第5話:Drag mission
第5話:Drag mission
ウィルソンCIA工作担当官はスマホで顔写真と資料を見せてくれる。
「スリーシックスですか……」
「そうだ、国連及び米国が国際手配してる非正規魔砲少女であり、我が国が正義への報奨金プログラム指定の中でも最大規模のクラスA+の人物だ。報奨金金額5000万ドル」
「彼女が現場に?」
「いや、部下らしい。とりあえず自分でもスリーシックスを捕まえれば一生楽できるし、協力して欲しい」
私はウィルソン工作担当官の今までの会話や態度を思い出す。彼は真面目で魔砲少女を信用し、あくまでも大衆正義の工作担当官だ。決して金儲け主義ではない。ただ5000万ドルという金額を見れば誰だって、欲しくはなる。ならば、事件解決のために協力し合うのが理想か。
「報告書は後で公安部に送りますが、それでもよければ」
「もちろんです。カロライナ、ミラ。後は2人とも朝月に協力してくれ。Good drug!」
Good drug?良い薬?隠語か?それともGood luckの聞き間違いか?
「じゃあ、弥生。作戦に目星はついてるか?」
「相手が魔砲少女である以上、そちらでいうコード4(状況安定などの意味。今回は犯人射殺の意味)が必要だろう。同時に人間は生かしておきたい」
「同意だね。そこにいる可愛いポリスの魔砲少女に魔砲少女殺害を任せるべきと思うかな」
「え……私ですか?」
カロライナは酒月警部の手を握り、手にキスをする。
気持ち悪いかもしれないが、カロライナの乙女の願望は全世界の魔砲少女の中ではトップ5に入る。故に魔砲少女の体調に非常に敏感なのだ。
唇が魔砲少女に触れればある程度の感情と正確な心の弾丸の侵食具合が分かるほど。
「不同意わいせ……」
「うん。感情は問題なさそうだが、心の弾丸の侵食具合はあまり良くないね。弥生にも内緒にしてるでしょ?」
「噂通りですね。ミス、カロライナ、最近日本の治安もあまり良くないので」
「酒月警部、魔砲少女はまかせていいですか?」
「むしろありがたい。警視庁上層部も悩んでいたからな」
となるとバトルライフルに特化したカロライナ、準長距離狙撃に特化したミラ、拳銃射撃に特化した私が対人相手か……。
カロライナはともかく、ミラは難しいな。野戦では非常に頼りになるが工場のような閉所戦では不利にもほどがある。
「ミラ、サブマシンガンは扱える?」
「はい!次世代強襲カスタムを施したクリスベクターを用意してるよ」
ミラは車両に戻り、どう見てもアサルトライフルが入りそうなガンケースを取り出してきて、我々の足元で開く。ストックが折りたたみ式のSCARタイプのストックに換装され、CQRグリップと呼ばれる人間工学に基づいたグリップに、本来なら一体型が困難なストライカーシステム搭載のサイレンサー。照準器はナイトビジョン対応の等倍率チューブ型ホロサイト、3倍率ブースターもセットしてある。
かなりマルチロールな戦いできると私が確信するには十分過ぎた。
「アメリカさんはお金があるな。ミラと私が前衛、中衛を酒月警部、後衛及び火力支援をカロライナに任せようと思う」
「「「異議なし」」」
「カロライナ、もしもの時は……」
「分かってるさ、仲間の為ならマジックハント(魔砲少女を殺害する時の隠語)も厭わないよ」
そして工場の入り口前に待機してるSATに私と酒月警部が説明し、突入準備を開始する。
「さて、内部の見取り図を見る限りだと……工場正面のロビーに戦力が集中および弾丸を防げれそうな物が多いな」
「メリン、ロビーに敵はいる?」
「うーん、魔砲少女の反応しか分からないけど、2名確認できるかな。ミラのスナイパーで無力化出来そう?」
「メリン……無傷は無理だけど武器破壊と重傷くらいなら……」
私は作戦を見直して、裏の搬入口から侵入を計画する。正面はSATと酒月警部に担当させ、ミラの狙撃を合図にそっちに注意を向かせ、私達は人質の確保とテロリストの拘束を行う。作戦を提案し、全員が同意する。
私達3名が配置に着くと、ミラから「狙撃を開始する。狙撃を開始する」と連絡が入ると同時にバレットMRADのサイレンサーで減音された。「バッシューーン」という音とも表現出来る銃声が山中の盆地にある、辺り一帯響き渡ると同時に、特殊音響閃光弾とサブマシンガンの激しい銃声が響き渡り、こちらも突入を開始する。
工場内は非常に入り組んでいるため、拡張現実機能付きのシューティンググラスで室内図を確認しながら、私はコルト・ターミネーターを構えながら、クリアリングをしていく。そんな時、酒月警部から無線が飛ぶ。
「敵魔砲少女、制圧。1名射殺、1名は武器を捨てたため、拘束。当官の侵食率は0%に戻った」
本当は直接祝ってあげたかったが、無線機のボタンを数回押して事前に録音されていた、「了解した」という音声を流す。
赤外線カメラで人が集まってる会議室前に着くと、武器を持っているテロリストは5名、壁側に並んでおり、人質を前に座らせている。
人の盾か……
「カロライナ、スモークを換気扇から流し込む。視界を奪ってるうちに犯人の射殺で行こう」
「侵食率がかなり大きくなる。私が絶対に3秒で武器を全て破壊するから、重傷で拘束させる方向にさせて」
「分かった、信じてるよ」
近くの通気口に回りこみ、3個のスモークグレネードの栓を抜き、工場内は速やかに煙に満たされる。
「Go!」
ガンッ!という音と共にドアをぶち破ると、カロライナが信じられない動きをする。
片手でHK417を構えながら、水平側の相手を滑り動きながら確実に銃声と共に、AK74と思われる銃を破壊し、人質が叫んだりしても、一切ブレずに射撃を決める。
これが米軍の最精鋭魔砲少女か……
そして私は負傷して、混乱しているテロリスト共を銃底で首をガンッ!と殴り、気絶させてから拘束用ワイヤーで両手と両足を縛り、カロライナに伝えようとするが、煙で姿を確認できない。
「通信を使うか……カロライナ、聞こえる?」
「聞こえるよ、少し辺りをクリアリングしていた。操作室を見る限り、荒らされた形跡がある。ここからは日本の領分だよ」
「了解した。TCCC(戦術的戦傷救護)の知識があるカロライナにテロリスト及び人質の管理を任せたい」
彼女は「了解」と返して、駆け足で戻ってくる。すぐにターニケット(止血帯)を何本か取り出して、人質は軽傷でターニケットを不要だと判断すると、テロリストに使い始める。
「テロリストの容態は?」
「やや出血の多い者もいるがギリギリ1Lを超えた人はいないね」
するとSATを引き連れた酒月警部が駆け寄ってきて、隊員に人質を任せて私たちの方に近づく。
「2人とも無事か?」
「私は平気」
「私も問題ないよ、可愛い魔砲少女と結婚する前に死ねないからね」
「なぁ、朝月三等陸佐。カロライナさんはいつもこうなのか?」
「平常運転だよ。というか酒月警部も私の手芸品狙ってるじゃん」
同族嫌悪という言葉が似合う表情を見せる酒月警部と同じ私を想う仲間としてライバルとして見るカロライナの2人が同じ空間にいるのはなんとも奇妙な気持ちにさせられる。
煙も晴れてきて、SAT隊員の1人が走ってきた。
「魔砲少女達に報告!犯人が1名逃走した模様!」
「「「なっ!!??」」」
「どの方向へ?」
私の質問にSAT隊員は裏口から逃げた模様と答える。おかしい……裏の搬入口と裏口は同じ通路を通らねばならない。
つまり私とカロライナの目の前に居なくては話にならないのだ。
「車両等は使用したのか?」
「酒月警部、痕跡が確認できませんでした。至急公安部魔法課が到着するとのことです」
「厄介だな……魔導力学アイテムを使用したとすれば……」
「弥生に同意かな。魔導力学アイテムを使ったとすれば、敵のボスはスリーシックスと見て確定だ。だが何故この製薬工場を狙ったんだろうか……」
私も考えるが、これ以上は警察の仕事だ。酒月警部率いる警視庁の人間を信じるしかない。
私は桜の所に戻り、報告書の書き方も教えると伝え、カロライナとミラも日本の法律に則った武器の安全状態を確認して、2人が帰国する前に話す。
「2人はすぐに帰国するのか?」
「いや、寿司を食べてから帰る」
ミラが不機嫌そうな表情を見せながら、私に愚痴をこぼす。
「メリンたったら酷いんですよ!私が作ったロブスターのソテーより、回転寿司の方が食べたいって言うんですよ!」
「ミラの手料理が豪華で美味しいのは日本最強の1人の魔砲少女の私が保証するから安心して。カロライナは珍しい料理が好きな浮気者だから」
「弥生、そんな言い方は酷いよ……」
桜も含めた4人で笑った後に、事件現場を後にして、家路に着く。
「こんばんは、また皆様に会えて嬉しいわ。今日ラストの投稿よ。ゲストには酒月警部に来てもらったわ」
「酒月警部です。警視庁に所属してますが、あまり警察らしい事は出来てないのが玉に瑕です」
「酒月警部は警視庁に所属する魔砲少女特殊部隊のリーダーという認識であってますか?」
「その通りです。意外かもしれないですが、警視庁所属の魔砲少女は事務方以外は自衛隊で訓練をします。そこで私は司会の朝月に出会って軽いファンになりました」
「なんか私の周りは変な魔砲少女が多いけど酒月警部はまだマシね。カロライナと来たら……」
「まぁ人気者の宿命みたいなものなんじゃない?そろそろ締めておく?」
「そうですね。伝え忘れていたのだけど、私の訓練生時代のエピソードが短編にあるから気になった方はそちらもどうぞ」
「「それでは良い週末を!!」」




