第三話 ①
私の名前は霧隠あさひ。
……うん、忍者で女子中学生。
えっ?
自己紹介が適当すぎるって?
もう3回目だよ。
覚えたでしょ。
だってそれどころじゃないもん……
みんな、私今日初めて名古屋に行ってきます!
―――
中学二年になって初めての週末、土曜日がやってきた。
枕元のスマホのホーム画面には
「4:35」
という数字。
ヤバい!
緊張しすぎて、めっちゃ早く目覚めてもうた……
しかももう眠気なんてゼロだよ。
初めて友達と二人だけで三重県を飛び出して、
近隣では間違いなく最強の大都会・名古屋に……
しかもその中でも発展してる名古屋駅に行くんだよ!
緊張しないわけないじゃん!
とりあえずベッドから出て、
顔を洗おうと洗面所に向かう。
流石にまだ誰も……
と思ってたら、リビングのテレビがついてて、
お父さんもお母さんももう起きてるじゃん!
いや、そりゃそうか。
うちのお父さんってば、
5時には仕事のため家出てくんだったわ。
ちなみにお父さんは不定休で、
土日も普通に出勤することがある。
当然、そのお父さんに合わせて
お母さんは朝ごはんの準備してるわけだ。
リビングへのドアを開けて二人に
「おはよう」
って声をかけたら、お母さんが
「あら?早いわね。
ああ、名古屋行くのに興奮して目が覚めた?」
うっ!
さすがにお見通しか……
「なあ、何度も聴いて悪いが……
本当に一緒に行くのは女の子の友達なんだよな?
男子ではないんだよな!?」
お父さんが何度目かの質問をしてくる。
心配性だなぁ……
「大丈夫だって!
隣の新しい家に越してきた女の子だからって
何度も言ってんじゃん」
このやり取りにうんざりしてたから、
ちょっと語気が強くなっちゃった。
「ごめんよぉ〜……
でも心配なんだもん。
たとえ女の子とだとしても名駅だろ?
あさひみたいな可愛い子は
チャラ男にナンパされちゃいそうで……」
お父さん……
涙目じゃん。
「もう、あなたまで……
名駅をなんだと思ってんのよ」
お母さんが呆れて、ため息をついていた。
「そうだよ。
私みたいな田舎娘なんて
名古屋のシティボーイ達が相手するわけないじゃん」
……あれ?
でもシティガールで最強美少女の澄夏が
一緒なんだよな……
ということはワンチャン……
「はいはい。この話はおしまい!
あさひ、あんたも朝ごはん食べちゃう?」
お母さんがパワープレーで話題を終わらせちゃった。
「私の分のごはんもあるの?」
てっきりお父さんの分だけだと思ってたよ。
「当たり前じゃない。
この時間にあんた分もまとめて作ってるわよ。
いちいち個別に作るなんて面倒でしょ」
まあ、そりゃそうか……
「うん。食べちゃう」
そう答えると、お母さんが
私の分もダイニングテーブルに並べてくれた。
「それじゃ私はもう一眠りするから。
芽依が起きてきたら
勝手に温めて食べとくように言っといて」
そう言うと、お母さんはエプロンを外して、
さっさと夫婦の寝室に戻って行った。
そんなお母さんと入れ替わるように、
おっさんのようにお腹をボリボリ掻きながら、
小麦色の肌に金髪ロングヘアの
29歳国家公務員がリビングに入ってきた。
霧隠芽依。
お母さんの妹で、
私の叔母にあたる人だ。
私は普段、メイおばさんと呼んでる。
今はメイお姉ちゃんって呼ばないと文句言われるけど……
てか、お父さんの前で
タンクトップに下着だけはダメでしょ。
「おはよ〜……
今日はあさひも早いねー」
あくびしながら、
メイお姉ちゃんはさらにお腹の上の方を掻こうとして、
タンクトップが捲れ上がっちゃってた。
ストップ!
そこまでだ。
「おはよう芽依ちゃん。
僕の出勤前に起きてくるのは初日以来だね」
お父さん、すごいな……
メイお姉ちゃんのセクシー寝起き姿に全く動じて……
いや、
ちょっと鼻の下伸びてんな。
奥さんの妹をそんな目で見ちゃダメだよ。
「あっ!義兄さん……
やだ、私ったらこんな格好で……すみません」
ちょっと頭が覚醒したのか、
急に恥ずかしがるメイお姉ちゃん。
……いや、
アンタも姉の夫に
そんなメスの顔するのやめてよ。
「ハハハ……
じゃあちょっと早いけど
そろそろ会社行こうかな。
今日も芽依ちゃんのポルシェ
乗って行っていいかな?」
うん。
流石に恥ずかしくなったな……
って、
またメイお姉ちゃんのポルシェで出勤する気なんだ。
あつかましすぎだよ、お父さん。
「いってらっしゃいー」
私は片手をひらひらさせて
お父さんを見送った。
メイお姉ちゃんも恥ずかしそうに頬を赤く染めて
「いってらっしゃい……」
と、お父さんに声をかけてた。
「あさひ〜!
義兄さんにだらしないと思われたかなぁ」
「知らないよ!」
私に縋り付いて泣き言いうメイお姉ちゃんを、
一喝してやったわ。
「お母さんが、
メイお姉ちゃんが起きたら
ごはん温めて食べといてって」
と、お母さんの伝言を伝えて、
私は朝ごはんをごちそうさまをした。
さて、まだ5時だしなぁ……
そうだ!
「メイお姉ちゃん、
私ちょっと走ってくるわ」




