指導をすれど
「いいんですかい、兄貴。俺らの必殺技ですよ」
「こいつはスゲーですぜ。三位一体で敵を攻める技です」
「これは長い修行の果てに辿り着いた境地です。兄貴もビックリする事間違いないっす」
不敵な笑みを浮かべ、ガイヴ、オルイガ、ラッシュは訓練場所にいるジョーに歩み寄る。
それなりの強者の雰囲気を出そうとしていた。
「俺らはこれでオークをボコボコにしたんですよ」
「あの時、俺らはサッイキョォォォでしたから」
「へへっへ、あのオークの面、兄貴に見せてやりたかったですよ」
ラッシュを中心に左右にオルイガ、ガイヴがいる。横一列で、これがフォーメーション“威猪”のようだ。
「ゴタクはいいから、はよ、かかってこい……」
ジョーは雰囲気だけ出す3名に飽き飽きしている様子だった。
「じゃあ、いきますぜ、アニキィィィィ!」
ガイヴの咆哮が聞こえると、ラッシュが先頭を走った。
すると、一直線になり突っ込んでくる。
「オレがぁぁぁ、止めぇぇぇ!」
ラッシュは大声で気合いを入れて盾を突きだした。
シールドアタックの突撃攻撃をジョーにかまそうとする。
だが――ジョーは肉体強化魔術で短距離を移動すると、一瞬の内に横に回りそのまま右足に引っかけるような蹴りを入れる。
浮遊感がラッシュを襲い。
「あららぁぁぁ―――」と言ってラッシュは転んだ。
「オレが、かく、アッ!――……グぇッ!」
オルイガが台詞を言う前にジョーは素早く行動として、動揺するオルイガに有無言わせず鳩尾に拳を繰り出していた。
「オレがトドメぇぇぇ?? エッ?」
ガイヴは大ジャンプでジョーを仕留めようとしたが目標を見失っている。
強化魔術で空間を跳躍したように消えるジョーだった。
ジョーはそのまま後ろから背撃(=身体をそのままぶつけるぶちかまし)をかまし、ガイヴを飛ばした。文字どおり本当に宙を舞うガイヴ。「グェッ!」と負けたヤツが吐く台詞を言いながら何とか姿勢を制御しようとする。
しかし、ガイヴの着陸地点で不幸が襲う。
地面に打ってある木杭の先とガイヴの装甲のない臀部が接触する。
「ズムゥン!」と尻に食い込む木の太杭。ガイヴは「あっ♥」と一瞬だけ感じる声を出したが、すぐに――神経に激痛が伝達され――「グアァァァァァァァ……」と悲痛な断末魔を上げ、崩れおちた。
その様子の一部始終をオルイガとマッシュは体勢を崩しながらみていた。
そして――
「「ガイヴぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」」
と天が割れんばかりに叫んだ。
***
「ガイヴぅぅぅ! 死ぬんじゃねェェェェ!」
「ちくしょう! こんな所で死ぬ男じゃねぇダロ!」
ラッシュとオルイガは昭和風のノリで地面に伏した戦友を見つめる。
立ち上がり、すぐにガイヴの元に駆け寄っていた。
ガイヴは天を見上げ、今にも御臨終しそうな気配を漂わせている。
「へへへ、よせよ、そんな言い方……まるで、オレが死ぬ見てぇじゃねえか……」
と、弱々しく返事を返すガイヴ。
彼の言う通り死にはしない、臀部が傷を負っただけである。(※正確には打撲と若干の裂傷)
「おい、しっかりしてくれよ、リーダー」
「オレ達とテッペンとるんじゃなかっただろ?」
オルイガとラッシュは涙を流している。
「オレは大事なモノを失っちまった……」
まるで、哀愁漂う最終回の雰囲気が出ている。
熱い展開――熱い最終回。
そんなやり取りをしている横で、ジョーはどうでもいいようにサイリアを呼んでいた。
結局――サイリアの回復魔術でガイヴの臀部は回復する。
「ちきしょう、うらやましいぜ」、「オレ達も怪我すればサイリア姐さんが回復してくれんのかな?」などと、余計な事をいっている横でガイヴは嬉しそうに患部の治療を受けていた。
***
「で、おまえらは何がダメか分かったのか?」
ジョーは黒三星の必殺技『邪斗須徒裏霧攻撃』のダメ出しを行っていた。
ガイヴ復活後、何度も訓練を行なった。
その都度、ボコボコに殴られ、完敗を喫したガイヴ、オルイガ、ラッシュは地面に正座しながら聴いている。
ジョーは開始から2分弱で終わる訓練に飽き飽きしながら、3人を見下して冷たい目線を送る。
「いや~。アニキの動きが速すぎてムリっす」
「オーク程度にはどうにかなったんですねどね」
「やっぱ、兄貴は強いっす!」
などと、笑みを浮かべるが、何が問題点なのか理解はしていない。
ジョーは頭を掻きむしり、溜息を吐いた。
「まず、発想はいい」
とジョーが言うと、彼らは目を輝かせている。
「本当ですか、アニキィィィ!」
「ウエフゥッ!やったゼェェェ」
「兄貴に褒められたゼェェェ!」
と、盛り上がっている。
「最後まで聞け、先ず、ラッシュが攻撃を“止め”、オルイガが“崩す”、ガイヴが“とどめ”の役割分担は基本であり、武術の奥義に通ずるモノがあると評価しよう」
――3名はウンウンと頷く。
「でもな、先ず、ラッシュ、お前は牽制もせずに盾を突きだす事をやり、挙句に目標を見失ってそのまま縄に足を取られ転がる事が多いとは何事だ、盾役になりたいなら、絶対に止め、倒れない気概を持て!」
ジョーはそう怒りながら木剣で頭を叩いた。
「ハイっす……」とラッシュは項垂れる。
「オルイガはラッシュが居ないと直ぐに崩れる。それに器用に立ち回れないな、ガイヴを生かしたいならもっと考えてオレの動きを止めろ。それに剣技も磨け、動きも速くしろ、頭を使って次に繋がる動きをしろ」
ジョーは木剣で頭を叩く。
「オスッ……」とオルイガは項垂れる。
「それにガイヴ……お前が一番の問題だ!」
ジョーは厳しい視線をガイヴに送る。
「な、何がッスか? 俺のなにが問題なんですか! アニキ」
「お前……なんで『跳躍攻撃』なんてしているんだ? 攻撃の8割がソレって変だろ?」
「そうでも無いっす。ド派手だし、カッコイイっす」
「おい、アホ! 跳躍しちゃったら着地するまで方向変換できないし、なにより動きが制限されるだろ。ああいう、攻撃は絶対外さない時に使うの、途中で方向を変える体術も魔術もないならやっちゃ駄目だろ。隙がでかくなるだけだし、地面からの方が強く力が伝わるはずだ。なんかこう、もっと変化があって、意味があればやっていいけど、ただ棍ふりまわしているだけだよな」
ジョーの正論に――ガイヴ、オルイガ、ラッシュは衝撃をうけたように驚く。
いままで――イケてるぜ、俺ら――が根本から崩された。
「わかったか、ガイヴ。お前はまず体力と、肉体強化魔術の鍛錬をしろ。オーク以上の敵にであったら即死亡だぞ」
ジョーはコツンと木剣で頭を叩いた。
すると――ガイヴの身体が小刻みに揺れ出した。
「ハイっす。 分かりましたぜぇぇ。兄貴の熱い気持ちがぁぁ!」
と、ガイヴは叫び出した。そして、何故か泣いている。
「お、おいガイヴどうしたんだ」、「兄貴の気持ちってなんだ?」
オルイガもラッシュもガイヴの言葉に困惑する。
(なんだ、突然?)と思いながら、ジョーも怪訝な表情をする。
しかし、ガイヴはそのまま語り出した。
「兄貴は、オレ達に強くなってこの町の“テッペン”とれよっていってんだ。強くなってオレを越えて見せろってことなんだよ。やるぜ、オレは!」
「そ、そうだったのか……オレに対しての厳しい意見もそうなんだな!」
「あ、兄貴ィィィィ、そう言うことだったのか! 最高だぜぇぇぇぇ!!」
そう言いながら、彼らは立ち上がり、円陣を組んで「やってやる、やってやるよ」、「やってやんぜ」、「テッペンとったる」などと盛り上がりを見せていた。
――完全に偏った方向のポジティブシンキング!
ジョーはソレを尻目に「メリーダ、訓練を始めるぞ」と言って、無視しながら訓練を再開した。
その後、一行は充実した訓練を終えると、最後に柔軟体操を終えてベルンの町に戻っていった。
ジェットストリームアタックの攻略法はアムロ方式でいくか迷いましたが……ガイヴ達がそんなに早く完成させているはずは無いと考察する作者。技の伸びしろ的には十分ですが、粗が目立つと思います。
そして、戦法的には理にかなった方法であるかと思います。魏の曹操もこの方法を採用している節がありますし。なにより武術に関しては 守り、払い、打ち、と基本的な攻撃方法でもあります。
一撃必殺とはよく言いますが、やるのは難しいです。その為の連携攻撃です。
今後にガイヴ達の成長する姿を描ければいいと考えています。
作者的には結構好きなキャラですから。




