第12話:Magical Pacific Case5
第12話:Magical Pacific Case5
魔法特殊作戦コマンド作戦司令室を後にした私達は特殊作戦歩兵中隊のメンバーおよそ120名も集まる東京湾にある国連魔砲軍団基地に、自衛隊車両で移動した。
東京湾アクアラインの外側にある君津市辺りにある基地には、今回の演習に参加する各部隊が揚陸艦や輸送機に乗る準備を忙しくなく行っており、緊張は高まりを見せている。
「ここに来ると戦闘が始まるって感じがしますね〜」
レイラの怖さなど微塵も感じない言葉に、私達は不思議ながら勇気づけられた。
私自身初めてARSGの演習を受けた時は負傷した陸自隊員を見たときに、恐怖で動けなくなった。そして迫ってくる魔砲構成生命体相手に震える手でコルト・ターミネーターを発射したが当たるはずもなく、戦死。
訓練後は最初は変人だと思っていたカロライナが、とても優しいお母さんに思えるほど優しくしてくれて、なんとか心が癒えたほど。
そのまま弾薬確認や演習レーザーシステムの調整をしていると警視庁が保有する白と黒を基調とした装甲車が基地内に入ってくる。
「警視庁が?」
私達や軍人の方々の視線が向かう先には酒月警部とその部下4名で構成された、警視庁魔砲犯罪対策部隊「スーパーウィザード」小隊だった。
「皆さん驚きのようだな。私もつい昨日防衛省から現実的に考えたらスーパーウィザードが出撃しないのはおかしいと言われたよ。まぁ納得したけどね」
確かに国内での魔砲構成生命体による侵攻を受けたらスーパーウィザードが出撃しないのは不思議と言える。
彼女達も立派な魔砲少女なのだ。戦域拡大前に敵を封じ込めるのが理想だろう。
「酒月がいると心強いよ。彼女達はなんて呼べばいい?」
「スナイパーはハンター1、残りの3名はウィザード1〜3、私はウィザードリーダーで構わない。そちらは通常の名前で構わないか?」
「あぁ、問題ない。指揮系統はこちらか?」
「そうだな。朝月の言う通りに動くよ。だけど私達は基本的に小隊で行動を得意とする。留意してくれ」
私は「了解した」と言い、特殊作戦歩兵中隊達も集まる部屋に案内し、空挺降下要員としてスーパーウィザードは可能かと問う。答えはYESだった。どうやら警視庁でもヘリボーンでの空挺作戦をしていたらしく、スーパーウィザードがヘリから飛び降り、そのままSATのレンジャー訓練課程を突破した隊員がロープ降下すると。
警察の重武装化は度々問題になってきたが、非正規魔砲少女の数が少しずつ増えている現在では、疎かには出来ない戦力でもある。
「神長三等陸佐、特殊作戦歩兵中隊の迫撃砲は何門くらい用意できそうですか?」
「20門で400発想定です。魔砲殺し小銃は僅か4マガジンが限度というところです」
想定より特殊作戦歩兵中隊の継戦能力は致命的のようだ。ここは現場リーダーとして適切な配置と上陸位置を定める必要がありそうだ。
高速上陸ボートは24隻用意できる感じか……
「神長三等陸佐、4隻を弾薬補給用に回せませんか?」
「不可能では無い。しかし砲撃後の陣地転換の間に弾薬を補給するとなると、砲撃可能時間は3分ちょっとあるかないかといったところだ」
「充分です。むしろ発射回数を考えれば余裕があるのでは?」
「そうですね、各門毎分20発と仮定しても1200発。だけどこれは理論値である以上補給用のボートに200発載せても時間的余裕はあるでしょう」
神長三等陸佐は資料を眺めながら、弾薬安全係と話し合い、私にあることを伝える。
「特殊作戦歩兵中隊の携行弾薬を8マガジンに増やし、分隊支援火器もなんとかします。これで継戦能力の問題は解決は可能でしょう。あとはそちらのご活躍次第です」
私はドローンから送られてきた最新の敵の配置図を確認するが、カロライナの推測通り敵の戦術進化は疑いようの無いものだった。
「拡散配置からの円形陣形……厄介だな……防御と生存性に特化している」
「確証はありませんが、ミラの魔砲化能力ならレクティクルに敵が入れば即死させられるかもしれないです」
確かにミラの魔砲化能力なら、レクティクル内に敵が入った瞬間、その敵の生死はミラが握ると言っても過言では無い。だが、それが魔砲構成生命体も同様かが確証がない。予備プランが必要となる。
「レイラ、あなたの魔砲化能力のL85ライフルの無限グレネードランチャーでミラの撤退時間稼げる?」
「スモークと焼夷弾を交互で撃てば視界を遮りつつ、魔砲構成生命体の砲弾に火を放つ感じになって誘爆を起こせると思うよ。物理的に考えればだけど……」
「試してみる価値はありそうね。ミラ、レイラ。撤退時は速やかかつ最悪魔法現実反作用をしてでも飛ぶように逃げて。2人を失ったら戦局が厳しくなる」
そんな難しい話をしてるとマグプルMASADAのSRR(特殊用途ライフル)を装備したドイツ国旗を身につけている軍人が声を上げた。見た目からして恐らくマークスマンスナイパー(選抜射手:分隊や小隊に属す中距離のエリートスナイパー)だろう。
「魔砲少女の戦力を失うわけにはいかない。同時に君達のリスク無しで勝利は不可能だとも思っている。だからこそ我々大人が迫撃砲終了後に補助戦力となりたい」
「今回の戦闘は決戦ではなく、ターニングポイントの奪い合いです。つまりは特殊作戦歩兵中隊の皆様に多大な損害が出れば、この後にあるはずの戦闘が不利になります」
「なら我々ドイツ陸軍魔法作戦特殊機動部隊『フュルスト・デア・フィンステルニス』、魔王小隊20名だけでもお使いください。敵の配置を見る限りC地区のエネミーナンバー06は三体しかいません。我々なら倒せます」
私は少し考えて、彼らの武装を見て考える。SPRに、対戦車ミサイル、分隊支援火器、魔砲殺し、非常に対魔砲戦闘に優れた編成だ。
実際敵のランチャークラスとキャノンクラスの分散を見れば、迫撃砲による減衰があっても、厳しいのが現実。
「分かりました。許可します、くれぐれも無茶だけはしないでください」
「Danke sehr(ダンケ・ゼーア:ドイツ語でビジネスなどで使われるありがとうございます)」
そのまま揚陸艦に乗る特殊作戦歩兵中隊を見送り、私達は輸送機に荷物を積み込んでいた。正直な話魔砲戦車みたいな兵器があれば我々魔砲少女も少しは楽になると思わずには居られない。
魔砲殺しも魔法現実反作用に基づいた、現実の物体が低量の魔力を弾くのを利用し、特殊な金属で魔力装甲を弾いて、ダメージを与える代物だ。
逆に言えば魔力量の高い装甲にはほとんど効果は無い。
「サークラさん、ちょっといい?」
「はい、なんですか?」
「我が国の最新の機関銃をテストしてくれと上から指示がありまして……良かったら使ってくれない?機関銃の適性があると聞いてるわ」
私は桜さんを任されてる以上は何かあっては問題になるため、耳を澄ませながら、会話を聴き込む。
「Ots-300中型機関銃よ。9.8mm第三世代型魔法装甲徹甲弾が入ってる。ある程度のスペックは防衛省とアメリカ国防総省にも伝えるから今回の演習でも機械がシミュレートしてくれるはず」
「へぇ〜……結構軽いですね。てっきり20kgくらいあると思ってましたけど……」
「まぁ、その分反動は強いし、弾薬コストも高いから特殊部隊や魔砲少女用だね。使い終わったらぜひ感想聞かせてね!」
桜さんは疑いようもなく「はい!しっかりレポートさせていただきます!」と元気よく答えてしまい、国際問題になるようなレポートを書かないか少々不安になる。
そして私は荷物を運び終え、同じく空挺降下するJTACの宮口一等陸尉と打ち合わせをしていた。彼がどのような人間かまだイマイチ分からないという理由もあるからだ。
「こんばんは、今回の司会は短めにさせていただきます。ゲストはアーサー・レイラ中佐です」
「どうも!皆さん、魔砲少女の皆さんを尊敬し、自分を高める魔砲少女のレイラです!」
「レイラさんは確かイギリス近衛部隊の特殊部隊なんですよね?」
「はい!正確には魔法戦に対応する為のプロフェッショナル集団育成のために各軍から円滑に人材を集めるために近衛部隊を実戦化されましたね」
「なるほど、魔法戦は世界の軍事を大きく変えたのが分かりますね。それでは皆様、良い夜を」




