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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第5章;弟子達との修行
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訓練~崖登り

 サイリアは水精霊(ウィンティーネ)を召喚して、早速、ある命令をした。

 川の水を集め、空中に長方形の立方体を造り、水そのものを浮かした。魔術で言えば“水壁”、“水膜”と呼ばれる防御魔術の類だ。

 それも普通の水では無い。

 水精霊(ウィンティーネ)によって水の特性が変わっている、そう――粘性がもの凄く上がっていた。

 その巨大なマットと化した水の塊はカティア達の特訓の安全装置として働いている。


 ジョーは登攀(クライミング)の訓練において留意せねばならない事がある。この訓練の始めは誰であれ崖から落ちるのだ。

 その時に、そのまま落ちるのと、トップロープで落ちるのでは危険度が違う。特に崖の角度が90度以上の場合、ロープの反動で岩に叩きつけられるのだ。

 なので、今回はこの訓練でそのまま地面付近まで落ちて貰おうと考えていた。


「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……――」

 

 フィフィが崖の途中で垂直落下をした。そして水の塊に落下し、ボョ~ンと塊は振動し、そして優しくフィフィを包み込む。後は自然に水の中を移動して下の地面に落ちてきた。

 

「ゴホっ、ゴホっ」と(むせ)た声を上げながらフィフィはそのまま下を這い付くばり水の塊の無い方へ移動していく。


「フィフィ、惜しかったわね、さっきより進んでいたわよ」

 サイリアが水精霊(ウィンティーネ)のウィンちゃんを伴って駆け寄ってきた。


「はい、サイリア師匠。頑張ります」

 フィフィは返事をして頷いた。


「そうよ、何度もやるの、その前に少し休憩しなさい。濡れちゃっているから、そこの布で拭いてね」

 サイリアは優しくフィフィを気づかう。

 


「よし、フィフィもいい感じじゃないか? いいぞ、いいぞ」

 ジョーは全体の監視の為に少し離れて様子を見ていた。

 しかも、ただ待っているだけでは無い。スクワットをしながら肩に大きめの岩を持ち上げて、さらに背中に籠を背負い、石の重りを追加しての足腰の修行も同時に行っていた。


 訓練の為に来ているので当然、ジョーも自分を鍛えている。

 そんな、最中、またも悲鳴が聞こえ、水の塊が激しく震動した。


 下から出てきたのはメリーダだった。

 それも水に濡れて、ベッタリと衣服が身体のラインを浮き出していた。


「よし、いいぞ……」とジョーは頷き、両方の鼻を膨らませて、その姿を確認していた。

 眼を細めている為に完全には表情を読み取る事が出来ないが、邪念は出ていた。


***


「もう、無理ぃ~」 

 カティアは登れない苛立ちから声を上げた。

 3名は初めて行う崖登りに悪戦苦闘で、現在は休憩中だった。

 かれこれ2時間ほど登っては落下する事を繰り返し、その度に身体が濡れていくが、誰も最後まで昇りきる事は出来なかった。


「カティア、弱音はいけないぞ。出来る事も出来なくなっちゃうからな」

 ジョーは濡れた髪の毛と顔を布で拭きながらカティアにアドバイスを送る。


「でも、師匠。高すぎます。もう少し低いのから始めたい……」


「おいおい、カティア、いつもの強気はどうした?」


「でも……。手痛いし、途中で力が抜けて落っこちるし……、何とかしようとするけど……」


「まったく、……じゃあ、手本を見せてやるよ。それに俺は“手も使わず”に登ってやる」

 ジョーが虚勢を張るように宣言をした。


「え~、本当ですか? スネークさんを使ってもダメですよ」

 カティアを始め、フィフィもメリーダも懐疑的な目を向ける。


「なに、自分の力だけで登ってやるよ。休憩が終わったらな!」

 ジョーは自身満々に弟子達に答えた。


***


 ジョーは崖の前に立つ。宣言した通り、手には何も持っていなかった。

 それどころか、道具も何も用意されていない。布の服だけを来ている、生身の状態である。


「じゃあ、いくぞ……」

 ジョーは弟子達とサイリアが見守る中で静かに崖に歩を進めた。

 そして、何事も無く――右足を崖に置いた。


 スッとジョーの身体が持ち上がる。当然、手を使っていない。

 次にそのまま左足を伸ばした。

 崖の上に出された左足は同じ様に崖に張り付き、そしてジョーは、そのまま右足を離し、崖を歩き出す。


 宣言した通りに手を使わず――垂直に崖を歩いている。


「エッ、なんで?」、「わぁ~、わぁ~」、「普通に歩いています……」

 カティア、フィフィ、メリーダはそれぞれ驚いていた。

 

 ジョーはそんな声も気にすることなく、脚を交互に出して岩崖を登る姿は錯覚を起こしたと勘違いする程の光景で、それは髪が垂れ下がってなかったら重力が狂ったと勘違いしてしまう動きだった。

 カティア、フィフィ、メリーダは茫然とその様子を見つめているしかない。


 そのまま険しい崖をスルスルと“歩き出す”ジョーは最後まで登りきった。


「どうだ!! 手を使わなかっただろ!?」

 下にいるカティア達に大声で結果を伝える。


「師匠おぉぉぉ! どうやったのぉぉぉ?」

 カティアは大声で返事を返した。


「説明してやるから待っていろ!!」


 ジョーはそう言うと、また同じ様に崖を歩き出した。


***


「よし、いいか?」

 ジョーは弟子達を集めジョーが行った崖登りの種明かしを行う。


「最初に言っておくが、アレは魔力操作と肉体強化魔術で行っているだけだ。決して特別な魔術は使用していない」

 ジョーはそう言ってカティア達に聞かせた。


「え~~、師匠、でも肉体強化魔術であんな事出来るなんて習っていませんよ?」

 カティアの発言にフィフィもメリーダも頷く。


「まぁ待て、カティア。この方法は誰でも習得可能だ。現にカティアだってコレに近い事をしている。後は熟練度の問題なんだよ」


「そうなんですか?」


「そうだ、簡単に言えば、肉体強化魔術は少しだけ使って、後は魔力操作だけで登った事になる」


「エッ、でも、どう言う事ですか、師匠?」


「それも説明しよう。コレを使えば様々な事に応用が出来る……」

 ジョーは意味深に含みをもたせて告げた。




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