第13話:Magical Pacific Case6
第13話:Magical Pacific Case6
「宮口一等陸尉、今回のF-2とFA-18の爆撃精度はあなたに懸ってます。そしてあなたを守るのも私たちの役目です。何か相談事とかありますか?」
「ん〜俺は……今回の演習が初めての実戦形式の誘導だからあまり期待しないでくれとしか言うことはないかな。俺のじっちゃんが大戦時に砲撃観測班してたらしいんだけど、無理に考えるより、その場の付け焼き刃が意外と鋭い時もあるって俺がJTACの試験を受ける時に言ってたなぁ」
その場の付け焼き刃は私はあまり好きではないが、確かにそうかもしれない。
想定外はいつ起きるか分からない以上様々な刃を持ち、必要に応じて付け替えるのも柔軟な戦術と言える。
「あと腹が減ると俺の誘導精度ガタ落ちするんだよなぁハハハっ!」
「はぁ……満腹なら高まりますか?」
「もちろん」
私は魔砲少女小隊で1番料理が上手いミラに頼んで、即興の食材で福神漬けに東京湾で釣れた魚を使ったカレーソテーに、缶飯の鶏ご飯を用意してもらい、宮口一等陸尉に見せる。
「え!?これマジで食っていいの!?」
「仕方ないだろ……貴官がミスったら大変なんだからさ」
「ありがとうございます!ネルソン大尉も食おうぜ!」
「oh!YES!いただきまーす!」
私達魔砲少女はと言うと……
「米軍で最近出来たミリタリーハンバーガーねぇ……」
私は苦笑と共に乾パンのように固いバンズとトマトケチャップで何とか美味しそうな香りを出してるパティ(肉の部分)、野菜は日本の漬物を真似したらしい。
そしてフライドポテトとチキンナゲット。飲み物は魔力の生産にはカロリーが必要なため激甘ココア。
「ヤンキーのミリメシは変なこだわりを感じるな」
リリーナの発言の後に、イギリス組のエミリアとレイラが笑顔で「日が経ったフィッシュアンドチップスよりはマシそう」と言って、シャルロッテ中佐が「こんな酷いミリメシは本国のヘビソーセージカレー以来だよ」と文句タラタラで述べたため、カロライナが不機嫌になる。
「皆も分かってくれると思ったのに……美味しいんだよ!美味くて、腹も満たされて、ジャンキーフードだし!残すなら私が貰うさ!」
私は恐る恐るハンバーガーを食べてみると、少々味気なく固いのは事実だが、濃い味付けで、旨味はあるのでチーズバーガーバージョンもおかわりしてみる。
「カロライナ、これ意外と美味しいね。国岩一等陸佐にも今度自衛隊内でもハンバーガーミリメシ検討するように言ってみるよ」
「やっぱり弥生は見る目あるね!流石私の結婚相手!もう籍入れちゃう!?」
「カロライナ、今度は魔法隠匿した私の手作り爆弾を送ろうか?」
「おっと……嬉しくてついついね」
全くこういう魔砲少女だが、憎めないところもある。
またいずれリーダーになってもらいたいが、今回の演習では私が指揮を執る以上は彼女にも規律を要求することは避けられない。
無論乱れてるわけではないのだが、少しオーバーなのはあまり感心できない。
「カロライナ、今回は私が小隊長だから、しっかり言うことを聞いてね?」
「弥生の為なら泥の中を這いつくばっても敵を倒すよ」
「言質取ったわ。今回の演習地域に沼地があるからそこは任せるわね。ちなみに蚊も沢山いるそうよ」
カロライナの表情は暗くなり、「弥生の為なら……」と何度も、自分に言い聞かせるように言っている。
まぁ演習後は少しサービスしてあげるか。
そうして、食事を済ませた私達はC-2輸送機に乗り込み、全員が魔砲少女装備を展開し、空挺降下準備を完了させる。
魔砲少女装備展開直後はどうしても慣れない感覚があるため、先に着ておく方が都合がいい。
午前4時、マジカルパシフィック第1想定開始、国連魔砲軍団基地
「Tower three.Magic cargo5,holding short Runway18,reader for departure.(第2管制塔、こちらマジックカーゴ5、滑走路18手前で待機。離陸準備完了)」
「Magic cargo5,wind120 at4 knots,Runway18. cleared for takeoff.(マジックカーゴ5、風は120°から4ノット、滑走路18から離陸許可を出します)」
「cleared for takeoff.Runway18,Magic cargo5(滑走路18、離陸許可了解。マジックカーゴ5)」
私は聞き慣れた管制官とパイロットのやり取りを聞いて、地図を眺める。
軍と言えども離陸時と着陸時は余程のことを除けば、席に座り、ベルトを付ける必要がある。
なのでマップ端末で確認しながらの状況判断だ。
「弥生、今演習どう思う?」
「概意がイマイチよく分からないけど、私がその質問で感じたのは人間政府のツケを払う日はそう遠くないって事かしらね」
「同意かな。そうなると私達が真っ先に戦場に置かれるのは確定……かな」
全く、世界のお偉方達は魔砲妖精達に真摯と誠実さを持つべきだと、憤慨しそうだった。
結局尻を拭くのは私達魔砲少女なのだから。悲しい話だがまだクソッタレな政治家達のリアルのケツを拭く方が人間的な死に方できるのはこの世のバグとも言うべきだろう。
ベルト着用ランプが消えると、私達は最後の打ち合わせへと入る。
「ミラとレイラは標的エネミーナンバー03、私と桜、エミリア、リリーナはエネミーナンバー01、シャルロッテとカロライナを組ませたいけど……エネミーナンバー02が居るのは沼地だからシャルロッテの汚れた地域に入るのを苦手を考えると変えるべきかしら……」
「私だけでエネミーナンバー02は倒せます。これでも欧州最強一角ですからね。カリンは後から沼地を這いずって、森林地帯に入ってくれればいいです」
カロライナは渋い顔をするが、私もこの作戦には反対な気持ちが強かった。
迫撃砲の攻撃をどう回避するかだ。時限信管である以上空中で炸裂し、大量破片が飛び散る。
だが、それを考慮しない彼女でもない。何かしらの策があるはずだ。
「シャルロッテ、砲弾破片はどうするつもり?」
「魔法現実反作用で破片は防御できるよ。訓練で実施済み。問題があるとしたら……リーダーが許可をくれないことかな」
「……わかったわ……シャルロッテ中佐。信用してる、無理だと判断したら……」
「私は実は結構生き残ることに固執してるから安心して、朝月隊長」
私とシャルロッテは強い握手を交わし、JTAC隊員にも説明する。
彼らも納得してくれて、「シャルロッテ中佐にご武運を」とJTACと二人は言ってくれた。
「酒月警部率いるスーパーウィザードはエネミーナンバー05をお願い」
「了解した。作戦を成功させてみせる」
すると機内に放送が流れた、恐らくだが無線封鎖環境下でなおかつ、魔砲妖精達を含む魔砲生命体に探知されない通信波……
「マイクロ逆位相通信波か……」
「現在、先発したマジックカーゴ隊が10分後に偽装砲撃爆弾を投下する予定。各員は空挺降下準備に入れ」
国岩一等陸佐の声と思われる放送が終わると、私達は空挺降下前の予備認識試験のみを実施する。
飛び出す時の姿勢、降下位置、対応するエネミーナンバー、異常発生時の対応手順。
そして体調の自己申告。
全てをクリアした時は、一種の安堵感に包まれる。
そして極東管区の魔砲少女部隊の作戦前の合図にして、合言葉を発する。
「「「紅き月は沈む夜に、朝日と共に登る陽は未来の1日に!!」」」
輸送機のハッチが開き、明るい日の出の光が冷たい空気と共に機内を満たす。
マイナス40℃前後の凍てつく氷に触れながら、地上の仮想で演じられた地獄へと降下するのだ。




