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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第4章; 王国狂騒編
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会議室での事件解明

「―――という訳だな。ジョーが捕まった理由は」

 ヒュールが大体のあらすじを説明した。


“双璧”、“三槍将”、“翼陽の団”の主要メンバーが集まり、ギルドの宿屋の一室を借り会議を開いていた。

 その場所は広い部屋で色々な大型の筆記板と機材が置いてある。

 現在は繁盛期も過ぎ、宿屋の管理者が融通してくれた場所で、悠々(ゆうゆう)と今回の事の顛末を話し終えた。

 黒い漆塗りの板(=黒板)に白墨(チョーク)で大体のジョータイホの流れと、それに付随する情報が書かれていた。


「ねぇ、ヒュール……」

 近くの椅子からサイリアが手をあげる。


「なんだ、サイリア質問か?」


「うん、ジョーは誤認タイホされたって事?」


「いや、ご都合タイホだな、ジョーの逮捕は見せかけ。王国の親衛隊も大体の事情くらい掴んでいるだろうよ。それ位出来無くて国は守れないからな。後は洗い出しをしているんじゃないかな?」


「でも……なんか、納得いかない」


「まぁ、……気持ちは分かるけどね」


「それに、犯人は貴族って可能性が高いって言ってたけど本当なの? 貴族って国に忠誠を誓っている存在じゃなかったっけ?」


「サイリア……どんな者も長い年月集まれば腐敗していくんだよ。集まって世代交代を重ねていけば集団の中に頭のおかしい奴とか出てくるもんさ。特に貴族社会は階級制の抑圧と、派閥、裏の繋がり、何かがいっしょくったになって、表面は大人しいけど裏では激しい化かし合いもあるんだよ。今回のタイホも(あぶ)りだしの一部だと見た方がいいかもな……」


「炙りだしって?」


「あぁ、お姫さんの誘拐は失敗したけど、その“片付け”が残っている。実行犯の死体とか、用意されたであろう逃走経路とかで推測が出来るはずだ、そうなれば……依頼した不自然なヤツも動き出すと考えている」


「なんで? ジッと黙って無いの?」


「黙っている可能性もあるけど……自分の命が掛かっているからなぁ~、それにこんな依頼をしてくる“アホ貴族”だ。動く可能性の方が高いな。だから、サイリアも大人しくしていればジョーに会えるから安心してくれ。姫を救って、捕まるなんてありえない事だからさ」


「なぁ、ヒュール……ちょっといいか?」

 オジュールは話しに割って入る。


「なんだよ? オジュール?」


「いや、なっ。ヒュールがさっき予想で話して説明してくれたけど、1つ引っ掛かっているんだ。王城内部の見取り図や制服なんか入手できるのは貴族しかいないけど……動機ってなんだ? カネだけか?」


「カネだけだな……だから、アホ貴族なんだよ」


「そこまでの思考は無かったって事なのか?」


「そうだな。こいつらの“アホな事”は依頼内容が必要最小限の仕事の玄人に依頼した事だな……」


「ん? どう言う事だ?」

 オジュールは不思議そうな顔で質問した。


 ヒュールは「いいか?」と言いながら後ろを振り向き、黒い漆板に白墨で文字を書いて説明をしていく。


「まず、言ったけど一般の庶民、商人には王城の情報は秘密事項だ。魔術による警備体制などの秘密情報があるからな……中に入れるのは貴族関係の身内とかご用達の商人とか、貴族の令嬢とかの素状がしっかりしているヤツしか手伝いに雇わない。そんな奴等以外が“今回”のように王女誘拐なんて考えて実行したら計画段階でバレる。と、いうか。もし成功したら、この国は終わっているよ。……そこを考えたら頭が痛くなるので止めよう。

じゃあ、可能性として残るのは身内だな、貴族連中で、こっちは情報も掴みやすいし、なにより動きやすい相手だ。そんな中の奴が“カネ”が欲しくて、欲しくてどうしようも無い貴族がいたとしよう。しかし、領地での税金では払えない。重税を課す? 強制徴収? 等と考えても民の不満は避けたい――というか、人が減れば税どころじゃないな。もし、やったら王令の発令や諸侯の貴族から笑われる可能性も出てくる訳だ。まぁ、そこまでアホな頭はして無かったと褒めるとして、自尊心の高い貴族の誰かは思うわけだ。


『カネが欲しいけど、どうすれば?』⇒『あれ、今度武練会があるぞ』⇒『そう言えば警備も薄くて王城入り易いよな』⇒『闇ギルドに頼んで王女誘拐して身代金でカネを手に入れられないかな?』⇒『いい考え、早速実行しよう』

 

 そう思って実行していく訳だ、国外か国内の闇ギルド、それも誘拐専門のギルドに頼んで実行していく訳だな……ここが、その依頼を頼んだ奴の頭の悪い所だ」


 凄いスピードで要点だけまとめ、黒板に記入していく。

 ヒュールの動きは学校の先生の講義を思わせていた。


「頭の悪いって何が?」

 サイリアは黒板に書き込んでいるヒュールに質問した。

 ヒュールは書くのを止め、クルリと回転して前に向き直る。


「今回のように、誘拐と丸わかりの行動はダメって事だ。最小限の殺しで最短で脱出しようとして計画も綿密に練られ、痕跡(こんせき)も少ない。これって内部に裏切り者がいると言っているような事なんだよ。内部の情報を知るのは“原則”その国の貴族以外いないからな。そして誘拐犯の連中に依頼する訳だ、自分の保身もあるけど中途半端な善意で、こんな風に言うはずだ、『あまり、被害を出さずに誘拐して欲しい』とね。そこで情報を渡す。

この誘拐が成功して一番得をするのは誘拐犯なんだよ。楽に内部情報が手に入るし、危険(リスク)も少ない。アシつかないままカネだけ手に入る。なにより国外に出ればいいだけだ。

そして、一番危険なのは、この依頼をした奴。一時のカネは手に入れるだろうけど、貴族全体が疑われるし、何よりカネが急遽欲しい奴だ、借金とかして首が回らない連中だろうよ、そんな奴を探していけばいいだけだから、結構早く見つかると思う」


「そこまで考えて無かったの?」

 サイリアは不思議そうに訊いた。


「あぁ、オレが予想するに借金なんかで追い詰められ、周りが見えなくなっていたんだろうよ。だから“アホ貴族”なのさ」


「なるほど……さすがヒュールね、そこまで読んでいるなんて」

 サイリアは頷いた。


「ちょっといいか? 大体の犯人像は掴めたとして……ここからは好奇心なんだけどいいか?」

 オジュールは、わんぱく坊主が先生に質問をするみたいに、手を上げ振っていた。


「おじゅーる君、なんですか?」――先生のように質疑を受け取るヒュール


「はい、ヒュール、だったらどうやって、(くだん)の誘拐を実行する? 貴族の気持ちになって答えてくれ」


「なんだ、それ……。そうだな……。俺だったら隣国の間者を装うか、国家破壊活動をしている奴らなんかに偽装する。予告状なんかを残して、宴をやっている貴賓館を燃やす。混乱に乗じて王女誘拐するかな……。後は嘘の情報を流して場を混乱させて、誘拐する事を偽装する為に派手に暴力破壊活動を町中でも行って。その後……王家との代理人同士の裏取引でカネを得るかな?」


「おぉ~結構、エグイ手を使うな」

「怖い考えだな……」

「おい、ヒュール。お前が黒幕か?」

「副団長、結構、即決、エグイ、恐ろしい」

「でも、そこに痺れる、憧れるぅぅぅぅぅぅ」

 ガルンもミックもヒュールの意見に声を出していた。

 オジュールは揶揄(やゆ)するように質問した。

 翼陽の団の何名かもヒュールの意見の怖さに驚いていた。

 あまりに非人道的な考えに――会議室がざわついた。


「お~い、オジュールが意見出せって言っただろ。まったく、それに、この方法も有効じゃないね。ブリューシュ王国は比較的平和な国だ。隣国と戦争をやっている訳でもなく、地域的には他国との協調路線をとっている。貿易とかも安定しているし、他種族とかの排斥も乗りだしていない国だ。そこを乱す破壊工作をしても、アホだろうよ。不自然過ぎてそっちの考えもダメだな。と、いうことは……始めから誘拐なんてやらないが“正解”だな」

 ヒュールは呆れつつ、1番普通で1番まともな正解を言った。

 その言葉に多くの翼陽の団が頷き。

 そして、会議室でしめやかな事件の真相が話し終えられ。

 

 結果として――自分達には関わりが無い事だと、皆が理解して会議は解散。そして部屋に戻っていった。

 多少、ジョーに同情しつつ――





事件解明は現場で起きているんじゃない。会議室(=密室)で起きているんだ!


と、某有名セリフをパクッたところで後書です。

 依頼した貴族の目的は“金”である。これは古今東西どこにいっても同じです。

 ハンムラビ法典であれば違ったかもしれませんけど……(あれもいわゆる弱者保護論を説いた法典らしい)。

 とにかく、カネ第一主義である。権力とはカネである。貴族とはカネの量で決まる。という普遍的な偏見です(笑)。

 生活を謳う本作品ですから、そこは陰謀論とかもありますけど、誘拐はカネ目的であるという普通の考えからそうしています。快楽殺人とかより、悪の陰謀論とかより、もっとも多いのはカネですから。

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