第11話:結婚式
二か月後。
俺とリアの結婚式が急遽執り行われることになった。兄のランクはどうしても来られないということで、欠席することが決まっている。
本当なら家族であるランク兄さんを呼ばずに結婚式をするなんてありえないのだが、やむにやまれぬ事情があった。
時は少しだけ遡る。
あれは毎日の日課である素振りをしようと庭に出た時だった。
「ちょっと今日は気分悪いから休もうかしら」
「素振りは毎日しないとダメなんだぞ? 少しでもいいからやってみろって」
「だって最近体の調子がおかしいのよ。仕方ないじゃない」
「……どんな風に調子悪いんだ?」
「身体は怠いし、頭痛が酷いし、肌は荒れるし、髪がパサつくの。おまけに生理も来てないのよね~なんでなのかしら」
リアはチラッと俺を覗いた。
俺は背筋が凍った。医学の知識は持ち合わせてないけど、それがどういうことかくらいはわかる。
「もしかして、それってあれか? デキちゃったのか……?」
「そうみたい」
「……」
いや待て、いつのタイミングだ? 異世界はキスしたら子供ができるのか!?
「あの日のアレルは酔ってたとはいえちょっと乱暴だったわ……」
あの日か! あの日なのか!? 夢だと思ってたら、本当にやっちゃってたのか!?
まあでも、済んでしまったことは仕方がない。
「そうか……子供か。ちょっと早い気もするけど、楽しみだな」
「楽しみ……?」
「一家揃って冒険者なんて家族そうないと思うぞ?」
「頭ぶっこわれてるのかしら?」
「毒舌言うと子供に悪影響だぞ」
「そんなこと聞いたことないけど……まあいいわ。ちょっと安心した」
「なんで安心するんだ?」
「だってその……アレルの子供じゃないって思われると思って」
不安げに俺を見つめるリア。正直、頭をよぎることすらなかったな。
確かにたった一回で妊娠するなんて普通じゃありえないことだ。でも、前例がないわけじゃない。
それに、リアが浮気するはずがない。
「嘘をついてるかどうかくらい見ればわかるからな」
「へえ~、そ、そうなのね。さすがは私の下僕じゃない?」
「パートナーじゃなかったっけ!?」
「そうとも言うわね」
急遽リアの妊娠によって強化計画は頓挫した。
彼女には出産まで激しい運動をさせるわけにはいかないからだ。
妊娠について父さんと母さんに報告すると、早めに結婚式をしておこうという話になった。
結婚には特別な届け出は必要ない。
プロポーズをして、相手が承諾した時点で婚約者になり、結婚式を挙げることで正式に夫婦になる。
この辺は日本とは違うところだが、感覚的にはしっくりくるような気がする。
結婚式前に子供ができたことについて父さんと母さんからはさすがに咎められるかなと思って内心ドキドキしていたのだが、反応は全く違っていた。
「いやー、もう俺たちに孫ができるのか! これはもしかすると曾孫の顔も見れるかもしれないぞ」
「ええ、本当楽しみですねえ~。若いお嫁さんはやっぱりいいわぁ」
めちゃくちゃ歓迎ムードだった。やっぱり変わり者な二人だが、素直にありがたいと思った。
結婚式は教会で執り行った。
父さんと母さんの結婚のときに色々とあって、集まる親戚も少ない。
花嫁衣裳を着たリアはとても可愛かった。
俺たちは永遠の愛を誓った。




