強行手段
これで100話目です。うれしい。
ジョーは屋上を飛び回り誘拐犯達との進路の先回りをしていた。
ちょうど、丁字路で分かれ道の先に隠れている。
気配を消し、ゆっくりと手鏡で状況を確認して向かってくる犯人の行動を確認していた。
【どうする、策はあるのか……】
「なに、芝居だよ……とっておきの……」
そういってジョーは小銭袋を取りだした。
そして片手に袋を持ちそのまま路地を出た。
***
「アブラート様、前に人影が見えます」
誘拐犯の1人が目の前に現れた男に気がつく。大剣をもって雨に濡れながら辛気臭い顔で歩いている冒険者風の黒髪の男性を発見した。
カネの入った小袋をもってトボトボと歩いている。
アブラートと言われた男性は一瞬警戒するが直ぐに勘づく。この近くの賭場でカネを掏られたヤツだと。――
「ほおっておけ。下手に騒がれたら厄介だ。このまま突っ切るぞ」
「わかりました」
そしてそのまま男性の脇を一直線になって抜けようとする。
***
「どけ!」
先頭を走る誘拐犯の集団の1人がそういってジョーを突き飛ばした。
「おあぁ! あぶねぇな、この野郎!」
と――声を出し、それらしく怒っている風な演技をする。
脇を抜ける集団に突き飛ばされた演技をしながら――ジョーは素早く蛇腹刀を握りしめ。そして後方の2名を背後から斬りつける。
「「ギャぁ…」」という激痛の声と一緒に飛ぶ鮮血と同時に胴体が分かれた。
――あまりに唐突に2名の骸が出来あがった。
本当に突然の不意打ちに誘拐犯達は驚き振り向くが――その時には大樽をもって担いでいる後ろの者が背中を刺され倒れた。すると前だけでは支えきれなくなり大樽を固定していた棒が外れ地面に落ちる。
――大きな音と共に一気に緊張感が増す現場。血に染まり死体を境界に対峙する。
奇襲と強襲で一気に3名を始末したジョー。そのまま油断せずに直ぐに体勢を立て直す。
すると――相手はもう、反応していた。
バッと距離を置いてジョーから離れ。武器を持って身構える。
地面を転がり大樽がジョーと誘拐犯の中間で止まるが――誰も駆けよらない。
「よお、ぶつかったら謝るのがスジってもんだろ? おれの国じゃ無礼なヤツは切り捨て御免なんだ…よ!!」
ジョーはそう言って剣を操ると蛇のように地を這い、そのまま誘拐犯に襲い掛かった。
金属音が弾け、蛇腹刀の剣撃を相手方は短剣で上手く防御し、後方に飛びさらに距離を取りそのまま警戒しながらの集団行動。
その見事な連携と動きにジョーは思う(よかった。こいつら暗殺者だ)――と。
ほとんど半信半疑でいきなり奇襲で殺したが、間違いだった可能性もあるので相手の動きを見てジョー安堵する。
そして上手く逃げられた蛇腹刀の刀身は方向を変えて樽に目掛け飛び。中の者を傷つけ無いように表面を壊した。
バラバラと崩れる樽の中から顔から下をアサ袋のような物に包まれた少女が姿を現す。猿ぐつわをして喋れない様にされ、意識が無いのかグッタリとしていた。
(お姫さんだな……前夜祭で見た……)
ジョーは剣を戻しつつ、中に入っている人を確認してジョーは確信する。
「やっぱり、誘拐されたお姫様か……。お前ら誘拐犯だな」
ジョーがそう言ってニヤリを笑うが――4名の誘拐犯は武器を持って問いかけには答えない。
「……おまえ、誰だ?」
誘拐犯の1人がやっと声を上げる。
「な~に……王城から誘拐されたお姫様を救い出せって命令された冒険者さ。ほら、もうすぐ仲間も来るぞ。早く逃げろよ、クズ共」
ジョーはそう言って挑発する。
狙いはあった。『仲間が直ぐに駆けつけるぞ』と『お前達の事は知られている、王都から逃げ出せ無くなるぞ』と脅す意味もあった。
しかし――動揺も見せた者とまったく動かない者もいる。
「お前達、任務中だ。あいつを殺せばまだ間に合う」
リーダーぽい男がそう言って生き残った部下に命令を飛ばした。
(あいつが1番強いな……)
ジョーは経験と言動。そして行動からその男が群れの頭だと思っていた。
再び、武器を構え戦闘体勢を取る誘拐犯の一行。
「おい、いいのか? お前ら驚いて一瞬で死ぬ事になるぜ……」
ジョーは不敵に笑う。
その言動に自信が漲り、そして静かに剣を構える格好は――誘拐犯を尻ごみさせた。
ジョーは相手の状態を把握すると――ゆっくり大きく息を吸い。
そして――「きゃああああああああぁぁぁぁぁ!! 痴漢よぉ――――!! 誰か助けてぇぇぇぇぇ!!!!」――と裏声で周囲に反響するように甲高い声で叫んだ。
突然の悲鳴に虚をつかれた誘拐犯グループ。
そして周囲から何事かと――窓が開かれ、人々が覗きだした。
流石に隠密行動をしている誘拐犯達は焦り周囲を見渡した。
その間に――ジョーはお姫様を片手に抱え――蛇腹刀を使い屋上に上がり消えてしまった。
「追えッッ!」
素早く命令を下すアブラート。
配下の者達は騒がしくなった現場を逃げるようにジョーをおっかけ始める。
※※※
翼陽の団の馬車は王城の坂を下り市街地に向かって雨の中を進んでいる。
オジュールとヒュールはジョーを追う為に馬車の中で戦闘準備をしている。
揺れる荷台の上で手早く装備を整えていきながら話をしていた。
「なぁ、ヒュール。さっきの続きの話をしろよ」
「あぁ? なんだっけ?」
「ジョーの事だろ? そう言えばお前はジョーをかっているよなって話だよ」
「そいつか……なぁ、オジュール。冒険者の依頼成功率って知っているか?」
ヒュールはニヒルな笑みを浮かべ隣で手甲をはめているオジュールに訊き返す。
「あん? あれだよな。受けた依頼に対しての達成率の事だろ?」
「そう、冒険者組合の記録に残るアレさ。俺達の仕事の依頼も残っているだろ? 正規の依頼で記録してずっと残るヤツ。アレってどのくらいの成功率が一般的か知っているか?」
「なんだよ、やぶからぼうに……って、アレ8割9割位か?」
「いや、世間一般だと6~8割程度だな。正規の依頼で。それが普通だ。オジュールだって新人の頃に依頼失敗を経験しているだろ?」
「まぁな、それでもオレは少ない方だぞ、失敗が少ないからAランクまで上がったんだ」
「そうだろうよ。それがギルドランクに反映されるんだから……。それで、ジョー達の仕事の成功率って知ってるか? あいつら……いままで10割なんだよ。どの仕事もきっちり確実にこなしているんだ」
ヒュールが笑い、オジュールは驚く。
Cランクに上がるのは最低でも100回以上の依頼をこなさないといけない。それを今迄無傷でこなし続ける事など不可能に近いと思っていたからだ。
Aランクであるオジュール達もGランクから成り上がり途中の過程で過去に失敗を経験している。それは長く冒険者をやっている者からすれば当たり前と言えた。それほどにランクが上がれば依頼が難しくなるからだ。
「おい、それって……どう調べたんだ? ギルドの機密情報だろ? それにそんな事って可能なのか?」
オジュールは混乱して、真っ先に頭の中での疑問が噴出する。
冒険者の情報を扱うのは職員のみ、そしてその情報は組合秘となる。よって他のパーティ等が閲覧する事も禁止されている。
「ハハハッ、オジュール甘いな。そんな情報なんてどうにでもなるものさ。例えば職員と“仲良く”なるとかな……」
悪い笑みをこぼし、ヒュールははぐらかした。
オジュールの“どうにかして”真実の情報を仕入れたと確信する。
「それじゃあ……ジョー達は、すげーな、どうやってやったんだ?」
その真実が本当だと確信して、オジュールは完璧に依頼をこなすジョーとサイリアに驚愕した。
「わかんねぇよ。依頼の内容はCランクまでが主だがBランクの特別依頼もやっている。見た感じサイリアは普通のレベルの魔導士だが……ジョーは違うぜ。おれが思うに、ジョーは出来る、出来ないを正確に分析出来る。そして余裕があるんだ、どんなにキツイ時でも冷静なんだよ、アイツは……それに腕を隠している。だからさっきも『どうにかする』って言えるんだよ。そう感じて、おれも信用してんの……」
「なるほどな……。その素状ってあたりは深く考え無いようにして。それじゃあ、何とかしているって期待するか」
「あぁ、終わってる可能性もあるしな」
そうして――雨雲がさらに濃くなり雨が強く降る中、オジュール達を乗せた馬車は北区に急ぎ向かう。
考察
話の始めT字路か丁字路か迷った。昔だったら“丁字路”で良いらしい。まぁどっちも正解らしい。
考察2
ジョーの強行手段やばいなぁ~と思いながら作者も書いています。
しかし、この国は司法国家のように捜査、精査、検証などの段階的にやっている法治国家と若干違います。そう考えると喧嘩ぱやいUSA方式がいいと思いました。夫婦喧嘩で銃をぶっ放すクレイジー感で書いてみました。
さらに正規のルートだと「まて、この悪党ども」という、お約束の展開は無視。だって奇襲のほうが楽で効率的ですからね。クレイジーと合理主義を併せ持った主人公がジョーです。
考察3
ジョーが裏声で助けを求めた行動に意味はあります。
まぁ、裏声でなくてもいいんですけど、そこは流れです。




