再会
塾が始まると、節約のためにリアの義母が作ってくれるお弁当を持って出かけた。
「夏期特別講座では、英数国理社の五教科を一年の内容からみっちりとやりなおしますから、安心してください。それぞれの担当講師を紹介しますね。」
塾長の挨拶の後、五人の講師が教室に入っってきた。
「あ!」
五人目を見て、ハナは思わず声をあげそうになった。
「社会担当のグリブ先生。今年から当塾の講師にお迎えしました。」
「なんで、こんなところにいるのよ。教師ってバイト禁止でしょ。」
ハナは休み時間にグリブに詰め寄った。
「高校辞めた。コロナで山岳部の活動がほとんどできなくなって、休部になった。山にいけないんなら、教師に未練はない。安心しな。地理ならそこいらの並みの講師より詳しいぜ。」
聞いてないよ。こんなことなら、塾に行かずに、学校のランクを下げるんだった。
ハナは目の前が真っ暗になった。崖から落ちた子熊になった気分だ。
「運命ね。」
話しを聞いて、リアは大笑い。
「ああ、呪いだ。」
一階の喫茶店の隅でクフトが死んだ目をして頭を抱えていた。ハナがリアの家に下宿していることを知らなかったようだ。サヨリ様の元を尋ねたクフトは、帰りが遅くなり、リアの家に泊まるために来ていた。彼の場合は、単なる節約というより、女性だけの暮らしを心配して、用心棒がてらの宿泊だった。
「合宿みたいでたのしいじゃない。下宿やだった昔を思い出すわ。」
おばさんも、いつになくウキウキしている。
「リアは何になりたいの?」
ハナの問いに彼女はうつむいた。
「夢は色々あるわ。でも、聴覚障害者のなれる仕事は限られてる。」
「かあさんは、この店を継いでもらいたいな。フクロウじゃなくて猫カフェでもいいけど。そしたら、お父さんの残した保険金で世界一周してくるの。」
この店は、リアが就職できなかったの保険なんだとハナは悟った。
「でも、一人じゃねえ。誰か手伝ってくれる人がいるといいんだけど。」
おばさんは、クフトの方を向いた。彼は、わざと視線を外した。
「大丈夫よ。障害のために誰かに頼るっていやなの。一人でだってできることを探すから。」
リアは見た目以上に強い。だけど、無理をしているように感じた。
「私も一人でできることがしたい。」
ハナの言葉とは裏腹に、その後も運命はハナを自由にはさせてはくれなかった。




