消失事件
忽然と人が消える事件が、世界中で起こった。
「宇宙人にさらわれたんだ。」
「おら見たよ。巨大な棒が現れて、空中に消える人の姿を。」
不可思議な証言が相次いだ。クフト・リア・ハナ・グリブの4人はサヨリ様の元を訪れた。
「ついに、始まった。アンナ・カムリだ。」
「サヨリ様。アンナ・カムリは宇宙人ですか?」
ハナは正体を知りたかった。
「ふむ。宇宙人ともいえるが、そもそもそのような類ではない。生物と呼べるかもわからん。」
われわれの体は数多の細胞でできており、その中にもまた微細な生物が存在している。地球が宇宙という巨大な存在の細胞核とすれば、我々は細胞核にとりついたウィルスにも等しい。人は、癌に侵されれば、その部位を摘出し生き延びようとする。宇宙という存在も、己が体に異常があれば摘出しようとするだろう。
「大地・天・大気の怒りは、すべて宇宙の免疫システム。それでも改善しなければ、手術が行なわれる。人間あるいは地球が排除されるかどうかは、心がけ次第ということになる。」
クフトがサヨリ様に代わって説明をした。
「人間の住む三次元世界は小さく折りたたまれており、より高い次元を認識できない。宇宙という存在はその高次元に暮らす存在だ。われわれはそれに抗うことはできない。宇宙という存在が活動を停止すれば、我々も死ぬのだから。」
「われらは、アンナ・カムリの一部として、何が正しきことなのかを知り、過ちを正すしか生き残るすべはない。カムリとともに、探すときがきた。」
サヨリ様の言葉とともに、4人は気を失った。
気が付くと、体が軽くなった気がした。
「各々にはカムリの霊が宿った。彼等が必要な場所へと導くだろう。」
4人は山を下りた。
サヨリ様にはワシの王の霊が降りた。ワシは山の上からすべての眺める存在だ。
クフトにはイノシシの王の霊が、リアにはフクロウの王、グリブには熊の王の霊がついた。そして、ハナには特別な存在である鹿の王の霊が宿った。だからといって、生活が変わるわけではない。変身できるわけでもない。霊感がするどくなり、地上のあるべきすがたが理解できるよになるだけだ。
鹿の王が特別と呼ばれるのは、すべてのカムリの中心に位置し、皆に愛される存在だった。鹿の王がいたからカムリ同士が争うことなく暮らすことができていた。




