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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第4章; 王国狂騒編
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逃げる者と追う者

 雨が降りしきる中、ジョーは王都の屋根を飛び回る。

 王城方面に向かっていたが今は少しずつ脇に逸らされ始めていた。誘拐犯集団の追跡が始まりその包囲網の網にかかろうとしている。


 屋上に人知れず戦闘が始まる雰囲気が出始めた。


(追いかけるのか速いな)

 傍目で左右と後方を確認しながら4名の影を捉えていた。


 ジョーも全速力だが相手の方が僅かに速い、それは大剣を持ち、脇にお姫様を抱えている、そのような悪条件も重なり。結果――距離がどんどん縮まっていた。

 さらに雨の中での逃走という事で足元が悪く、本当にお荷物を抱え不利な条件がジョーに重くのしかかる。そして後方から獲物を捉える肉食動物の如く包括的に移動を制限していく事もジョーは理解していた。

 始めの頃のアドバンテージは無く、向こうもジョーを攻撃の射程に捉える。


――すると、不意にキラリと光るモノが飛んできた。


「チッ」と舌打ちをして――

(お、い。お姫様担いでるのに、お構い無しかよ!)

 ジョーはその攻撃を視認すると向かってくる投擲武器を剣で撃ち落とす。

――[キィィィン……]と硬質の金属音が鳴る。

 円輪のような投擲武器『チャクラム』が屋根に落っこちた。


 もう1つのチャクラムはそのまま身体ごと避ける。


「なんだ、もう攻撃してきやがった……」

【ジョー、後ろを見ろ!】

 スネークの警告にジョーは後ろを振り返ると屋根に落ちたチャクラムが浮き上がり、回転して、その刃をジョーにむけて移動してくる。意思をもった武器のように。


「アッ、魔力操作系の武器か!」

 そういいながら剣で再度弾く。


 その瞬間別方向から同じ様な武器が飛来してジョーの頭の脇をかすめた。


「やっかいだ」とジョーは言いながら足を止められる。

 チャクラムは3名の誘拐犯達が投げ合計6個、周囲に飛行して時間差でジョーに襲いかかった。


『魔力操作系の武器』とは――投擲武器に魔術陣を刻み、術者(使用者)の魔力を流し、それを元に遠隔操作する類の武器で“魔術の矢”と同じく操作性は術者の力量次第。しかし魔術の矢のように魔力そのモノを固め圧縮していない為、攻撃されても再度操作し直す事の出来る点に有効な点がある。貫通力、破壊力、速度という点では魔術の矢のより劣るが、今回のように斬る事を目的として足止めという点では有効な武器といえた。


 攻撃を繰り返し、避け、剣で弾きながら屋上で踊るように逃げていくジョーは見事だった。紙一重でかわしつつ、6方向から来るチャクラムの動きをしっかりと見極め、まだ傷も負っていない。

 そうしてチャクラム達は意思をもっているかのように周囲を旋回して檻のようにジョー達を囲っていく。


「スネーク、喰えるか魔力だけ」

【任せろ】

 逃げ出しながらジョーはスネークに命令する。歩みを止めジョーは覚悟を決めたように止まる。

すると――

 飛来したチャクラムがジョーに襲い掛かる。王女を避け、ジョーだけを狙った攻撃は――剣閃光る攻撃に、甲高い金属音を奏でながら見事に屋根に落っこちた。


 片手だけで大剣を操り、素早く斬る。それは簡単のようで以外に難しい。


「ふう……」と息を漏らし、闇ギルドの敵と向かい合うジョー、そのまま剣を肩に担ぎニヤリを笑う。


 笑ったのは闇ギルドの構成員達が焦っていたからだ。手をかざし、チャクラムを再度操ろうとしたが反応しないで焦っている。


「よぉ、もうコイツは使えねぇよ。やり方は秘密だ」


 そう問いかけて向こうの反応をみるが――会話もせずに腰元から短剣を取り出し構えを取っていた。

(反応なしね。訓練されてるヤツらだ)

 ジョーは無視されて落ち込んでいるのでは無く、少しでも相手の情報を得たいがそれも叶いそうにないと諦める。


 左右を確認してジリジリと距離を詰めていく4名は虎視眈々(こしたんたん)と獲物を取り返す機会を(うかが)っている。


 ジョーはそのまま前を向いたまま、後ずさりして屋根伝いに駆けだそうとするが誘拐犯達はしっかりとジョーを追尾する。


【ジョー、いいぞ】


 そんな声が聞こえるとジョーは屋根の上から下の路地に飛び降りた。

 突然の方向転換、――という方向落下を敢行(かんこう)する。


 蛇腹刀を伸ばし、十何メートル下の路地に突き刺した。

 生憎(あいにく)というか都合のいい事にそのまま見事に突き刺さり、ジョーは突き刺す反動と蛇腹刀の刃節、肉体強化魔術を見事に使い分け、ソフトに地面に着地する。

 

 普段のジョーならそのまま落ちても上手い事体術を使い見事に無傷で乗り切るのだが、左手はお姫様を抱え移動している為に“普段”のように出来る事と出来ないことがあった。それほど片手とは不便なモノで戦力的にも半減している


 ジョーはすぐに振り返ると、その後ろというか斜め上に誘拐犯の1人が屋根から飛び降りた直後だった。


(バカだな…)

 そう思いつつ、剣を置いて後方に手を回し、“チャクラム”を取り出した。そして手早く向かってくる敵に投げつける。


 なぜそれがあるか――それは先ほどスネークが()ったからだ。秘かに腰元の帯に仕込んでいた。蛇腹刀を操る要領で。


 空中で自分達が持っている武器を投げ込まれるとは考えていなかった誘拐犯の男性は選択の余地は無く、そのまま短剣で顔元に投げ込まれたチャクラムを受ける。


 [ギンッッ!]と弾く音が響くと――次に男に[ドシュ……]とした音が腹から聴こえ、そのまま熱い何かに貫かれていると感じる。


「ガハァッッ!」――男性の腹に伸びた蛇腹刀が通過していた。


 チャクラムを投げた後、蛇腹刀を素早く操ったジョーはそのまま剣を伸ばし誘拐犯の1人を始末する。


「残り3人か……」

 ジョーは蛇腹刀に突き刺さった骸を着地したばかりのアブラート達に向かって投げつけた。

 振りかぶるように、鞭がしなるように、モノを投げるように投げつける。


 見事に着弾した骸弾は血と内臓をまき散らし、アブラート達のマントを血まみれにしている。


「よし……」と言いつつ、ジョーはそのまま路地を駆けだした。


 お姫様を抱えながら真っ直ぐ路地を進んでいく。


 そして正面に分かれ道が近づいていた。





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