第8階 ダンジョン、葛藤する
「そうか…もう6階層から上のモンスターは、ほぼ全滅しているんだ。」
あの"手練のパーティー"、そして"赤い稲妻"
この二つのパーティーによって…
だから"蒼き閃光"は、無傷で7階層まで来れた。
「このまま、ユイに15階層まで行って貰おうかな。
――そして、俺の体を見つけて…」
そう考えた瞬間……
「イテテテ!!」
割れるように頭が痛くなった。
思わず頭を押さえようとするも、どこに頭があるのか分からない。
ただ、頭が痛い事は分かる。
腕も足も…ダンジョン内のどこにあるかは分からない。
ただ漠然と、存在はしている。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
呼吸を整える。
――何だったんだ?今のは??
ユイ達"蒼き閃光"は、石像となったカケル達に声をかけ続けていた。
「逃げた方が良いかも……」
「ん?どうしてだ?」
ダイキの言葉にエイレンが首を傾げている。
「ここには、石化のモンスターが居るって事だ。」
「確かに……危険だな。」
「えっ!でも…カケルさん、すんごい笑顔よ。」
「だが、この紳士風の剣士の顔は引きつっている。」
ユイの意見にエイレンが反論。
「このまま、この人達を置いていくって事?」
「カケル達に……恩など無いだろ。」
ユイは後ろめたそうにしているが、エイレンが否定した。
うん……その優しいところが、ユイの良い部分なんだよな。
少し寝たので、マジックポイントは4にまで回復していた。
バジリスクの位置は……少し離れているな。
「俺達では、この石像を運べない。
――戻って応援を呼ぼう。」
「そうして……」
ダイキの提案にユイが呟いた。
「ん?そうして??」
「そうして……カズヤ君が消えたんじゃないの!!
応援を連れて戻った時には、もう…もう…」
ユイがダイキに喰らいついた。
その瞳からは大粒の涙が溢れ落ちている。
「あの日のこと……忘れたの?」
声を震わせながら伝えるユイ……
その瞳を見て、俺は複雑な気持ちになった。
帰りたい…帰って、俺が元気だと伝えたい。
――でも、俺は…実際には死んでいる。
「もしかして……
俺はもう死んだ――だから、諦めてユイはユイの人生を生きてくれ!
そう伝えた方が良いのかも知れない。」
ボソリと呟く。
だけど……俺の体は、まだ残っている。
女神様も『生き返る事が出来る』と、言葉を残してくれた。
……パリパリ。
その時、カケルの顔が割れた。
「あ、カケルさん!」
――バジリスクの石化が解けた。
カケル達の表面を覆っていた石が崩れていく。
「た、助かった……」
カケルは、膝から崩れ落ちた。
「ユイ……が、助けてくれたのか?」
「いえ、私は何も……」
「その涙は…俺の為に泣いてくれたのか?」
「え?違います。」
慌てて涙を拭くユイ。
「おいおい、何を勘違いしてんだ?
――その涙は俺の!俺の為!」
そう叫ぶも、当然…カケルやユイ達には届かない。
「バジリスクは?君達が倒したのか?」
「いえ、バジリスクが居るのですか?」
ダイキがそう返事をすると、先生と呼ばれていた剣士の顔が曇った。
「一旦、離脱しよう。」
「賛成ね…」「そうだな。」
先生の提案に女性魔法師と斧使いが賛同する。
カケルも肩を落としながら、三人の後ろを歩いた。
ユイ達"蒼き閃光"が先行し、カケル達"赤い稲妻"が後に続く。
「ダメだ!そっちにはバジリスクが居る!」
そっちには行くな!俺は慌ててオブジェクトを作り出す。
出したのは……大岩。
ゴゴゴゴゴー
地面からゆっくりと顔を出させた。
「何?急に大きな岩が現れた!?」
「どうなっているんだ?」
ダイキとエイレンが警戒して、後ずさった。
「やっぱり……このダンジョンは、おかしいと思う。」
ユイが……気がついた??
「俺なんだ!俺が岩を出したんだ!
――キミを守る為に!」
叫ぶも、ユイに俺の声は届かない。
「俺は……そばに居るんだ。」
心の中でコタツの天板を叩いた。
「岩か……破壊して進むか?」
"赤い稲妻"の斧使いをユイが制した。
「ダメ……
これは、この岩は壊しちゃ駄目な気がする。」
「ユイは、やはり……俺の事に気づいた……」
「ユイ、何を言っているんだ!?」
怪訝な顔をしながら、カケルが言う。
「壊しちゃ駄目ってどういう意味?」
赤い稲妻の女性魔法師も不思議そうに話した。
「ここは他のダンジョンとは違う。
――そんな気がするの。」
そう伝えると、ユイはギュッと杖を握り直した。
ダイキとエイレンは、そっとユイの肩に手を置いた。
「もう少し…もう少しだけ、頑張ろう。
ユイが信じていてくれる限り…俺は諦めない。」




