装備論!!!!!
ティルはもの凄い勢いで装備のデザイン画を紙に書き始めた。
フィフィを見ながら、身体の大きさを描写して、紙に殴り書きしていく。
ある程度纏まった所でジョーが尋ねた。
「それで何を基本の型にしていく?」
ティルは墨筆を置いて、笑顔でジョーをみると――
「やっぱり、『ガンベゾン』っす。それが、“その子”にはあっていると思うっす」
と告げた。
『ガンベゾン』とは――別名『クロス・アーマー』と呼ばれ、布製の鎧である、甲冑を着る前の下着として用いられた歴史があり、防具程の頑強さは無い。
「ガンベゾンか……。軽いからフィフィでも十分に動けるけど……防御力が無いな」
ジョーは遠くに居るフィフィを見つめた。
フィフィは、なぜか薄らと笑っている。どうやらピンと来ていない様子だった。
「師匠、“ガンベゾン”って何ですか?」
カティアが手を上げ突然に質問をする。
「あぁ、布製の鎧の事だ。昔の戦争時に甲冑の中に着ていた時代もあったんだよ、今もある地域では愛用されている品さ。キルト加工されていて、中に綿とか羊毛を詰めて防寒性を高めると同時に衝撃も吸収してくれる物だよ。『クロス・アーマー』系の鎧だな。中に金属片とか入れて防御力を上げたりして使い勝手はいいんだよ」
「へぇ~」とカティアとフィフィは感心した。
「その通りっす。ジョーさん、もの知りっす」
「それはいいとして、圧倒的に防御力が無くないか?」
「まぁ、待つッす。まだ基盤の段階っす。わたしもそのからの改良を昔から考えていたっす」
ティルは自信ありげに書いていた紙を机の中央に置いた。
「それじゃあ、聴いて欲しいっす。わたしも廉価な装備の改良論に頭を悩ませていたっす。始めの装備の基本は軽く、頑丈に、そして安くっす。でもソレを求めるには何かを犠牲にしなくちゃいけないっす。ホーバーク系の鎖鎧やブリガンディーン系の鋲打ち鎧は安いっすけど衝撃吸収が弱いっす。頑丈じゃないっす。特に魔物は巨大っす、押し潰されてしまって致命傷になってしまうっす。そこで頑丈+衝撃吸収を両立出来ないか思案していたっす」
「まぁ、それは重要だな。フィフィは足が遅いから魔物に追いつかれる危険がつきまとう。でも布の鎧じゃ頑丈さは皆無だ、その前の問題だぞ?」
ジョーはさらに質問した。
「わかっているっす、そこで、この店に来る前に『南部甲冑』を見てきたッす。ソコにヒントがあったす」
「南部にいったのか? 独りでか? 遠いぞ!?」
ジョーは驚く、自身の出身地である場所はブリューシュ王国から遠く、旅路はそれなりに危険がつきまとうからだ。
「そおっす。ジョーさんは南部出身なんっすね! その綺麗な黒髪はそおっすね。……大変だったっす。船に揺られて何日も掛かったす。でも南部甲冑は有名っす、一度見ておきたいとおもったんすよ!!」
ティルは喜々として喋る。
ジョーは思っていた。この性格なら危険も顧みずに行動するだろうと。
「わかった。それで、何を見て参考にしたんだ?」
「ソレを説明するっす。甲冑造りの工房に、お邪魔させてもらって、色々と教えてもらたっす。南部の人達は親切だったっす! そこで新しい装備文化に出会ったっす」
自身満々にティルはジョーに言う。
(それは、ティルが美人だったからだよ。工房は男ばっかりだもんな……)
と話しを聞いて無粋な事を考えていた。
「その時、お師匠に教わったっす。『札を使えって』。だから今回は『板札』を使ってクロス・アーマーの補強をするっす。その技術を応用すれば強固な鎧で衝撃も吸収されて、軽くて済むっす。フィフィちゃんもこれなら着られるし動き易いはずっす。それに成長に合わせて取り外しも可能っす。生地が布製でいくらでも縫い合わせも可能っす」
紙に書き出して説明をしていくティル。
「なるほどな……さすが、ワシの孫だ!」
トムソーヤがそう、関心をしている脇でサイリアは「ジョー、“イタザネ”ってなに?」と質問をしていた。
「あぁ、板札は砂鉄を鍛えた鉄板の事だよ。鋳造式の鉄板より強度も衝撃にも強い。それを加工して、魔術陣を1つ1つ彫って、板札に穴を開けて威毛で胴の形に縫い合わせていくのが『南部甲冑』の基本的な造りだよ」
「へぇ~大変そう」とサイリアは感心していた。
「そおっす、南部甲冑は芸術品っす。札をとってもイヨ札、本小札、平小札等々用途によって種類も多かったっす。それに“威毛”も素晴らしかったっす。強度があって切れにくく、そして色の種類も豊富っす。緋色、紅色、紫色、黄色、藍色、緑色、茶色、もう、もう本当に! すっごい綺麗だったす!」
ティルは興奮しながらジョー達の話に割り込んで来た。
その熱意に若干退くジョーと他3名。
「まぁ、いいから、わかったから、それでどこを重点的に守る予定だ?」
ジョーは話しを進めようと質問をした。
「そおっす。今回の場合はそこが問題っす。フィフィちゃんはどこを守って欲しいっすか?」
ティルは目線をフィフィになげかけた。
フィフィは突然の質問に困惑しながらも――「えっと、腕とか、肩とか、胸とか、腹とか、首とか、背中とか……」と纏まっていない言葉を並べていく。
「そおっすか……それじゃあ、かなり重くなってしまうっす……」
その言葉にティルは困ってしまった
「じゃあ、俺が決めていいかな?」と、ジョーは突然会話に割り込んで来た。
「ジョーさんはどこを重点的に守った方がいいと思うっすか?」
「俺は、“腹”だな。身体の前の部分が特に重要だ。そして俺が思うに女性の場合、そこをまず守った方がいい、当然、胸もだけど、やっぱ腹は大切だ。内臓と“子袋(子宮)”があるからな……」
ジョーがそう言うと、カティアは直ぐに「師匠!それはセクハン発言です!」と抗議していた。フィフィも身を縮ませ恥ずかしそうにしている。サイリアでさえ、「ジョー、セクハンよ!」と怒っていた。
「いや、セクハンじゃないね。これは事実として言っている事だ。引退した女性冒険者の1~2割は子供を産めない身体になっている。これは他の職種の女性と比べてだ。あきらかに大きい数字なんだよ。これに関しての研究本が出ていたんだよ、調べてみたら、その冒険者達は過去に腹に大怪我を負って回復したが機能が失われたって研究書にも書いてある事だ。サイリアも知っているだろ? ギルド情報誌に書いてあった事だ?」
「え~と。書いてあったかしら?」
「忘れたのか?」
「仕方ないでしょ、全部は覚えてないわよ」
「ワシは覚えているぞ。たしか……“ナイルアットホテイプ研究会”の資料に女性冒険者の将来についての資料として書かれていたわい。傷は回復しても内臓の機能までは完全に回復出来無い可能性がある、だったか?」
トムソーヤがそう説明する。
実際に回復魔術は完全に傷を塞ぐ事は出来ない。ある程度の自己治癒力の促進と捉えていた方が的確かもしれない、傷ついた臓器の負傷は直すが壊れてしまった機能まで取り戻すことは出来ないとトムソーヤは言っているのだ。
実際に冒険者の心臓が魔物に貫かれた場合、すぐに回復措置を施しても死んでしまう。
回復魔術とは基本。対象の体力がモノをいう、生命力とも言い換えてもいい。表面の筋肉がえぐれても生きてさえいれば助かるが、致命傷の場合は助からない。
それは生命をやりとりする場に身を置く者達にとって当然の知識だった。
「あぁ、それだ。自己治癒と魔術効果の研究についての記述に書いてあったんだよ。俺が言いたいのは、将来にむけてフィフィが家庭を持つときに怪我で子供が産めない苦労はさせたくないんだよ。だから可能性を少なくしたいの! それはセクハンじゃないからな!」
ジョーは語尾を強めて宣言した。
「わかったっす! ジョーさんの熱い意見も取り込んでもう少し実用的に考えてみるっす」
ティルは頷き、納得していた。
考察。
やはり日本式の甲冑を出したい作者です。
なんであるの?と疑問に思いの方――後々説明というか話が繋がります。ローファンタジー選んだのもこれが関係しています。
戦国甲冑といえば、作者は安土桃山時代の甲冑が好きです。
平安時代、室町時代もイケますが。やっぱり進化して改良して遊びがある時代ですから一番実用的&装飾がいいと考えています。
江戸時代の甲冑は見栄えと統一感で気取っている感じがするかもしれません。
やはりカブキ者のように黄金甲冑を作る心意気の時代でもあります!!
まぁ、そんな話は大半の方には関係ないでしょうけど(泣)
そのうち南部の成り立ちも説明する予定です。
考察2。
ジョーは腹を守れと言いましたが、人間はアバラで肺と心臓は守られています。ついでにいえば頭も頭蓋骨がある訳です。
しかし、腹部は守っていません、筋肉のみです。
そんな状態で女性が腹を攻撃されたら大事な臓器が傷つきます。これはあたりまえです。
実際に内部損傷で子供の産めない人もいると思います(偏見では無い)
女性冒険者の立場からするとどうなのか?という、考えて欲しい考察です。
フィフィは13歳のピチピチ(死語)です。将来がありますし、体が出来上がっていないので力もそれほどでもないかと思います。その為に『南部甲冑』が出てきました。
軽さや、頑丈さなども考慮しなければいけないだろうと思います。
そういう話をこの章では進めたいかと思っています。簡単にいえば修行編です。




