面会
「おぉ~、すまないなぁ~、サイリア♪」
ジョーは鉄格子越しにサイリアと面会して、差し出されたサンドイッチ類(=魚のフライ、ハム、タマゴ、野菜、塩漬け肉などの具材で、タレも甘辛とタルタルソースで……)を見て目を輝かせていた。
現在、サイリアを始め、ヒュールとオジュールも一緒にきてジョーと面会を行っている。薄暗い中で女性兵士1人が警備監視中という状況での面会だった。
この警備の薄さは完全にジョーが犯人でないと現しているが、体裁上必要な処置でもある。
鉄格子を間に挟み、ジョーとサイリアは向かい合っていた。
獄中に会いに行く悲壮感は漂っていないが、十分異様な光景と言える。
「まったく、感謝しなさい……」
サイリアは呆れた顔で弁当箱(検閲済み)をジョーに差し入れてをしていた。
「あぁ、まるで……タカラ箱や~(裏声)」
と、オドケテ見せるジョーがいた。
それほどに嬉しい、外の食事、まともな食事でもあった。
「もう、そんなに嬉しいの?」
「ああ」
「今は駄目よ、後で食べてね」
「あぁ……」
極道の夫婦のような会話だ、獄中に面会に来たように老練な雰囲気が漂う。
「お~い、俺達もいるからな」
オジュールがそう言って会話に割り込んで来た。
「おぉ、オジュールとヒュールも悪かったな。こんなに王都に長く足止めさせちまって」
ジョーは近くにある荷台に弁当箱を脇に置いて振りかえる。
「いいって、結局は俺達の所為でもあるんだから、そうだろヒュール?」
オジュールは近くで腕を組んで見守っているヒュールに訊いた。
「ああ、その件に関しては悪かったよ。こっちも予定外の事だからジョーに貧乏クジを引かせるような形になっちまった。それに他の奴等も気にするな、暫く王都観光だと女性陣もはしゃいでいたよ」
ヒュールも頷く、問題無し――という風に。
「そうか、そいつはよかった。こっちも後……もう“少し”って所だ……」
ジョーは意味深に笑う。
状況は察しているんだろ? 後はお願いね――というような表情で。
「そうか……進んでいるんだな」
ヒュールも頷く。
了解!――と。
互いに情報のやり取りは禁じられているが、その言葉の端でやりとりを行っていた。
範囲を守っての情報交換に女性兵士も気がついている様子はなかった。
「まぁ、任せとけ。大丈夫、カネは武練会で大量に貰ったから、暫くは“ギルドの宿屋”にいるよ。欲しい物があったら連絡くれ」
オジュールは指を立てて了承した。
ヒュールに「おい! あからまさにやるなよ……」と注意されていたが――。
「それで、ジョー、明日も来るけど、他に欲しい物あるの?」
サイリアは訊いた。
「あぁ、明日もメシが欲しい」
「太らない?」
「大丈夫、ココで腹筋ばっかりやっているから。腹は出ないよ」
「それでも不健康よ。日の光の下で体操とか出来ないの?」
「まぁ、30分位なら外に出られるかも……」
「それなら、その時間にしっかりとしようね」
「わかってるよ」
「もう、横着はだめよ」
などと――日常会話をしていた頃に――「お~い、面会時間も制限があるから、夫婦のような会話はするなよ」と、ヒュールにちゃかされ。
「バカ、余計な事は言わないで。これは仲間としてやっている事だから……」と顔を赤くしてサイリアは反論していた。
――まったくもって、日常的な光景であった。
その後――面会時間の終わりを告げられる。
「じゃあね。明日も来るから……」
「あぁ、頼む……って待て、サイリア! 最後にお願いしたい事がある」
「なによ!? ビックリするじゃない」
「い~や~、すまないけど、ここに来る時に武器預ける場所があっただろ? そこで“蛇腹刀”を持っていってくれ。アイツ、だいぶ暴れたみたいだから……」
ジョーは申し訳無さそうに言う。
スネークは武器であり魔剣だ。その為に鉄格子の内側には持ち込めない、没収されるのは当然と言えた。
「あ~~~~~~~~。わかった、持って帰る。言えば大丈夫よね?」
「うん、事情を説明してな……、説明はソコいる兵士さんに言えば大丈夫だから……」
――閑話休題。
「いや~助かったよ」
王城に入る為に受ける検査場所の管理をしている警備兵の老兵が嬉しそうに雑貨の保管場所の扉を開いた。
小部屋のようであるが、薄暗く、埃の匂いが充満して、衛生環境は悪い方に傾いている。
石畳で殆ど光が入って来ない倉庫部屋で、1つの魔剣が無言のまま隅っこに置かれていた。
「あれね……スネーク。来たわよ」
【…………】
「あれ、スネーク?」
サイリアは近寄ってもう、声をかける。
すると――突然。
【サイリアァァァァァァァァァァァ、来てくれたのかぁぁぁぁぁ!!】
と、倉庫部屋に破裂するような声が響き渡る。
***
【おぉぉぉぉ、サイリア、遅かったな。もう、手入れもされずに、このまま朽ちてしまうかと心配したぞ、瞑想に浸るしか無かった。なぜ剣は剣なのかと訳のわからない境地まで達してしまったぞ】
スネークはサイリアの背負われながら饒舌に喋り出していた。
「ちょっと、スネーク、重いから喋りかけないで」
サイリアはふらふらになりながら、革帯を引っ張り、引きずるように王城を出ていく石畳を歩いていた。
「サイリア、後ろ持つよ」
ヒュールが声をかける。
【うむ、許可しよう。丁寧に持つのだぞ】
と、スネークは勝手に許可を出した。
ヒュールは苦笑いを浮かべ、そっと、革の鞘の端をもっていく。
【まったく、大変だった。血は拭けないし、ホコリの多い、倉庫に突っ込むなんて、どおかしているぞ! 身体に油がついたままなぞ、屈辱の何ものでもない】
「スネーク、そんなもの、食べれば良いでしょ?」
【ダメだ、ダメだ、下種の血なんぞ身体に入れられるか! まったく……】
スネークは怒り出す。あの後――ジョーと別れ、手入れもされずに倉庫に入れられたスネークはご立腹であった。
騒ぎ、とにかく騒ぎ、【せめて、手入れでもしろ――!】と抗議して、何人もの兵士の腕を噛み、騒ぎまくったのだ。そして倉庫に入れられていても、夜な夜な怨恨の声を上げ、警備兵を震えあがられていた。
「わかった、宿屋に入ったらすぐに手入れをしてあげるから……」
サイリアは、仕方なし――という表情でそれは言葉にすると“うんざり”という。
【約束だぞ、ぬるま湯につけて丁寧に洗うんだ!】
喜々として嬉しそうに返事をするスネーク。
「おい、剣って水につけたら錆びないか?」
と、ヒュールは突っ込む。
「大丈夫、スネークは魔剣だから平気なんだって」
「そうかよ、魔剣っていっても生きていれば、そうか……。おい、オジュールが馬車を回してくれたみたいだから早くいこうぜ」
ヒュールは城門前にいるオジュールと馬車をみて、サイリアに手で合図をして促す。
【おお、はやく、はやく、はやく】
と、スネークは駄々(だだ)っ児のような声を上げた。
監獄、面会、差し入れ。そう、王道の展開です。
クッション回ともいう展開。
もう少しで第4章も終わります。




