装備論!!!!
ジョーは、その後も質問続けていった。
ティルはそれに臆することなく答え続ける。
――そして、一呼吸置かれる。
「じゃあ、ティル、1つ聞きたい?」
「ジョーさん、今更何をっすか?」
「いや……ティルはそれなりの知識を持っているし、考え方も俺に近いような気がする、でも……なんで装備に装飾しようとする。魔物を相手にする時に、それは“不要”だと思うんだ。でもティルは必要だと思っている節がある」
「う~ん、難しい質問っす。こればっかりは信念に近いっす。ジョーさんの考えは十分理解しているっす。『機能性の追求』は防具の1つの形っす、機能性があってソレを基本に『汎用性の防具』が生まれるっす。それは正しいっす。でも……防具の可能性を潰しているっす」
「可能性?」
「そおっす。ちょっとこっちからも質問したいっす。彼女に……」
ティルは向かいに座っているサイリアに目線を向けた。
「私に?」
急に話題を振られサイリアは驚いていた。
ティルは頷き、真っ直ぐサイリアを見つめた。
「じ、じゃあ、いいけど……」
「良かったっす。サイリアさんはジョーさんと組んで長いっすよね?」
「まぁ、それなりに……」
「それじゃあ、思わなかったっすか? 派手な色のマントが欲しいとか……装備も華やかにしたい……とか。思わなかったっすか? 始めの頃とか……」
「まぁ、それなりに……思ったけど……。でも長くやっていると、あると思うんだけど魔物が匂いに敏感で匂い消しとか使わないといけない状況になったりして、そういうの使っちゃうとシミが出来て汚れが落ちなかったり、長い事仕事していると当然、汚れてしまうし、実用性とか効率とかを追求しちゃって自然と黒系のマントを選んじゃうのかな? 装備も動き易さとか重さとか色々気にして簡略化していったわね。だから既製品に頼るとか考えちゃって……」
サイリアは過去の出来事を思い出し、色々と喋り出した。
「そうっす。魔物退治において常に防具も進化しているっす。でも、結局、『機能性』に落ち着いてしまうっす。父ちゃんの店で何度も見たっす。女性の冒険者が名残惜しそうに華やかな柄を諦めるのを……、でも、その時に思ったっす。それって『可能性の放棄』だと思ったす。マントも裏地に華やかな色を使うとか、状況によって色が変わるとか、あってもいいと思うっす。防具もそうっす、表面の色の変化が出来ればもっと状況に適応出来ると思うっす。装飾も派手にするだけじゃ無く、意味を持たせれば変わっていくっす。……でも現状で進化を止めているっす、それ以上考えていないっす。生産性とかカネに絡む、そこまでの過程で職人は実用性に走ってしまうっす。オシャレもしない、装飾も無しっす、それが悲しいっす。独りでは考えつかない事でも皆で考えれば可能性は広がるっす。新しい魔物の素材や新種の鉱石の可能性が見えているのに、その利用方法が変わって来ないっす、“そうした方が無難”になっていっていると思うっす。わたしは武器も防具も過渡期入ってくると考えているっす。無駄な部分も考えれば新しい何かに変わると思うっす」
ティムは目を輝かせながら力説する。
――カティアはその言い分に拍手を送った。
――サイリアもフィフィも拍手を送る。
「なるほど……だから、可能性の放棄ってわけだな……」
ジョーは納得した。
同時に難題を克服する事も考えついていない理想論のような話しだと思えた。
なにより、多くの課題を残している――
「でも、それって犠牲も大きいよな? なにより冒険者側の負担がデカイ。現行の防具造りの大半は鋳造方式が一般的だ。型に嵌めて金属を溶かしたものを流し生産する。これ簡単で生産方法が確立されている事は間違いない。それによって値段が決まっているからだ。でもティルの方法は開発費を除外しても、完全に個人注文品の品ってことだな? それじゃあ必然的に1つの物の値段が上がり、手が出ない品が出来上がらないか?」
「ウッ……そこは痛いところっす。こっちとしても赤字で売る事は出来ないっす。店が潰れたら夢どころじゃないっす……」
彼女は落胆していた。理想を語るのにはカネの問題もクリアしていかなくてはならなかった。
初めに語った若い冒険者でも気軽に買えるような装備は揃えられないという現実がある。
「そうだろうよ、でも、そもそもカネの無い冒険者は買えない装備品だ。金持ち相手でも商売するのか? 装飾の部分もカネがかかるだろ? それはカネの無い冒険者はオシャレ出来ないって事でもあるだろ? それに派手な装備で魔物が寄って来て命を落としたらどうするつもりなんだ?」
「……その……。まだ……結論が出て無いっす」
「理想を語るのはいいけど、現実も見た方がいい。夢を持たせて……破れ死んでいく者が多い世界だ……」
ジョーの重たい言葉はティルを打ち砕く。先ほどの勢いは無くなり小さくなってしまった。
「ジョー、あんまり孫をいじめないで貰おうか……」
トムソーヤが腕を組みながら渋い顔をしていた。
「別にイジメて無いよ。現実論を言ったんだよ。トム爺だって分かっているだろ? 魔物によって速度型、重量型、中間型、特殊型があって、それによって丸っきり戦い方も違っている事を。魔物の持つ牙や鋭い爪を持つ前肢が易々と鉄板を折り曲げる事を。装備が重すぎて逃げ遅れて殺されちまう事を。装備って言うのはあくまで使用者。まぁ、俺ら側が要望を伝えて造っちまった方がやり易いんだよ。初心者の装備にしたってそうだ。現行の汎用装備が悪いって訳じゃないだろ? それなりに昔からの改良で基本を抑えて造られている、なにより値段も手頃だ。増産方法も確立しているから、ある程度の質も確保されている。ソレを捨てるのも、もったいないと思えるだけだよ。現在の防具を基盤に改良を進めたっていいだろ? ティルの意見は『鍛冶屋の押し売り』の域を出てい無いんだよ」
ジョーはティルの問題点を指摘した。
すると、ティルの瞳から一筋の涙が零れ落ちる。
ギョッとするジョー。サイリアは「ジョー、言い過ぎ!」と睨み。カティアもフィフィも不信な表情と困た表情をブレンドしたような表情でジョーを見た。
(あれ? なんで、泣く? 俺の所為か? 女の涙は卑怯じゃないか?)
ジョーは目線の精神針攻撃を受けていた。
それは精神に攻撃(=圧迫)を受けていく。
「ジョー、孫を泣かすとは何事じゃ!」と、トムソーヤは立ち上がった。
ひどく憤怒の表情で今にもジョーを高炉に叩きこみそうなほど怒気が漏れている。
「ちょっと待つッす! おじいちゃんも座るっす! わたしは言い負かされて泣いたんじゃないっす。 感動で泣いているっす……」
目をハンカチで拭いティルは前を向いた。
その言葉に一斉に注目が集まる。
「わたしの意見は夢想家の意見す、ジョーさんの意見はわたしも考えていたっす、でもそれでも違う可能性も探りたいっす、厳しい意見でもいいっす、本当の事を言って欲しかったっす……。ジョーさんはキチンと装備について考えているっす、そこに感動したっす」
ティムは立ち上がると、お辞儀をした。
「装備論の語り合いは、わたしの負けっす。余計な口出しをして済まなかったっす」
彼女は再度座り直し、温くなったお茶を一気に飲み干した。
なんとなく、気不味い雰囲気が流れる。
結果としてジョーは女性を泣かせ、謝らせた。
トムソーヤもサイリアもカティアもフィフィもお茶を啜りながら――ジョーを見ていた。
どうするの?――と、目線を送っている。
いたたまれなくなり、ジョーは小さく咳をすると―――「そうだ……。まだ質問があったんだ」とワザとらしく言う。
「何かあるっすか?」
「いや……、“もし”13歳位の女の子で冒険者のレベルもGランク。はじめて師匠と渓流沿いに修行に行く子、身長も体重も成長期であり、ゴブリン退治も数度だけで経験も浅い子だ。魔術士で後衛専門の『その子』が、これから使うであろう初めての装備はどんな物がいいと思う?」
と、ジョーは目線をずらして質問した。
ティムは始め、質問の意味が分からずに呆けるが、すぐにハッと何かに気がつき。
「ちょっと、待つッす! 紙に書いて説明するっす!」
と嬉しそうに言い出した。
考察。
服が汚れないとはアニメや漫画のお約束でもある。
特に破ける系の演出は大事な所が破けないのである。
岩を割るほどの攻撃にも、爆発にも、決して燃えない部分がある、ある意味世界最強の防具。その部分を縫い合わせれば、たぶん最強の防御力になる(アホな考え)
考察2.
涙、それは女性の最大の武器(偏見です)
まぁ、作者も経験あるんですが、……泣いた女性になんて声をかけたらいいんでしょうね。
それを完璧にこなせるヤツが、フェミニスト何だろうと思います。




