第4話: Shooting training and actual combat
第4話: Shooting training and actual combat
「桜さん、拳銃は扱えるのかしら?」
「それが……軽機関銃は割と扱えて、小銃がギリギリ合格ライン。拳銃はさっぱりです……」
なるほど、衝撃を逃がすのが苦手なタイプか。本当は拳銃も扱えるようになって欲しいが、無理はさせたくない。
拳銃こそ銃の基本とも言われ、サバゲーが下手な人は拳銃だけでしてみれば上達するという噂も聞いたことがある。
だが、拳銃が全てというわけではないのもまた事実。どんな銃でも当たらなければ意味が無い。そういう意味では軽機関銃を正確に当てられる桜さんは頼もしいと言える。
「じゃあ、桜さんは軽機関銃で200m先の的を狙ってね。弾は100発、私も拳銃で100発撃つから得点勝負よ」
「はい!頑張ります」
シューティングのレーンに並び立ち、私はコルト・ターミネーターのL字型ドットサイトを点灯させ、赤い点を的の中央に合わせる。
カウンターが0になると同時にドンッ!と45口径+P弾の反動が手の中で爆発したような衝撃とともに、ホローポイント弾頭の弾が黒く長いバレルから飛び出す。
同時に桜さんの方からも5発ずつの7.62mmNATO弾が放つ重たく、大きな銃声が、軍用ヘッドセットを貫通して響く。
ドンッ!ドンッ!、ダダダダダーーン!と銃声の協奏曲が鳴り響く中、およそ5分の演奏会は終了した。
「安全確認よし!桜さん!薬室空にしてね」
「はいっ!……薬室点検よし!」
二人でモニターの点数表を見るとレンジの距離は私が30m、桜さんが200mで人の特性や適性にもよるが私の方が難易度は高め。
結果は……
「5点差で私の勝ちか……もう少し先輩として点数稼ぎたかったなぁ」
「弥生さん、恐れ入ります……拳銃で30m、しかも100発でこの精度って特殊部隊レベルじゃないですか!」
「まぁ、実際特殊部隊だからね」
そんな疲れから来る笑いで硝煙の空気とともに笑っていたら、私のスマホから米軍の砲弾飛来警報音をセットしてある音が鳴る。
「はい、朝月です……魔砲少女テロですか?非正規で間違いない……分かりました。では市ヶ谷へ……もう私の家の前ですか。分かりました。実戦には出しませんが三永桜も同伴させます。それでは」
「弥生さん……なにか良くない知らせですか?」
「国内の大手製薬企業ソウル・メイトの工場が複数人の非正規魔砲少女部隊と武装した人間に制圧されたらしい。すぐに向かうわ。念の為フル装備で」
桜訓練生は「承知しました!」と言い、弾倉を取り出して、記録も忘れずに記入してから、外の止まっていたのは、陸上自衛隊魔法特殊作戦コマンドの軍用車両「35式特殊作戦用重装甲車」通称緑熊が止まっていたので、周囲の私服姿の自衛官に魔砲少女の衣装のポケットに入れてある自衛官用身分証明書を見せる。
「朝月弥生三等陸佐、確認致しました。車内にお乗り下さい」
そして車内には警視庁のエリート魔砲少女 酒月 美琴がまだ陸上自衛隊内でも特殊部隊しか持ってない新型小銃「31式特殊作戦対特殊標的小銃」別名魔砲殺しを持っていた。
「酒月警部お久しぶりです」
「久しぶりだね。朝月三等陸佐、その子が三永防衛大臣の?」
「初めまして、三永桜と申します」
「よろしく、酒月美琴警部だ。これでも朝月の手芸品落札ライバルの1人だ、仲良くしてくれると嬉しい」
運転席から発進信号が付いたため、最低限のシートベルトだけ締めて、しばらく雑談も混ぜた作戦会議に移行する。
「ターゲットの狙いは判明してるのか?」
「南米カルテルが動いてるというのが外事課の推測だ。恐らくだが製薬情報ないしは製剤機器の持ち逃げだろう」
「ソウル・メイト製薬といえば医療用フェンタニルの製薬をしていたな……噂で聞いた話だが、薬物依存者の為の一時緩和薬のスーパーフェンタニルの開発も聞いたことがある」
酒月警部は指をパチンと鳴らして、「その通り」と得意気に評価をくれる。そして資料を私と桜訓練生に渡して、中を確認するが、ため息しか出なかった。
「ここに記されてる通り、スーパーフェンタニルは依存性は非常に高いが量を守り、適切な管理下に置けば一定程度の薬物依存で破壊された脳でも恒常的な快楽を定期的に得られる。逆に言えば快楽のATMだ」
カルテルが欲しがるわけだ。今まで麻薬と呼ばれた物は基本的に快楽のリボ払いと言われることがあるほど、最初だけ強い快楽を得られる。それが恒常的となれば世界中の反社会的組織からしたらこれ以上ないレア物だ。
こんな恐ろしい物を流通させるわけにはいかない。
私は怒りと共に、空のコルト・ターミネーターのスライドを引いて、空撃ちする。
カチャンという作動音を聞いた時に、長年の付き合いでもある酒月警部は軽く笑いながら、言葉を交えてくれる。
「相変わらずだな。朝月が怒るのも無理はない、こんな犯罪とっと解決しようか」
「あぁ……民間人の犠牲者は絶対に出させない」
桜訓練生が私の猫背になってる背中に手を当てながら、少し怯えるように聞いてきた。
「弥生さん……何か薬物犯罪に……嫌な思い出が……?言いたくなければ……」
「いや、桜訓練生には伝えておく。私の両親が乗った車は薬物中毒者のトラック運転手に衝突された。運転手が生きて、両親は死んだ……許せるわけがない……私の両親が何をした!お父さんもお母さんも真面目に生きて、私の事を愛してくれて!!」
「落ち着け、朝月三等陸佐。お前らしくないぞ。気持ちは分かるが照準がブレる要因になるぞ」
「すまない……2人とも……」
私は深呼吸して、ボックス呼吸法と呼ばれる4秒吸って、4秒止めて、4秒吐くという米海軍特殊部隊で使われてる自律神経リラックス法を行う。
魔砲少女なら心の弾丸の能力で強制的に落ち着く脳内伝達物質を分泌できるが、私はそれに頼りたくない。何故ならそれではあの憎き運転手と変わらない……そんな気がするからだ。
そして40分後には現場となった製薬工場に着き、緑熊から降りると現場責任者と思われる刑事とスーツ姿のお役人が喧嘩していた。その後ろには……
「カロライナ!ミラ!」
「やぁ、昨日ぶりだね。弥生」
「お疲れ様です、朝月三等陸佐」
この2人がいると言うことは前に立っているスーツ姿の男は……
「ハロー、ウィルソン魔砲犯罪特別対策官」
「ん?おぉ!ミス、朝月!Long time no see!!(久しぶりです)」
「日本語でも構いませんか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。とりあえずこの公安刑事をなんとかしてくれませんか?」
私はイカつい顔をした、公安刑事を見る。警視庁の立ち入り許可証代わりの札を下げていることから公安部と見て間違いない。ならば……
「お兄さん、公安刑事ですか?」
「そうだが?君たち魔砲少女の出番はないよ。我々で解決する」
「相手が武装カルテルでなおかつ非正規魔砲少女もいます。死傷者を出さない為にもここは取引しませんか?」
「君みたいな少女が我々大人と……」
「三永防衛大臣の娘が来ています。現在の我が国の法律では非正規魔砲少女の対処は魔砲少女によって統制される魔砲少女犯罪対策法が施行されており、ここでもし、発砲があって三永防衛大臣の娘が負傷したら……」
現場責任者の公安刑事は嫌そうな顔をしだす。まぁ当然と言えば当然だが、責任を負いたくないのも向こうも同じ。同時に一応は向こうの領分となっている。さぁ、どう出る?
「酒月警部も来てるんだよな?」
「えぇ、彼女の戦闘技能は公安部なら把握済みでしょう」
「分かった。手は引かないが、後で報告書を警視庁に送ってくれ。約束だぞ」
「『アメリカの外』宛に私の名前で送ります」
「なんで少女がそんな隠語知ってんだよ……とりあえず第5課(架空の外事課。ここでは南米カルテルなどを対象とした外事課グループ)へ報告書は任せた」
私は「感謝する」という言葉と共に敬礼して、現場責任者はタバコを取り出して、吸いながら、セダンへと引き返す。
「ウィルソンCIA工作担当官、道は開けました。事情を聞かせてください」
「ありがとう、朝月三等陸佐。こちらも真摯に説明しよう」
他の自衛官や警視庁のSATが包囲する現場で、私は世界の闇を聞かされる。正直こういう話には慣れたものだ。




