第24話:old sniper Engage
第24話:old sniper Engage
「カロライナ、誰と話していた?」
屈強そうな見た目の男は拳銃を片手に、私に問いを投げかけてきた。
「ミラに最期お別れ通話だよ」
「任務に失敗する気か?」
「相手は日本最強クラスの魔砲少女。私も全米最強クラスの魔砲少女。どっちが死んでもおかしくないさ」
「それもそうだな」
私は中部国際空港の御手洗から出た時に待ち構えていたラストトリガーの隊長に返事を返してから、プライベートヘリポートから東京のララちゃんの家に向かうヘリコプターに乗り込む。
弥生から送られてきた情報を伝え、そこに朝月2等陸佐がいると言った途端、向こうはすぐにヘリの移動先を変更するように発令した。
全く気の早い連中だ。
ヘリコプターの中にはパイロットと私だけ。
嵐の中でも悠々と空を飛ぶヘリコプターという物のエンジン音も静かで、これから祖国を裏切るを覚悟を決める。
同時にライカの身も滅びると考えると私の人生はなんだったのか。今一度問う機会となっていた。
その頃統合幕僚監部本部では
「山岩陸将閣下、お久しぶりですね。武器管理部においでになさるとは」
「あぁ。純希三等陸佐。元気そうでなによりだよ。私の昔使っていた20式マークスマンライフルとマガジン1本を渡してもらいたい」
やはりと言うべきか、彼は難しい顔をして、事由を尋ねてくる。
「魔法特殊作戦機動師団で私の技量を見せようと思ってね。私が元陸自スナイパーエースなのは知っているだろう?」
「あ、あぁ……それならサインと指紋認証だけお願いします。くれぐれもイリーガルな事だけはお控えください」
「うむ。同意だ。私も揉め事は嫌いだからね。では持っていくよ」
私は自動的に運ばれてきたガンケースを受け取り、中身を確認した後に市ヶ谷の高級幹部専用の送迎車にララ君に家から1km離れたビルへ向かうようにドライバーに指示を出す。
「山岩閣下、まさかと思いますがそれで人殺しとかしませんよね?」
「ん〜?貴殿は私が職権濫用からの殺人ないしは傷害罪を犯すとでも?」
「あ、いえ。失礼しました」
「まぁ今からするのは非正規作戦だ。しかも警視庁、外務省も動くな。だから貴官は何も知らずに送ってくれるだけで構わない」
ドライバーは怯えながら「はっ……」と返すだけだった。
まぁそれも仕方ないだろう。陸自ナンバー2の階級を持つ人間が非正規作戦に参加する等と言ったら部下からすればゲロを吐きそうなくらいの重たい話だ。
そのまま雨音だけの静かな東京都を進み、警視庁の友人からメールで「『ガス処理』は発令された」と送られてくる。
「流石だな」
「え……どうされましたか?」
「独り言だ。気にしなくていい」
と言っても今ドライバーの胃は胃潰瘍寸前のストレスだろう。頼むから今胃痛で事故だけは起こさないでくれよ。と心から祈る。
その頃ララ邸宅では
「朝月さん、お待ちしておりました。既に私の身分はご存知ですよね……?」
「えぇ。特別学生外交官ララさん」
彼女は少し寂しそうな顔をしながら、「こちらへ」と久しぶりに邸宅内に入れてくれる。
そこにはリリーナの姿もあった。
彼女も落ち着かないのか、ひっきりなしにコーヒーを何度も一口ずつ飲む姿が見られる。
「リリーナ……」
「あの変態元小隊長の事よ。きっと這いつくばってでもあなたを追いかけると思うわ」
「同意……かな。ララさん、コーヒー頂けるかしら?」
「あ、はい!喜んで!」
私はリリーナと向かい合うようにソファに座り、コルト・ターミネーターを取り出す。
今の彼女は武装は多分していない。当然だろう、彼女が今日本にいる理由は日露合同軍事演習の為の視察官としてだ。
「魔砲銃の展開する覚悟はできてるの?」
「当たり前よ。祖国に仇なす存在が居ればカラシニコフの魂を引き継いだ、猟牙で切り裂くのみ」
しばらく静かな時間が訪れ、ララさんがコーヒーを置いてくれる。
その香りだけが今の私の五感に安らぎをもたらしてくれた。
そんな時、小さな爆発音が聞こえ、誰かが季節外れの打ち上げ花火かイタズラにロケット花火を打ち上げたのかと思った。
「どこのバカだ?」
「いや、カロライナだ!!」
「えっ!?」
そしてインターホンが鳴り、ララさんを下がらせ、私とリリーナでドアを開けると右手を挙げて「よっ!」と笑顔を見せるカロライナが立っていた。
「何したの?」
「輸送ヘリだけ爆破しといたよ。これで私は裏切り者だね」
「私達極東管区の魔砲少女の中ではあなたは仲間の為に祖国を敵に選んだ勇者よ」
カロライナは1粒の涙を零し、一言付け加える。
「妹は見捨てちゃったけどね……最悪なお姉ちゃんさ……」
誰も何も言い返せなかった。カロライナと初めて会った時に彼女は妹を助けるために軍に入り、魔砲少女になったと。
ララさんがコーヒーを用意してくれると、カロライナも自然とソファに座り、コーヒーを楽しむ。
「ララ外交官可愛いね。ララちゃんって呼んでもいい?」
「え、あ、構いませんよ」
「また浮気してるよ……」
リリーナの鋭いツッコミに、皆が笑い、そんな中でカロライナが軽い感じで私に1つ質問をしてきた。
「桜ちゃんは大丈夫なの?」
「酒月警部達が保護しに行ってるよ」
「そうか……もう弥生のお手製グッズライバルがまた1人、私が居なくなるのか……」
「そうね、これでしばらくはマフラーとか手袋作らなくて済むわ」
するとカロライナはバックパックから私が送った季節外れのマフラーを取り出して、首に巻く。
「これで弥生が守ってくれるね」
一瞬気持ち悪いと言いかけたが、彼女がこのマフラーで安らかに眠れるなら、それはそれで良いように思えた。
するとカロライナに無線が入り、彼女はスピーカーを付ける。
「カロライナ、仲間のナイトストーカーズ(米空軍特殊部隊第160特殊作戦航空連隊。特殊部隊輸送のプロフェッショナル集団として有名)の隊員を殺した気分はどうだ?」
「仲間に、機体に搭載されてたブローニングが当たらなくて良かったと思ってるよ」
「お前の裏切りは確認した、既に都内に入っている。覚悟しておけ」
そう言われ通信が切れる。
「よしっ!皆逃げる準備を!ララちゃんご迷惑かけちゃったね」
「これからが本当に迷惑がかかるタイミングですよ。お父様と山岩陸将閣下から私の外交官身分を活かせという事なので、存分に盾になりますとも」
私はこれで気がついてしまった。ララさんは自分を犠牲にするつもりだと……
「カロライナ、ララさん……本当に死ぬつもりなの?」
「ふふっ、まさか。相手は明確な交戦規定を設けた特殊部隊です。永世中立国の外交官に当てればタダじゃ済まない事くらいわかってるはずです」
「そうだよ、弥生。私だって死ぬ気なんてないさ『死ぬ気』はね」
この強調された意味を考える。言いたくない、言いたくないが、恐らく心の弾丸の侵食だろう。
我々は本来人殺しの道具やましてや殺し屋や軍人でもない。むしろそれらを抑制するための存在なのに政府が良いように使い始めたのが全てのキッカケだ。
「リリーナ、カロライナ、よろしければララさんも極東管区魔砲少女小隊の任務成功の合言葉を」
「うん」
「えぇ」
「もちろんさ」
「「「紅き月は沈む夜に、朝日と共に登る陽は未来の1日に!!」」」
その誓い言葉と共に、各自が準備へと入る。
いよいよ始まるのだ、政治家達の欲望の裏切りのツケが。いつかクソ政治家共は全員国のために死んでいった者たちの墓場で土下座させてやる。
「こんばんは、朝月です。今日のゲストはララさんに来てもらいました」
「どうも、よろしくお願いします。この企画に呼ばれたことってありましたっけ?」
「この作品の始まりが少し前というのと作者が色々な作品に浮気してるからね…後で個別でシバいておくわ。さてララさん特別学生外交官とは?」
「簡単に説明すると他国の青少年の育成状況や学習調査などを担当しつつ、いざと言う時の武器庫番ですね。子供ならあまり怪しまれないので」
「なるほど、拳銃の扱いも祖国で?」
「はい!みっちり仕込まれました」
「ありがとうございます。それでは皆さんいい夜を」




