第11話:Magical Pacific Case4
第11話:Magical Pacific Case4
極東管区の魔砲少女達で今日の夕方までの自由行動の間に、都内のどこかで遊ぼうという話になり、全員がある程度好きなプラモデルを見に、秋葉原へと足を運んだ。
特にエミリアのプラモデル好きはかなりのもので自宅には2部屋プラモデルルームがあると聞いている。
まず1軒目はロボット系や美プラ。いわゆる美少女プラモデルを取り扱うお店に向かい、店内を散策する。
「やっぱりジャパニーズアニメガールは可愛いなぁ。弥生が1番だけど」
「それ私の前で言う必要ないでしょ。あ、機装兵団シリーズのスレンジ・ヴァルコフだ」
機装兵団シリーズとは大人気ミリタリーロボットアニメシリーズの戦闘機装と呼ばれるロボットを扱い、戦うストーリーだ。大人から子供まで幅広い世代に人気があり、プラモデルの組み立てやすさも売りとなっている。
特にストーリーの『選択の責任』と『なぜ戦うのか』という、よく使われがちのテーマを奥深く掘ってるのが魅力的だが、同時に戦闘機装のクオリティも国の事情やドクトリンを色濃く反映した物となっている。
「ほぉ……私の祖国の機体か。確かあのアニメでは連邦近衛大隊の機体だったかしら」
「そうよ、リリーナ。あなたの好きなAKMをモデルにした大口径機関砲もセットよ」
「買うわ」
即答か、まぁリリーナの祖国のロシアは最近プラモデルの質が落ちてるという話も聞いたしそれも多少影響してるのだろう。
私もどの機体を買おうか悩んでいると棚の下、少し奥になんと在庫切れが多すぎて原価2万円だが、数千万円で取引される事もある戦闘機装。
「シュヴァルツ・ローゼン……マスターコレクション……」
私は思わず唾液を飲み込み、棚から取り出して速やかにお会計を済まし袋も紙袋に入れてもらい、他にも脱着可能なパーツを買って、誤魔化すように平然を装う。
「朝月さん、何か良いものありましたか?」
「えぇ。エミリアさん、衛星軌道降下作戦隊の機体と装備を買ったわ」
嘘は言ってない。シュヴァルツ・ローゼンは主人公機で、宇宙から降下したり、海中作戦も実施する強力な機体だ。
「衛星軌道降下作戦隊も人気な部類だよね〜。私は刀をメインに使う桜舞弐式を買ったわ。あ、レイラちゃんは何買った?」
「私はね〜主人公のライバルのラーゼル中佐の愛用機のアーク・レヴァリエだよ〜。武装は人類最終決戦時仕様だね」
そのまま続々と皆が買い物を終えて、アニメ話の花が咲くが、カロライナの紙袋には美少女パイロットのプラモデルしかなく、思わず皆で笑ってしまった。
2軒目はミリタリープラモデル屋さんで、私的にはここが1番楽しみだった。
というのも500万トン戦艦という世界大戦時にある国が極秘で計画し、完成間近で敗北し、技術漏洩防止のために自沈した、伝説の超重決戦戦艦「ノワール・アルカンシェル」が入ったと聞いているからだ。
「店員さん、ノワール・アルカンシェルの在庫ありますか?」
「あるよ〜スケールはどうする?」
「1/100で」
店員さんは訝しむように私を見る。当然と言えば当然。85万円のプラモデルなんだから。普通の女子高生が持ってるわけがない。
「えーと高いけど……」
私は財布から万札をポンと置く。この時の為に2年前からお給料を貯金してきた。そして魔砲少女自衛官の証明証も見せると店員さんは頭を下げて、配送準備に入ってくれる。
「さて、あと直衛艦とかはどうしようかな……」
「あの……弥生さん……ノワール・アルカンシェル、一緒に組み立てませんか?」
意外にも桜さんからのお願いだった。一人で何かするのが好きなイメージだったが大歓迎なのは変わらない。
そういえば桜さんは防衛大臣の娘。何かしら優秀な戦略指導も受けてるかもしれない。
「大歓迎よ、桜さん。直衛艦のアイデアはある?」
「お父様から聞いたのですが、ノクレーン級超弩級戦艦3隻、ガストラフェテス級対空重戦艦6隻、ドゴール級空母4隻、駆逐艦十数隻の決戦艦隊を想定してたそうです」
「詳しいわね。じゃあそれらも買いますか!演習前の楽しみになるからね!」
「はい!」
そうしてミリタリープラモデル屋さんだけで120万ほど使ってしまい、国岩一等陸佐が見たら、ため息くらい出そうな買い物をして、市ヶ谷へと帰還する。
受付で荷物の輸送手続きを済まし、魔法特殊作戦コマンドの作戦司令室に、我々魔砲少女小隊が入室し、プロフェッショナルモードへ移行。
魔法特殊作戦コマンドは現在マジカル・パシフィックの想定地域の駐屯地から得られた情報をまとめていた。
西部方面隊の第4師団が担当していたが、既に連隊戦力の半数を失い、偵察部隊も送れないほど状況は悪化していた。
無線からは悲痛と絶望が混じった支援要請が響く中で、オペレーター達は必死に冷静を保とうとしていた。
魔砲少女軍事介入後に編成された対魔砲構成生命体中隊も前衛に出した事が仇となり、強力な戦力を早期に損失したらしい。
これらの演習は全てARSG(拡張現実シュミレーショングラス)というサングラスで、砲弾が落ちる風景や魔砲構成生命体の姿を表しつつ、バトラー演習システムの応用でレーザーで生死を判定する。
しかも負傷すればそのように傷が見えるため、隊員達からはトラウマシュミレーター等とも呼ばれている、しかし現実問題として魔砲少女が、世界的に見てもレベルの高い日本としては魔砲構成生命体にしろ、非正規魔砲少女にしろ、相手にする時は人と戦うより残酷な戦場を目の当たりにするだろう。
「A地区に進出した敵魔砲構成生命体小隊により、第16普通科連隊が応戦。部隊損耗率68%、更なる航空支援を要請中」
「第40普通科連隊がランチャークラスの排除作戦を実施。現残存部隊率35%」
これは……地獄絵図だな……第4師団の総戦力は既に4割を切っているのは間違いない。
第4師団は決して脆弱な部隊ではない。第4師団は練度は高く、地域と連携した強力な防衛師団としての役割を果たせる。少なくとも相手が人間なら。相手が悪すぎるのだ、むしろ状況開始からここまで戦力を4割維持してるのは善戦してると言っても過言では無い。それだけ大規模な対魔砲戦闘というのは厳しい現実なのだ。
「桜訓練生、この状況君にはどう見える?」
問いを投げかけたのはカロライナだった。彼女はJSOCの魔砲少女として、日本の防衛の長の娘にこの戦況をどう見るのかが気になったのだろう。
それ自体は私も興味がある。
「……魔砲構成生命体の連携戦術が戦前とは比べ物になりません……魔砲少女契約が策定して、北欧連合軍が魔砲少女の大規模軍事戦力化に踏み切って、魔砲妖精軍との戦闘時は結局北欧連合軍は壊滅しましたが、ここまでの損耗率では無かったはずです」
「なるほど、確かにその通りだ。あの戦闘で魔砲構成生命体推定1万3000体、魔砲妖精6000体に対して北欧連合軍は徴兵戦力含めて75個師団投入し、30師団損失して、降伏した。その際には魔砲構成生命体の戦力は8000体まで減少していた事を踏まえれば、彼らはどんどん進化してるだろうな」
その後も第4師団のダメージレポートや増援要請などが飛び交う中で日曜日の深夜に第4師団は百数十名を残して、戦闘能力喪失判定が下った。
これが魔砲構成生命体との戦い……死なない演習とはいえARSGの見せる仮想現実は行う度に新人隊員達の心を折る。PTSDやシェルショックを起こす隊員もいるほどの地獄の仮想戦場で私たちは最前線で戦う。




