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良性と悪性

 ハナはカムリが何なのか、おぼろげに理解し始めていた。


 王というのは力を行使する存在ではない。統べる者ではなく、守る者でもなく、護る者である。家系や特別な能力を有する固体ではない。歴代の王の意思と想いを受け継ぎ、一族を導く存在。


 ゆえに、人のカムリは真のカムリではなかった。人の世になって獣たちは散り散りとなり、いつしか地上のカムリは消えた。しかし、その想いは霊として留まり、五人に託された。かれらこそが、真の最後のカムリ、ヲンナ・カムリの化身である。


 破壊のカムリもまた、何者かの意思にちがいない。宇宙という個体を守るために、地球に襲い来る何か。古くは使徒と呼ばれたこともあった。それは千年おきに地上の生き物たちへの審判を下すために現れる。


 千年前といえば、日本では藤原定家が明月記に超新星の爆発について記録している。地球とは別の星で粛清が行なわれたのかもしれない。さらに、その千年前にはキリスト誕生にさいし、ベツレヘムの星が現れたとされる。


 地球という癌の摘出は、地球だけにとどまらず、太陽系ごと切除になるかもしれない。そう考えると、この閉ざされた三次元世界では、もはやどこにも逃げ場は残されていないのだろう。地球という存在が、悪性の腫瘍と認識されるか、良性として生き残れるか。


 思想家でもないし、ましてや国会議員でもないハナたちが、これから何をすべきか。政治リーダーでない彼等に、世界を変える力はない。ただ、何が宇宙にとって悪なのかを知ることが大事である。カムリは地球の心である。カムリが理解したことは地球もまた理解する。地球の心は、あまねく地上の万物に伝わる。すでにこの星は健全ではなくなった。まずは完治よりも、良性の腫瘍として摘出を免れる道を模索する必要がある。良性の腫瘍というのは、己の浄化能力を保つことで、患部の肥大化がおさえられる存在である。

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