訓練2日目
ジョーが1人で焚火の番をしていると砂時計の砂が全て落ちた。
それに気がついたジョーは木製のコップに茶葉を入れ、お湯を注いだ。
そして、それをそっと茣蓙に置くと立ち上がる。
そのまま、サイリアが寝ているテントの脇にスッと忍び寄った。
「サイリア、起きているか、交代の時間だぞ……」と小声で言うと、暫くしてから中からモゾッと音がした。
それを確認してジョーは元の場所に戻っていく。
暫くして、彼女はテントから眠気に抗うように目元を擦りながら出てきた。
細い目をして、まだ、ボーとしている。
そして、静かにジョーの傍に座ると、そのまま動かず顔を天井に向けたまま止まった。
「サイリア、コレでも飲めよ。そして顔を洗え」
ジョーの言葉にサイリアは頷いた。
無言のままお茶の入った器を受け取ると、また、呆けて、静かにお茶を飲み、そして動かなくなった。
――ジョーはその間も静かに本を読んでいた。
「ちょっと……顔…洗ってくる」
サイリアが立ち上がる。
「あぁ、これを持ってけ……よ」
ジョーはランプに入っている蝋燭を取り出して焚火の炎で灯りつけると、それをサイリアに渡した。
「んッ……」
ランプを受け取りサイリアは外に行く。
――そして、ジョーは1つ大きな欠伸を掻いた。
暫くして戻ってきたサイリアは眼を開け、道具箱から手鏡と櫛を手に取り上手く鏡を立てかけながら髪をすきはじめた。
「もう、大丈夫か」
「うん、寝ていいわよ」
ジョーは本を閉じて、そっと立ち上がる。
「じゃあな、何かあったら呼べよ」
「うん……」
ジョーはそのまま歩いていく、そして“サイリアが寝ていた場所”のテントに入って――行こうとしたが。「おい、どこに行く」とドスのきいた声と殺気が同時に飛んでくる。
「いやな、ただ……、寝ようとしているだけだが……」
ジョーは小声で自分のこれからの行動を話した。
「ジョーは奥の場所でしょ?」
サイリアはそう言う。
奥の場所とは藁束に布を敷いただけの雑な造りの寝どこだった。
「ほら、そこって虫よけの網が無いだろ? 寝る時に虫に刺されたら大変じゃないか?」
「大丈夫よ、“防虫灯火草”の効果を信じなさい。ほら、早く出る!」
サイリアは杖で指示を出しながらジョーを牽制した。
ジョーは思う、この先にはメリーダが猥雑に寝ているかもしれない、寝付き良く寝ている可能性もある。そこの妄想は無限である。
――だた、確認したいのだ。
しかし、ごく自然な流れで寝床に入る事は出来ないと男女不平等な現実を知った。
ジョーはそのまま洞窟の奥で小さく毛布に包まり、寂しそうに「クスン……」と泣き声を上げ静かに寝入る。
※※※
ジョー達は日が昇り、暫くしてから全員が起きた。
朝の支度を整えた後でスープとパンと野菜で出来た軽食を食べる。その後で外に出て、柔軟体操をして訓練前の準備を整えていた。
「これから、朝の訓練を始める」
ジョーの掛け声によってカティア、フィフィ、メリーダは並んでいた。
サイリアも横で様子を見守る。
「それじゃあ、昨日の道を走る、その後で素振り、そして休憩と朝食だ。その後で次の訓練の“崖登り”をやってもらう。午後は魔術訓練と剣術訓練、後は各自の自主練習だ。それが今日の予定となる。いいか!」
ジョーの問いかけに「「「はい!!」」」と気合いの入った返事が返る。
「よし、行くぞ、遅れるなよ!」
ジョーがそう言うと訓練が開始された。
――険しい勾配の山中を駆けまわるジョー達。
――昇り降りの激しい斜面をジグザグに移動し負荷をかけていく。
――「もっと速く」、「フィフィ遅れるな!」とジョーは大声を飛ばしていた。
走り終えると、水を飲んで、疲れ切った身体で“舞流鈍素振り”が開始された。
汗だくになりながらも懸命に訓練を重ねる。
そして――。
「もう無理、師匠、動けない」
カティアは岩に腰を降ろして静かにそう言った。
「はぁッ、はぁッ、はぁッ、はぁッ……」
フィフィは息切れしている。
メリーダは呼吸を整えて立っていた。
「よし、朝食の用意をするから、ここで待っていてくれ」
ジョーは涼しい顔で、疲れているサイリアを呼んで拠点に戻っていった。
***
河原の中腹で焚火をしながらジョー達は朝食を摂っていた。
「おいちぃ~♪」
カティアは嬉しそうに声を上げる。
「これも美味しいよ、カティアちゃん」とフィフィも声をかけながら皿に大量の肉を盛って食事を進めていた。
目の前には長い枝を上部で交差し、ソコに縄で鍋が吊るされ、事前に下準備を整えていた朝食が振る舞われていた。それもフィフィの為に大量に――である。
《※サイリアが朝方準備を始めた》
採れたての串に刺さった川魚の塩焼きと“ケイバブ”(=ひき肉と香辛料を混ぜ、細長く形成して焼いた料理)、スープでの朝食に皆で舌づつみをうった。
河原で行う豪快な料理だが、自然の場景によってさらに美味しく引き立てられていた。
「サイリア師匠、川魚なんてどこで採ってきたんですか?」
「昨日の内にジョーが滝壺辺りにある罠場に筌を仕掛けておいたのよ」
「“うけ”って何ですか?」
「そっか、カティアは知らないのね。筌は細長い籠で、木の皮を編んで造る漁具なのよ」
「へぇ~。見てみたい!」
「後で見られるわよ、それより、食べちゃいなさい」
「は~い」
カティアは美味しそうに川魚の塩焼を食べていく。
「食べたら、休憩して次の訓練を始めるぞ」
ジョーのそんな声が河原に響いた。
***
ジョー達は休憩後、段々滝の近くにある岩崖のすぐ傍まで来ていた。
「よし、これから、崖登りの訓練を始める。簡単に言えばこの崖を上るだけだ……」
ジョーが指した先には30メートル以上ある高い崖があった。
勾配は90~95度以上、ほぼ垂直の急勾配である。
簡単とはいかないと、カティアを始め、フィフィもメリーダも思っていた。
「途中に区切りがあるだろ、崖の中腹(15メートル)まで昇り降り出来るようにしないといけない。冒険者の間で難しい悪路は 勾配の激しい崖、沼地の泥場、視界の悪い道だ。特に崖はこれからの冒険者として生きる上で乗り越えるべき課題の1つとなる。最低でもこの位は楽に出来ないといけないぞ」
ジョーのその言葉に、3名の弟子たちは茫然と上を見上げたままだ。
(まぁ、最初はそうだよな……)とその様子を確認しながらジョーは頷いた。
「この課題を乗り越えた時にお前達は更なる成長を遂げるだろう。さぁ、手袋をはめて上るんだ」
ジョーの言葉に返事が――返って来ない。
弟子達は目の前にある岩崖はとても上れそうにないと思っている
そんな事を関係無いとばかりに――
「よし、サイリア、“水精霊”を召喚してくれ、昨日の打合せ通りにやるぞ!」
と、ジョーの声が辺りに響いた。
男女は同じ場所に寝られないのか……それは……ノーコメントです。
しかし、女子の寝姿は見ていいのか悪いのか作者に判断はつきません。
化粧が全く無い状態です。その状態を見る事になるんですよ。
はっきり言えばキツイかもしれません。
漁具は筌を始め様々です。カニ籠でもいいのかもしれません。
しかし、釣り具より筌のほうが魚は取れます。冒険者でも節約は大事です。ジョーの場合はフィフィがいるからです。緊急措置と言う事です。




