第三話 M-2
「メイお姉ちゃん、私ちょっと走ってくるわ」
姪のあさひが朝5時からそんなこと言い出した。
私は思わず
「はぁー?」
と声をあげてしまった。
あさひはそんな私の反応見てキョトンとしている。
「あのなぁ、お前この前話したろ。お前を狙うエージェントが近くにいるって。」
「うん。聞いた」
こいつ…危機感なさすぎだろ。
⸻
「だから急に予定外のことされると私らも困るんだよ。いきなりだと人員の確保だってできないからな」
「ちょっと走ってくるだけだってばぁ」
「…どうしても行くか?」
「うん」
「はあ…わかったよ。なら私もついていく。」
こうなれば仕方ない。
私が直接あさひの護衛をするしかあるまい。
玄関にあった姉さんのランニングシューズを借りよう。
「でもメイお姉ちゃん、身体能力とかは私よりないって」
「その時に言ったろう?これでもちゃんと毎日鍛錬してるんだ。走らぐらいならついていけるさ。あんまり私を舐めるなよ!」
霧隠の次期当主の実力思い知らせてやるぞ。
——15分後
「ゼェ…ハァハァ…ゲホッ…あ゛ざひ〜…ちょっと待っでぐでぇ〜」
あさひの奴…なんだあれ?
もう何年も修行してない動きじゃないぞ!?
正直ここまで体力に差があるとは…
マンション出てまだ10分ほどしか経ってないのに山二つ軽く越えやがって…
「メイお姉ちゃん大丈夫?」
膝に手をついて息を整えている私に、
汗ひとつかいてないあさひが余裕の顔で声をかけてくる。
「あんまり大丈夫じゃないかも…」
私は体力ではあさひに勝てない。
これは事実だからな。
そうやってあさひの凄さを改めて実感して認めてやってるのに…
あさひは少し小馬鹿にしたように
「メイお姉ちゃん、そんなんで本当に政府の秘密諜報員なのぉ?」
とか言ってきた。
さすがにカチンとくるぞ!
「言ってくれるじゃないか!なら秘密諜報員の実力一対一で存分に見せてやろうじゃないか!私と勝負しろ!」
あさひをビシッと人差し指で指差した。
ふふ…あさひめ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔してるな。かわいいぞ!
「メイお姉ちゃん、私8時に澄夏と約束してるんだけど…」
「知ってるさ。まだ5時半前だ。お前を負かすのに15分とかからんから心配するな」
「へぇ…10分走っただけでそんなふうに膝笑っちゃうくせに自信満々じゃん…いいよ、勝負しよ!」
よし食いついた。
いい機会だ、あさひに少し叔母としての威厳をしめしてやるか




