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閑話休題:真田一等陸曹の今

閑話休題:真田一等陸曹の今

俺は今新設される予定の新しいレンジャー課程の体験教育を受けている。

詳しいことは秘密だが、困難を極め始めてる国際魔法情勢に対応するための組織改編も含めた課程らしい。

俺自身元中央即応連隊に居た後に空挺レンジャー資格を取り、特殊作戦群へ。

非常に厳しく二度と受けたくないセレクションを突破し、なんとか地位を確立したが、そこで俺は魔砲殺し小銃の異名を持つ31式特殊作戦小銃の使い方を学び、更にはメディックの資格とLAM(対戦車ミサイルのパンツァーファウスト3の愛称)の使い方を学び、今では二等陸尉、部隊戦力の根幹を担っている。


そんな俺達の元に御崎中隊長宛に新レンジャー課程のテストが出された。


「中隊長……この回転翼機。静かですね」

「だな。JSOCもお気に入りらしくてなかなか日本に輸出してくれなかった品物らしい。MV-22オスプレイ次世代特殊部隊型SWV(特殊武装垂直離陸の意)-32デスエア・レイド。速やかに敵地に侵入し、部隊降下と同時に次世代対魔砲構成生命体ミサイルを14発装填と9.8mm魔導徹甲弾機銃を2基。化け物並みの火力だが、信頼はできる」


航空機内と言うのに旅客機がドン引きするほどの静寂性は有難いが逆に不気味なくらいだ。

機内では敵地浸透前にリラックス用として開発された軽いニコチンとリラックス効果のある成分を含んだほぼ無香料の電子タバコが許可されている。

魔砲少女台頭以来、人類側の特殊部隊はその役割を大きく変え、高度かつ理不尽な命懸けの戦闘を毎回行うため、開発されたとか。


「こちら機長、もうすぐランディングポイントに到着する。展開に備えよ」

「よし、各小隊長へ。本演習、そして現想定は魔砲少女達の精鋭化をはらんだ日本の国防に関わる重大かつ重要な演習だ。我々がその先陣を切る以上失敗は許されない。田中三等陸尉、貴官は予備指揮官だ。私と小隊長をロストしたら速やかに撤退しろ。撤退も想定の内だ」

「はっ!」


そしてデスエア・レイドが着陸すると僅かに機体が揺れ、ハッチが開くと同時に夜の砂浜から機動作戦を開始する。


「CP、こちら中隊長。デスエアは上空旋回待機願いたい。おくれ」

「こちらCP、デスエアは25分間の上空旋回待機なら可能。またその間であれば対地支援を実行出来る。おくれ」

「中隊長了解。返答不要。おわり」


御崎中隊長が赤い特殊部隊用のシグナルライトで前進するように自分の小隊に指示を送ってくる。

そして四眼ナイトビジョンを起動させ、夜の軍艦島での特殊想定作戦行動『魔術界想定』が実行された。


御崎中隊長率いる本部管理小隊、通称本管は後方で待機、メディックや迫撃要員が増強されてるため、小隊が重装備の敵とコンタクトあるいは部隊が大きな打撃を負った時、敵の誘導からの2個小隊で叩くというバックアッププランもある。


「こちら1-0小隊、中隊長へ。旧市街地ポイントセンターにて中隊規模の魔剣構成生命体を確認。支援を要請。おくれ」

「中隊長了解。デスエアによる火力支援を実施する。各小隊員は敵中隊から距離を取れ。返答不要。おわり」


デスエア・レイドの緑と赤のライトが上空に見えた途端、ARSGに映し出される映像は機関銃とミサイルの交互射撃で瞬間的に敵を蒸発させる。

ARSGとリンクしたヘッドセットにはお腹にまで響くくらいの爆音が鳴り響き、小隊長として仲間を安全なラインまで下げれた事を僅かながらの誇りに思う。


「デスエアから各小隊長へ。敵中隊の殲滅を確認。なお当機はこれより補給のため撤退する。ネクスト40(次の40分まで。例えば午後6時にネクスト40なら午後6:40を指す)まで支援は行えない。返答不要。おわり」

「中隊長から各小隊長へ。これより主要坑道と補助坑道の制圧へと移行する。なお本想定において、通信シグナルを完全にロストした小隊が出た場合速やかに全小隊地上へ上がれ。質問以外返答不要」


いよいよ作戦も本格的に激化するのだろうか……少なくとも防衛省のお役人さんが厳しいドSでも無ければここから先に重武装な魔剣構成生命体は出てこないだろう。

だが、現実はそんな甘くないのも事実。

それは俺が身をもって体感してきた。魔術界との戦闘は人間の良識を超える残酷な戦闘なのだから。


「こちら2-0小隊からCPへ。坑道入り口に当たる第二堅坑を確保。敵影視認せず。なお現在までの斥候による主要坑道付近の偵察結果として、ウォーリアクラスと思われる戦力がいると通知が来ている。1〜3小隊集結による総火力で臨みたい。意見を貰いたい。おくれ」

「CPCO(コマンドポスト指揮官(CommandPostCommnadingOfficer))から2-0小隊長へ。部隊損耗率の悪化を避ける為にも作戦に同意。各小隊との連携を密にして、確実に安全を確保しながら行動を実施せよ。おくれ」

「2-0了解」


1-0小隊を任されてる身としては安全な場所に居たいが軍人が安全な場所にいてはお話にならない。

かつて都市伝説ばかりが先行し、実際の作戦で功績を残せなかった特殊部隊のようなオチにはなりたくない。

そして新しく入る魔砲少女達の精鋭化と生存性の為にも我々大人が自ら体験したことを伝えねばならない。


「1-0小隊、前進。各員は不審に思った点があれば、遠慮なく言え」

「小隊長、その……小官。先程の火力支援時に少し驚いて足首を挫いてしまって……」

「了解。近接戦闘班と火力支援班は先に行け。田中三等陸尉、お前が指揮を執れ。医療班と指揮・通信班はここで柳川の治療後速やかに向かう」

「了解です。小隊長、部隊前進。第二堅坑までおおよそ800m、足首を大事にしろよ」


田中三等陸尉のジョークも交えた指揮に少し安堵し、俺は一旦装備を下ろし、柳川三等陸曹のブーツと靴下を脱がすとかなり赤く腫れていた。


「お前……ただ挫いただけじゃないだろ?」

「挫いた時に小銃のストックがぶつかって……」


これは骨折も想定しないとな……


「歩けるか?」

「正直に言います……かなり激痛です……」

「冷却パックで冷やしながら、添え木で固定……通信班。本管に輸送人員を要請してくれ」


通信班が本管への連絡をしている間に治療を済ませ、珍兵器扱いされていた1人で動かせるキャリーケース風の担架を持ってきた本管隊員へと引き渡す。


「なぁ、本管衛生要員。その担架……荒地でも使えるのか?」

「乗り心地は悪いですが、負傷が余程酷くなければ使えますよ」

「そうか。普通科連隊にも配備しておきたいな。柳川三等陸曹後で乗り心地聞かせてくれよ」


そう言って俺は彼の肩を叩き、彼の分の弾薬を小隊内で分割する。

「よし、小隊早駆け足。遅れを取り戻すぞ」


その頃

3-0小隊は2-0小隊と合流しており、各自が緊張の息を飲みながら、武装の最終点検を行っていた。その1つ1つの動きに意味があり、同時に戦場での生死を分ける。


「1-0が遅いな」

「本管からの連絡によると負傷者が出たらしい。だが近接戦闘班と火力支援班は見えてきたな」

「1-0先発隊到着です。負傷者1名につき、指揮・通信班及び衛生班に3分の遅れ」

「2-0小隊長了解。斥候がそろそろ戻ってくる」


2-0小隊長の視線の先から比較的軽装の隊員達が足早に小隊長へ、自ら見た状況を事細やかに伝えると、坑道地図を取り出す。


「田中三等陸尉、貴官がこの状況を聞いたら小隊長に伝えろ」

「了解。状況はどうなってるんですか?」

「……ウォーリアクラスの中隊集団とグングニルクラスが小隊規模で存在するとのことだ。ウォーリアクラスから手間取って、グングニルクラスに接近されたら対応できなくなるが、グングニルの排除に時間をかければウォーリアの集団近接で壊滅しかねん」


各小隊長が悩みながら火力支援班の持つ34式110mm地対地攻撃誘導弾を眺める。しかし崩落のリスクを考えると積極的な使用が出来ないのも士官クラスなら想像にかたくない。


「34SSMを最後の手段にしつつ、積極的防衛でじっくり小銃で削りつつ、対物ライフル要員による狙撃か……」

「いざとなれば補助坑道を使用すれば確保地点の掘削地域へ目指せます」

「よし。それで行こう。34SSMの使用は各小隊長の任意とする。ARSGのご機嫌次第では作戦失敗のリスクがあるが撤退も作戦のうちだ」


そして1-0小隊の残り部隊とも合流し、中隊長への報告を予備指揮官の田中三等陸尉の能力評価も兼ねて行わせる。


「1-0小隊配属予備指揮官から中隊長へ。作戦開始について……」


彼は事実のみを伝えて、憶測や感想をなどを一切排除した報告文を伝える。


「中隊長了解。各小隊の健闘を祈る。返答不要。おわり」


そして坑道へと進み、俺の率いる1-0小隊は最後列となった。

敵の総力は増強中隊規模と考えるとかなり厄介だが、やるしかない。そして最後列ということは撤退指令の時に速やかに動かねば被害は拡大する恐れがある。つまり責任重大ということだ。


軍用腕時計を確認しながら前進すると1番信号が赤色に光る。

敵を視認した合図だ。


そして同時に魔砲殺しの魔砲徹甲弾の咆哮に似たオーケストラが鳴り響き、狭い坑道内を明るく照らす。


「小隊火力を集中!2-5と2-6は俺の指示するレーザーライトに対物狙撃!」

「グングニルクラスが構えてます!34SSMの使用を!」

「ダメだ!この距離だと外したら間違いなく、崩落する!」


3-0小隊と2-0小隊が応戦する中で、俺達1-0小隊は万が一の後方襲撃に備えていた。


「もどかしいですね……小隊長……」

「気持ちは分かるが今は後ろを守りつつ、いざと言う時は撤退支援だ」


そんな時だった。一瞬のノイズを俺は聞き逃さなかった。勘が正しければ……


「中隊長、感明よろしいか?(無線の通信の繋がりの確認)」


返事はない。マズイ……恐ろしくマズイ!!


「通信班!広域無線でも連絡は取れるか!?」

「先程から全域での無線が感度0!孤立し、ブラックアウトしたと思われます!」

「マイクロ逆位相通信波の時計信号は使えるか!?」

「それならギリギリこの坑道内なら使用可能かと!」

「オールランプ・レッド!速やかな撤退だ!!」


通信班は速やかに信号を調整し、こちらの火力支援班と近接戦闘班を数名先に第二堅口の確保へと向かわせる。

状況は最悪に近く、真の最悪かクソ最悪の2択しかない。

もし……もし……本管が壊滅していたら……

すると第二堅口付近から激しい爆音と発砲音が聞こえ、我々が完全に分断された事を悟る。


3-0と2-0小隊長が血相を変えて、こちらへ駆けつけ。状況を問う。


「何がどうなってるんだ!?」

「無線が完全にダウン!あと地上付近で戦闘発生の模様!我が隊の班が対応に追われてる!」

「後ろもグングニルクラスが突撃してきてるぞ!」

「1-0小隊長!あんたが副官だ!指揮を!」


俺は深呼吸だけして、速やかに作戦を練る。


「当初の目標を放棄し、速やかに撤退。本管と合流後、作戦地域を離脱!火力支援班は坑道を崩落させて、敵の侵攻の足止め急げ!」

「「「了解!」」」


2-0と3-0の火力支援班が34SSMを相手と壁に向かって撃ち放ち、爆音が聞こえると同時に行動内の崩落がシュミレートされる。


「本管へ、合流するぞ!!フルオート準備!」


地上は激戦だった。先発した2個班は弾薬をほぼ使い切っており、魔剣構成生命体側の非正規魔砲少女と魔剣構成生命体による連携攻撃で3割の負傷者が出ていた。

トリアージをしつつ、応戦をしたが、徐々に距離を詰められていく。


「副官!1-0から3-0小隊!脱落者多数!2割がブラックです!」


衛生班長の告げる2割のブラック。それは2割の戦力が事実上の戦死を告げるものだった。


「副官!敵魔砲少女の特殊重武装部隊がこちらへ前進中!魔砲反応あり!来ますっ!」

「全隊!伏せろ!」


大きく地面が抉れ、隊員が吹き飛ぶのが見えた。もう使える手はほぼ無いだろう。

大人しく殺されるしかないのか……


そんな時スピーカーの音が戦場に鳴り響く。


「待たせたな!デスエアは弾薬を補給!火力支援に移る!なお本管は先に救出して戦線を離脱しているから安心しろ!」


その後はデスエアによる対地ミサイル攻撃と機関銃によって、敵部隊を鎮圧。

残存戦力は本管合わせて5割だった。そして当初確保予定だった地域も奪えず、作戦は失敗。新課程の戦況見直しと魔砲少女ならどう動くかが課題となる演習であった。

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