取調
王城の地下牢から連れてこらえたジョーは、それなりに綺麗な部屋に通され、監視する兵士がいる中で男性士官と面を合わせ向かい合っていた。
ジョーの目の前に座る男は煌びやかな装飾をふんだんに使った服装をして、金色の綺麗な髪を丁寧に上げ纏めていた。緑色の瞳と切れ長の眼鏡をかけている。
『エアハルト=アイゲンラウホ』
そんな厳しく隙の無い名前をしていた。
エアハルトは机に書簡を置いて何かを書き込んでいる。
ジョーはその間に部屋に設置された窓の外を眺めていた。
「ジョー=カバライさん。質問を始めます。こちらを向いて」
「はいはい、どうぞ~」
ジョーはダルそうに向き直し。机に手を置いて前を見る。
「“はい”は1度でお願いします。2度続けられるのは、いかがなモノかと思いますので」
「は~い、わかりました」
「間も伸ばさないで頂けるとありがたいです。では……これより、3日目の調書を取っていきます」
ジョーはお姫様を助けてから2日間、事件の詳細と調書を取られていた。
それが3日目になり、やる気も起きない様子のようだ。
返事からもその様子が窺える。
「それでは昨日の詳細から、もう1度確認させてもらいます。ここからは“ジョーさん”と呼ばせて貰いますのでご了承ください」
「はい、どうぞ……」
「昨日の供述とおり、逃走経路の確認と北区の路地裏で誘拐犯、主犯であるアブラートの部下と思われる遺体と戦闘の痕跡が路地裏で発見され、供述と一致しています」
「そりゃよかった」
「えぇ、ここまではいいのですが、その後の逃走経路に不審な点があります。なぜ屋根つたいに逃げたのですか?」
「そっちの方が逃げ易いと思ったからです」
ジョーは平然と答えた。
「そうですか……しかし、路地を通る選択肢もあったのでは?」
「いえ、それは危険です。それに屋根に登れば路地より早く逃げられますから。もしかしたら逃走犯は屋根の上にのぼる技術が無いと思ってのことですよ」
エアハルトは書簡紙に供述を書き込み。後ろの兵士も同様の髪に書き込む姿がジョーからも確認出来た。
(こりゃぁ~、長くなりそうだな……)
ジョーは、その様子を見ながら小さく溜息を吐いた。
「そうですか……。ジョーさんは、その後、分かれ道を選択していますね。人通りの多い通りを選択なさってないようですが……何故です?」
「それって昨日も話しましたよね?」
「えぇ、もう1度、確認の為です」
「はぁ……、大通りの道は人が多く逃げ易いのですが……、その分、住民に被害がでる恐れがあったからですよ。相手は手段を選ばない玄人の可能性があった。混乱に乗じて強引な手を使う可能性もあったためです」
「それだけですか……?」
「それだけです」
「そうですか……、では、質問を変えましょう。倉庫街に行ったあなたはルシア姫殿下をそこで解放しようとしましたね? それは何故です?」
「姫殿下が起きて暴れそうになっていたからです。暴れると逃げる時に厳しいのは“バカ”でもわかる事です。そこで事情を説明して大人しくして貰おうと考えました。ちょうど追手も撒いた直後でしたから、そこで事情を説明しようと思ったからです」
(その位、わかれ、バカ♦)
と、思いながらジョーはニッコリをほほ笑んだ。
エアハルトも――(なんだと、この野郎!)――という風に眉をピクリとあげた。
「そこで、姫殿下に声を上げられて追跡者に見つかってしまったと言っておりましたけど……まったく、ジョーさんは“おっちょこちょい”ですね。それで見つかって、また戦いになるなんて」
エアハルトは(このマヌケ野郎(怒))――と、思いながら、意趣返しのようにほほ笑む。
「ははッ、まぁ、その件に関しては予測できない事です。だってそうでしょ? 式典の最中にお姫様を誘拐される事だってあるのだから。それに、すべて終わってから登場されていた方々はどうとでも言えますよ」
(このザル警備の代表が……、お前達の警備の怠慢だろうがよ)――と、ジョーは思いながら、ほほ笑んだ。
両者とも笑顔だが――その内に秘めた思いを前面に押し出す。
『覆面吐露?』という新しい言葉が飛び出してきそうな程、言葉の削り合いが裏ではなく、表で繰り広げられていた。
「「は、はははッ、あッはははは、あははははははははははは………」」
大声で笑い合う両者。
――暫く間を置いて。
「いや~1本取られましたね。それでですが……こちらが調べた結果。ジョーさんと誘拐犯を繋げる線は無くなりました」
「そりゃ~、よかった。早く仲間の元に帰りたいですね」
「えぇ、あと5日程したら帰れますよ」
「おい、それって……長くないか?」
ジョーはギョッとする。
「それも規定ですので、ご了承ください」
「待て、待て、待て……俺は何で捕まっているんだっけ?」
「はい、国家反逆罪の容疑、姫殿下誘拐容疑、それと騒乱罪です」
エアハルトの言葉通りに、ジョーはその罪状で捕まっていた。
あの後――ジョーが姫殿下を見守り、仲間が着いた直後。王家親衛隊と名乗る集団によって拿捕されたのだ。
茫然とするジョー。市場に連れて行かれる子牛のように、そのまま送迎され。丁寧に牢獄に収監されたのだ。{BGM:ドナドナ}
そして――その容疑で現在、取り調べを受けている事に“なっていた”
「じゃあ、それなら前の2つの容疑は晴れただろ?」
「ですが、王都で暴れた事は本当ですよね? 死骸が7名分残っていました」
「いや……そうだけど、おかしくない? なんで、どうやったら、そんな無茶難題のような罪状がつくの? それに姫さんを救ったのは俺だし、どうやって戦闘無くして救うのだ?」
「ジョーさん、『姫さん』ではなく、『姫殿下』または『姫様』とお呼び下さい。それに規定ですので、ご了承ください」
エアハルトは眼鏡をクイッと手で上げた。
これも計画の内だと言わんばかりの眼光を向ける。
「ハイハイ、そうします」
「“ハイ”も1度でお願いします」
「はい、それでエアハルトさん、訊きたい事があるんですが?」
「なんでしょう?」
「どうやったら、戦闘せずに、住民に被害も出さず、騒ぎも起こさずに、お姫様を救いだせるのですか!?」
ジョーは詰問する。あまりに無茶難題の要求に睨みつけながら。
「さぁ、わたくしは門外漢ですので、詳しくは存じ上げません」
まったく悪びれも、バツの悪そうな顔もしない様子でエアハルトは答えた。
ジョーは、どうにもならない状況で、――そのまま、酷く乾いた笑い声を上げ続ける。
作者も間抜けな事をしました。
詳しくは短編をご確認ください「ケータイ落としたぁぁぁぁぁぁ」ってタイトルで掲載しています。
本当にマヌケですのでそれなりにご覚悟を。
1つでも暇つぶしになればと思ってます。




