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第8話:Magical Pacific Case1

第8話:Magical Pacific Case1

翌日三連休という建前だが、休日には程遠い日々を過ごし、学校へと向かった。


学校は明るく、誰もが挨拶し、次のテストはヤバいぞ等と噂している。平和という言葉が最も似合うのは学のある学校。そう信じたいものだ。


だがその理想はすぐに壊された。留学生が上級生に絡まれてるように見える。僅かに聞こえる言語としてはスイス語、ここに来れるということは両親は良い銀行家だろう。


「桜さん、カバン持ってて。絶対に取られないように」

「は、はい!」


私は言語能力だけは高いチンパンジー共の後ろに立ち、肩を叩く。


「なんだぁ?」

「金銭の不当な要求。良くないよ。もうしないなら先生にも言わないでおくから」

「舐めてんのかよ!下級生のくせによ!」

「リ、リーダー!こいつ魔砲少女の朝月弥生ですよ!」

「銃が無ければ雑魚だよ!」


殴りかかってくるが、片手で止めて捻るように曲がり、左腕で首を羽交い締めにして、右手でボールペンを向ける。


「ひぃ!悪かったよ!もうしないからさ!」

「いい事教えてあげる。人間の脳みそを確実にかつ省力で抜くには眼を鋭いもので刺すといいよ。このボールペンはね、タクティカルボールペンって言ってタングステンで出来てる。催涙スプレーをポケットに入れてるあなたなら、タクティカルボールペンくらい分かるよね?」


相手は既に泣いており、私は解放し、上級生達は逃げて行く。

全く、魔砲少女達がいる学校で恐喝なんて、日本の学内治安も落ちたものだ。海外からの評価も落ちてしまう。


「君、大丈夫?」

「え……お金ならあげますから!許して!殺さないで!」

「大丈夫、私は正義の味方よ。少なくとも公的にはね。あなたのところで言うところのウィリアム・テルだと思ってくれたら嬉しいな」

「あの方をご存知なんですね……私の祖国の英雄です。助けてくれて、その名を口にしてくれたあなたを信用します。なにかできることはありませんか?」


私はしばらく考えた後に一言。


「タクティカルボールペンは内緒にしてね。ララさん」


そう言って私はボールペンを胸ポケットにしまって、桜さんと共に教室に入る。

すると駆け足で三河さんが走ってきた。緊急事態は避けたい話だが……

「朝月三等陸佐!お身体は大丈夫ですか!?」

「えぇ、軽い風邪だったみたい。いつもありがとう、三河さん。紹介するわ転入生の三永桜さん、彼女も魔砲少女だから将来的にはあなたの上官よ」

「も、申し遅れました!私三河保健委員です!何かあればいつでも頼ってください!」

「え、えーと……あ、はい……よろしくお願いします」


そして席につき、今日1日の授業の始まりを告げる鐘の音が鳴る。


午前の授業を問題なく終え、食堂に行くと、今日はソースカツ丼だった。疲れた体と心には丁度いいとも思い、食堂カードを差し込み、発券された単価は1円にも満たない券が、数百円のカツ丼と交換できると思うと経済の仕組みとは奇々怪界とも思える。


ソースカツ丼を受け取り、食堂のおばちゃんに笑顔で「お疲れ様です、いただきます!」と忘れずに声をかける。そのおかげか顔見知りになり、少しおまけもしてくれるようになった。

桜さんと共に昼食を食べていると、今朝助けたララさんが丁寧なお辞儀と共にやってくる。


「今日は助けてくれてありがとうございます!弥生さん!」

「私は大衆正義を果たしただけだよ」

「休み時間にお父様とお母様にご報告したら、ぜひお礼がしたいそうで……何かさせてください!」


困った……お礼を受け取ると立場が対等ではなくなる。だからと言って断れば相手は恐らく銀行家、自衛隊代表の魔砲少女として礼を無為に返すのは好ましくない。


「じゃあ、こちらの桜さんのお友達になってくださらない?まだ転入したばかりで友達が少ないんですよ」

「はい!喜んで!桜さん、次の期末テストにスイス語がありますが、私でよろしければお手伝いさせて頂きます!」

「え、あ、はい!よろしくお願いします!……スイス語は苦手なので……」


こうして授業を終えた後に帰り道で、ララさんがベンツのSクラスの迎えに乗り、学校を後にしていった。多分こういうところで目をつけられるんだろうなぁ……


私達も家に着くと、早速学校からの課題を済ませる。最近ではAIに課題を投げる学生も多いそうだが、この学校ではAI回答が示す特異的類似的な表現を見抜くくらいの言語知識がある先生方が揃ってるため、簡単に見破られる。

ちなみに1度目は厳重注意、2度目は卒業評価書記入、3度目は停学。となかなかに重たい。私としてはこれくらいしないと真面目にやっている生徒達が報われないと考えてるのでありがたい。


40分ほどで課題を済ませると、次はいよいよ今週土曜日から来週木曜日までの極東アジア管区第1魔砲防衛大隊による極東アジア防衛演習「マジカル・パシフィック2035」が開催される。学校側も理解を示してくれて、今週土曜日から2週間は特別自習言語レポート期間という名目で休みとなっている。

内容は大学教授らに評価され、夏休み期間もこの評価得点で変動するため、ここの生徒たちにとっては大きな戦いだとか。


私は桜さんの様子を見ると、リビングで課題を終わらせて、眠ってしまってるようだ。


「桜……お疲れ様……」


ブランケットを被せてあげて、私はノートパソコンの電源を入れて、国岩一等陸佐に繋げる。

国連部隊とはいえ、本質的には自衛隊が「参加する」演習のため作戦統帥権は国岩さんが持っている。


「定刻通りだな、朝月三等陸佐。桜訓練生は?」

「疲れて眠ってしまってます。私が責任をもって内容を伝えるのでご安心ください」

「そうか……まあ貴官なら心配は野暮というものだな」


互いに眠気覚ましのコーヒーをひと口飲み、国岩一等陸佐の視線が書類へと移る。


「本想定は今までのマジカル・パシフィックとは一線を画す。というのもアメリカ政府と魔砲妖精の貿易信頼レベル1つ下がった。そこでアメリカは魔砲妖精及び魔砲構成生命体との戦闘を想定したいと……」


私の内心は「嘘だろ……」という言葉でいっぱいだった。貿易信頼レベルが下がるのは無理もない。だが、相手が魔砲妖精に加え、魔砲構成生命体となるとテロリストなんて赤子くらい弱い。魔砲少女でそこそこ鍛えた青年レベル。魔砲構成生命体は装甲車を対機甲戦闘をさせられる歩兵のような話になってくる。


「魔砲構成生命体が相手なら魔砲少女小隊の集中火力と大隊主力機甲部隊の連携作戦が不可欠かと。ですが今回の演習地域は街と森を想定した場所です。機甲部隊の円滑な機動砲撃をしつつ、私たちの攻撃を集中させるのは至難の業です」

「その通りだ。そこで我々は魔砲少女軍事介入以来、史上初の大隊戦闘団クラスでの空挺降下で地図の東側台地を速やかに拠点とし、対戦車ヘリコプターなども待機できる規模での支配領域及び聖域化を実施する」


私は地図を見ながら考える。魔砲構成生命体想定なら敵の数は多くても100体未満、だが、こちらの火力はかなり減衰される。魔砲銃ですらダメージ有効率は10〜20%落ちる。


さて、そこで頼りにせざるを得ないのは対戦車ヘリコプターのミサイル支援と機甲部隊の120mm滑腔砲。参加戦力を見る限り10式戦車が24両と軽装甲型レオパルト戦車A2+M8が12両。空挺降下という重量制限上エイブラズム戦車やT-90など不可能に近い。

だが機甲部隊の空挺降下は本来は極限まで重量を落とし、なおかつ、降下後の速やかな機動展開を要する場合は輸送機も低空飛行せねばならない。


「国岩一等陸佐、聖域化前あるいはそもそも機甲部隊空挺降下が行えない場合はどうしますか?」

「……魔砲少女歩兵小隊と魔砲殺しライフルを有する特殊作戦歩兵中隊を展開し、機甲部隊の支援確保する想定だ」


なんというか……机上の空論で作られたという感想しが出ない作戦にため息を隠すことは出来なかった。

「こんばんは。朝月三等陸佐よ。今日のゲストは国岩一等陸佐に来てもらったわ」

「国岩一等陸佐だ。よろしく頼む」

「では、国岩さん。マジカルパシフィックはどのように開催された経緯があるんですか?」

「極東アジアにおける魔法戦連携強化が主な狙いと言える。当初は自衛隊とアメリカの魔砲少女のみだったが他部隊との連携や組織力強化のため統合任務演習化したと言える」

「なるほど、今後は他国もより参加するのでしょうか?」

「現時点では未定だが、東南アジアも魔法戦強化の動きがあるのは事実。遅かれ早かれ合流する可能性はあるだろう」

「ありがとうございます。読者の皆様、今夜はもう数話上がるので楽しみにしていてください。そしていつも私たちの活躍を見ていただきありがとうございます。それでは良い夜を」

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