが1カ所に留まって放つよりも走りながら放つ事の方が重要です。例として大猪を森で見かけたとしましょう。攻撃が外れた場合、逃げるとします。その時にその場で魔術を放つのと走りながら放つのでは、その後の意味合いが違ってきます。その場から放つのでは発動する間に森の奥に逃げてしまいます。すると命中する確率が極端に減るのです。しかし追いかけながら魔術を放つ事が出来れば仲間の牽制にもなりますし、なにより魔術の操作性を自分の目で確認出来ます。難しいかもしれませんが、走りながら魔術を放つ事が出来れば応用力が増すのです」


 サイリアは先生が説明するように質問に答える。


「でも師匠。学校ではその場で放つ訓練ばっかりしていますよ?」


「それは、学校はあくまで基礎を習うのよ。でも、動かない的をいくら当てても実戦で使えません。一昔前なら魔術士は動かす、その場に来た敵に魔術を発動すればよかったのですが、最近の主流はもっぱら、放つ&走る、です。撃って移動を繰り返す魔術士が増えているの、せっかく魔術の矢には自身で操作できる利点があるのだから使わないと損よ」


「そう言えばそうですね……」と、カティアは納得した。

 その横でフィフィはカティアに話しかける。

「魔術小銃の使用とは違うね……カティアちゃん」

「フィフィちゃんもそう思うよね。学校の訓練って古いのかな」

「うん、そうかも、基礎訓練でそんな事言われなかったし」

「だよね。そう言えば木の人形を倒しても意味無かったのかも……」

「うん……」

 2人でそんな会話を繰り返していく。


「ほら、学校はあくまで基礎よ。冒険者としての基礎を学ぶ所なの、全部は教えてくれないのよ。さぁ、繰り返しやっていくわよ」

 と、サイリアは手を叩いて2人の会話を止めた。


「あ、師匠。その前にさっきの魔術の説明をお願いします」

 カティアは何かを思い付いたように質問した。


「あぁ、そうね。“魔術手(マジックハンド)”の事かしら?」

 サイリアも思いだしたかのように頷いて首を傾げる。




やはり魔術は移動して放つ方が効率的です。

特に魔弾は操作出来る利点もあり、銃のように外しても後から修正が効く設定にしています。

作者は『魔法』ではなく『魔術』として考えている思想の違いがあるのかもしれません。

そこは追々どこかで書けたらと思っています。

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