謁見2
ジョー達は立ち上がり国王に向かい歩みを進めていく。
この行為は、国王が心を許した――と取れる行為でもある。
(ヤべッ、殺気だっている……な)――とジョーは顔には出さずに思っていた。
当然と言えば当然の事だ。国王と王妃に近寄り言葉を交わすのだ。
離れた場所からの警備と近くでの警備、必然的に難しいのは後者である。
ジョーはもちろんサイリアも暴れる事はさらさら無い、しかし、王家親衛隊はどんな時でも王族を守らねばならない立場にある。先ほどジョーが言ったナニナニ風情の素状の知れないものが近寄るのだ。当然警戒レベルも跳ね上がる。
ジョー達の所作を注視している状態にあった。
歩みを12歩進め、ジョーはその場に平伏し直した。
サイリアも、その動きを見て同じ様な行動をとる。
事前にジョーは混乱するサイリアに『俺の真似をしろ』と命令しているので、現在、ヘマらしい事はしていない。
横目でサイリアの動きを見ながら彼は彼なりに彼女を気づかっていた。
その様子は激しく動揺している事が丸わかりだった。
「ジョー殿、王妃から、直接お礼の言葉を述べたいと申しています」
国王が言うと、隣にいる王妃が席を立つ。
そして――静かにジョーに歩み寄り王妃は目の前で立ち止まる。
「面を上げなさい。ジョー殿」
艶と透明感の両方を備えた声が城内に響き渡る。
ジョーは顔を静かに上げると、王妃の右手が顔近くに差しだされる。
どこまでも白く純白の手袋に指輪が1つはめてある右手を、流れるように優しく右手受け取ると、そっと手の甲に小さいキスをした。
――騎士と王妃の基本的な挨拶であり儀礼でもある行為だった。
「お目にかかれて光栄です。王妃様、噂にたがわぬ、御美しさであられる」
「ホホッ、これは見事な挨拶。礼儀をわきまえていますね……」
褒められ、多少嬉しそうに笑う。
ジョーは静かに手を離し、向き合った。
そして王妃はジョーに優しい眼差しを向けた。
「ジョー殿。この度、娘、ルシアを助けてもらい母として礼を言いましょう。大事になる前に助け出せて、この上なく喜ばしい事です」
「ハッ、ありがたい御言葉、真に心に沁み入ります」
ジョーはその場で頭を下げる。
そうして王妃は笑顔のまま、元の席に戻っていった。
「私からも礼を言わせてもらおう」
脇にいた王子が席を立ち上がり静かにジョーの元に歩み寄った。
階段を下り、ジョーの前で歩みを止める。
「面を上げよ」
――同じように王族として威厳ある声がする。
ジョーは静かに顔を上げた。
「この度の働き真に見事だった。聴けば、ジョー殿は武練会で噂になったオジュール殿に与した冒険者集団の一員であったと聞いている。少数で強者揃いの集団であると……。そして今回の件、その腕はじつに見事であると噂になっている」
「ハッ、お褒めの言葉、真にありがたく頂戴いたします」
「うむ、それでだ……どうだ? 我が国の王国騎士団に入らぬか? ジョー殿の腕であれば親衛隊にと思っている。特にルシアの護衛について貰えればと私なりに考えている……」
王子に発言に[ザワッ、ザワ……]と、周囲が静かであるが動揺していた。
王家親衛隊は格式、強さ、礼節、家柄がなにより尊ばれる役職だった。
それが、王子のいきなりの親衛隊の誘いに周囲が驚いていた。
――そして、ルシアがピョンと嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「ハッ、王子のお申し出、真に嬉しく存じ上げます。しかしながら、私には行うべき約束事が御座います。その為に遊歴ではありますが冒険者をしているのです。ここでのお話しをお受けする訳にはいきません」
ジョーの話を聞き、――ルシアはひっそりと落ち込んだ。
「ほう……、失敬であった。冒険者とは自身の力と価値観で動く者と聞いていた。ジョー殿の事情を考慮せず早計な提案であった。ゆるせ……。それでも私は、この将来この国を担う者として強い力を欲している。そなたのように有能な力が欲しいのだ。身分にとらわれず、動ける者達を……」
そう言いながら王子は笑みを浮かべる。
(あッ……こりゃぁ、政事に利用されたな……)とジョーは静かに思いながら「ありがたきお言葉……」と頭を下げた。
王子はそのまま踵を返し去っていく。
(さすが王族だな、ある意味、この狭い空間で釘を刺したのか……)
王子の発言はジョーに向けられた言葉と周囲にいた親衛隊に向けていった言葉が混ざっていた。王子は親衛隊に『ルシアを攫われた失態』に対しての責任として次にヘマをしたら、親衛隊の立場を危うくする――と、ジョーは結論づける。
――王子の行動は全て計算されているとも言えた。
王子が席に座ると突然、ルシアが立ち上がった。
「ルシア、どうしたの?」
王妃が怪訝な顔で突然行動したルシアに尋ねた。
「お父様、お母様、私も助けていただいたお礼を述べます」と言って、ジョーの元に歩いていく。王妃、王子のように礼節にのっとり粛々(しゅくしゅく)とした歩き方ではないが、力強い歩みであった。
誰も止める間も無く、そのままジョーの元に辿り着く。
「エッ、いや、あの、ルシア姫?」と宰相の慌て具合から式典の予定と違い、予想外の行動だった。
式典内が初めて大きくざわついた。
「ジョー=カバライ殿、面をあげよ」
ルシアは他の王族と同じ様に告げる。
が――どこか幼い印象は残った。
ジョーは静かに顔を上げる。
そこには綺麗に縁取りしたベールを頭につけ、薄らと化粧をし、フリフリロリロリの服を着たルシアが堂々と立っていた。
「わたしを救ってくれた事、感謝する。さぁ、ここに礼節の証とわたしを褒める事を許可するわ!」
と、ズィっと右手を差し出した。
ここに“キス”をしなさい――と、言っている様である。
(???)――訳も分からず戸惑うジョー。周囲の者達も同様である。
(……まったく、何言ってんだか……)と、ルシアの褒め言葉か何なのか、わけのわからない言葉を頂いたジョーはフッっと笑い、素早く手を取り、手の甲に口づけをした。
「その御美しい御姿を見られて、私はなんと幸運な者であるか感慨に浸っております。これからこの国に咲く美しき花の蕾を見ている様でございます」
ジョーは詩人のように告げる。
――異国情緒あふれるように、雰囲気を出した。
ルシアは大満足で満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに手を離した。
「そう、見事な褒め言葉でした。さて……1つ尋ねたいのだが、隣にいるサイリアという女性はジョーの仲間か?」
と、ルシアは目線をずらし、隣に平伏して石像のように固まっているサイリアを見た。
(あぁぁぁ、ついに最大の難関が訪れた)――ジョーはビクッと身体を震わせ、傍目でサイリアを確認する。
考察と裏話
王子は年齢がルシアよりもだいぶ上です。
それなりに国の事を考えています。
始めからジョーを親衛隊にする気はないです。書いてある通り、格式、家柄、強さ、礼節など様々な要素が絡みます。王室のそれも親衛隊となると【信頼】が重要になってくるかと……。
貴族的に裏切る事の無い人、風来坊では駄目ですね。王家に忠義を尽くす方でないと大変であると思います。
そんな訳でジョーの親衛隊入隊はフェイク。喝をいれているのです。
そういえば、王子や王妃、王様の名前をどうしようか迷っています。
後々、人物紹介を更新しようと思いますのでその時にでも……。




