第二十五話
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「……かくして、修道孤児院絞殺事件は、幕を閉じたのであった」
日記にペンを走らせていた私は、ふと手を止めて日記を眺める。
今までは事細かにいろいろなことを書いていたが、今日の日記には完結に、事件のあらましだけを書いた。
どう書いたら良いのか分からないことが多くて、それしか書けなかった、というほうが正しい。
『ルル、私は――』
何かを言いかけたアーロンさんの言葉は、そこから続かなかった。
どう話したら良いか分からない、と彼は泣きそうな顔で言った。
ただ、一つだけ約束してくれた。
気持ちの整理ができたら、私を引き取った理由を話す、と。
今までにないほど狼狽したアーロンさんを見て、それ以上の追求はできなかった。
窓の外ではまた小雨が降っている。
やがて降雨量も減り、暖かい晴れの日が増えるだろう。
花々は芽吹き、人々の活気も今以上のものになる。
喜ばしい春の訪れを、私は心から喜ぶことができない。
テーブルの上には日記の他に、一通の便箋が置かれている。
孤児院を去る間際、アルフィーが手渡してきたものだ。
ベアトリスの部屋に忍び込んで見つけたのだと言っていた。
手紙には稚拙な字で宛名が書かれている。
『敬虔なる者へ』
手紙の封を切り、中身を取り出す。
中には一つ折りにされた粗末なラグペーパーが詰められていた。
ゆっくりと手紙を開く。
手紙の本文には多量の誤字脱字が含まれていたが、それでも内容を読み取ることはできた。
『まずは貴方へ、最大の賛辞を。教えに背いてでも子供たちを守るあなたの姿に、神もさぞお喜びでしょう! どうせなら、最後までその姿勢を貫くべきです。先日私が見た夢の話をしましょう。ええ、もちろんこれは夢の話です。この夢の話を聞いてあなたがどうするか、それは私の預かり知るところではありません。それでもあえて言いましょう。"神は、あなたを許します!"』
あとは、差出人が夢と言い張る内容がつらつらと書かれていた。
――今回の事件のトリックと同じ、殺人事件のすべてが、ありありと。
被害者が首を絞められる描写だけやたらにリアルでグロテスクなのが耐え難く、私は手紙を置いた。
これは、明確な悪意だ。
誰かが悪意をもって、人を傷つけようとしている。
窓の外では、遠くの方で雷鳴が響いている。
「あなたの好きにはさせないわよ」
どこにいるとも分からない手紙の差出人に向かって呟く。
私の決意を嘲笑うように、近くに雷の落ちる音がした。




