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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第4章; 王国狂騒編
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命を懸けた遊戯

「アッ……うぅんっと……ここで待つ」

 ルシアは突然の質問に困惑しながら答えた。


「わかった、それでいいんだな」

 ジョーが確認するとコクコクと頷く。


「よし、それならいい。だから……ここで大人しく待っていてくれよ」

 ジョーがそう注文をつけるとルシアは、突然、ガシッとジョーの腕を掴み、「……ヤダ、いっしょにいく」と言い出す。


(お嬢様ってのもそうだが、お姫様ってのもわがままなモンだ……)

 ここには居ないカティアの事を思いながらジョーは迷う。

 しかし、敵は近くにいると感じる為に説得の時間も惜しい。

 迷った末に息を吐くと――


「わかった、戦いが始まったら脇に隠れてくれよ。それと手を放してくれ。そのままじゃ寒いだろ……」

 そういって2つある腰鞄から小さく折られた布を取り出す。

それを広げると――ルシアに被せた。


「一応は防水性だ。着ると少し暖かいだろ?」

 極薄のコートのような服を着させる。あくまでも仕事時の雨対策の品、それなりに値が張る品で“尾白水蛙(バブアガーマ)”の皮膜から作られている。

 ソレを被せると――ルシアは「獣臭い……」と小声で言う。


(このクソガキ―――――!)と、ジョーは思うが(いっ)(こく)の姫にゲンコツを落とす事はせずに我慢していた。


【ジョー、距離を詰めて来ているぞ】

 小声でスネークが情報をくれた。


「まぁいい我慢してくれ。敵さんがこっちに来たみたいだ」

 と言って、ジョーは半腰の姿勢から立ち上がる。

 ルシアもピョンと木箱から降りると、ジョーの左手を握る。


「オイ……」

「握って……」

 ルシアはお願いするように言う。


 ジョーはすぐに勘づいた。ルシアの手が恐怖で震えている事に。

 その為、何も言わずにそっと手を握っていた。


「じゃあ行くぞ。少しでも戦い(やす)い場所の方がいい」

「うん……」


 そのまま親子のように、ジョーとルシアは雨水が流れる路地を歩きだした。


***


 王都に降る雨が少し弱くなった頃、ジョーとルシアは倉庫街の大通りに出て待っていた。

 ヒュールとの連絡を済ませ、ジョーはその大通りの先を静かに見つめている。


「おい、出て来いよ……。居るのは分かってんだ」

 ジョーがそう呼びかけると――路地の陰から3人の誘拐犯が姿を現す。


【ジョー……残りの2名は遠くに待機しているな……】

 スネークからそんな小さな情報を小声で受け取る。


(やっぱり仲間がいたか……。そうだよな……倉庫街に向かっていたヤツらだ、準備するヤツくらい揃えているだろうよ……)

 スネークの情報にジョーは納得する。


 すると――1人の誘拐犯が前に出てきた。


「きさま、何を企んでいる……」

 小さく、渋く低い声でジョーの行動を聞くアブラート。


「はぁ、別に何も……追いかけっこに飽きたんだよ」

 ジョーはその一言で理解する。――(こいつら、随分とこちらの様子を窺っていたのは、そう言う訳か……慎重な性格だな)と。

 先ほどは(そば)に出てこないのでジョーは声をかけた。それに反応して姿を現した。その事で相手(アブラート)は標的の様子をよく見る、典型的な暗殺者であり玄人だと判断する。

 そして――突然、姿を見せて待っているジョーをアブラート警戒していたのだ。

 特段に罠も何も準備していないジョーは不思議に思っていたのだ。


「それよりも……仲間に連絡している。もうすぐ兵士を連れてくるぞ。早く逃げないと門が閉まっちまうぞ」

 ジョーは状況を見て、脅しとハッタリを言う。

「……問題無い。姫を確保出来れば、どうとでも出来る」

 渋い声でそういうアブラートにジョーはハッとなった。


「そうかい、……おまえら“誰に”頼まれた」

「…………」

 沈黙の後。アブラートは脇から短剣を構える。


「へぇ~、依頼人の名前は明かさないか……。玄人だねぇ~」

 ジョーは軽く言い流し。蛇腹刀を背中から取り出し、右手に構える。


「お前らに言うよ。俺を倒せばお姫さんを連れてってもいいぞ。そのかわり丁重にお願いするよ。まぁ……言われなくてもそうするんだろうけど……。それに、いい事にお姫さんも大人しく捕まってくれるらしいぞ」


「……きさま、どう言うつもりだ」


「なに、まどろっこしい事は嫌いなんだ……。嘘だけど……。ほら姫さん、危ないからアソコの路地に行きな。こいつら投擲武器を扱うの下手だから姫さんに当たっちまうぜ」

 ジョーは少しアブラートを揶揄する言葉を言いながら、ルシアの握っていた左手を離す。

 そして手で合図をして、ルシアは一度ジョーを見た。

 雨が滴り落ちる黒髪から敵だけを見ていた。


「ほら、行きな。すぐに終わるから大人しくしていてくれよ」

「……うん」

 ジョーに言われた通り、ルシアは後方の路地に駆けていった。


 その様子をアブラートの後ろにいる2名が動こうとする。


「おい! 待てよ! 下手に動くと斬るぞ。それにこれは遊戯(ゲーム)だよ。楽しくやろう」

 そういって牽制するジョー。


「お前達、動かなくていい。そこにいるようだ……。手は出すな……オレが殺す」

 アブラートは静かに反時計回りに武器を構えたまま、ジョーの周りを歩き出し。距離を縮めていく。


「おい、3人掛りでも構わないぞ……」

 ジョーがそんな事を言いながらアブラートの方を見ながら不敵に笑っていた。


 両者が対峙して殺伐とした雰囲気がたちこめる中――突然、ジョーが構えを変え蛇腹刀の腹を右側面にかざし防御する。

 2つの金属音が響き、――石畳にポチャンと落ちる。

 アブラートの部下が吹き矢を手に持ち攻撃を加えていた。


「……へぇ、“色々”武器があるんだな……毒矢か。……よっ!」

 ジョーは動揺した部下に向かい、素早く蛇腹刀を振るって剣を伸ばす。蛇行しながら来る剣筋に、アブラートの部下は避けるが――右手と左わき腹にそれぞれが傷を負う。

 声を出しながら後ろに跳ぶが血が流れる。

 すぐに警戒態勢を取るアブラートの部下達。

 

 が――その間に距離を詰めようとするアブラート。ジョーは蛇腹刀を戻しつつ横薙ぎの一閃で間合いに入らせない。

 飛び退き、跳躍しながら再度距離をとった。


「ほう……よくわかったな……」

 アブラートは距離をとり、間合いの外から感心したようにジョーに話しかける。


「あぁ、いきなり決闘なんてする訳ないだろ……あんたみたいな小心者が、それに3人でいいと言ったよな。それが独りでいいなんて警戒はするよ、いきなり視線を切るように歩き出すから……」

 ジョーは薄ら笑う。


「なるほど………。若いのに修羅場は潜っているようだな……」

 アブラートはマントの顔部分を外した。

 頭に布を巻いてターバンのようにしていた。顔は浅黒い皮膚にきれ長の目元が見える、そして口元に歪んだ笑みを浮かべていた。


「おい! お前達、“本当に”援護はいらん。独りで片付ける」

 と――大声で命令しながらアブラートは静かに殺気を漏らし始める。





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