第5階 ゴブリン誘拐事件
「ふっ!ほっ!とっ!」
うーん…分からない。
どうやったら殺気って出せるのだろうか…
お願い女神様、教えて〜
俺が死んでダンジョンになった日。
あれから、女神様の声は聞こえない。
あの清らかな声……もう一度、聞きたいな。
そして、生き返る方法をちゃんと教えて欲しい。
ユイに、十五階層で眠る俺の体を見つけてもらう。
――で、その後…どうしたら良いんだ?
氷を溶かして貰ったら良いのだろうか?
うーん……分からん。
「あ、そうだ!思いついた!」
思いついたのは、復活の方法じゃなくて……殺気のあるダンジョンになる事。
「トラップだ!
――危険なトラップを作ろう。」
ふふふふふ
冒険者たちに殺気が無いなんて、腑抜けた事を言わせないぞ。
―――考えたトラップは。
「足で床のスイッチを踏むと…床が抜け落ちる!
そして、下に待ち構えるのは針山!」
ダメダメ…そんなのに落ちたら怪我する。
「下に待ち構えるのは……大量のヘビ!」
ダメダメ…そんなの見るのは気持ち悪い。
それに、ユイが落ちちゃったら大変じゃないか。
「落ちた先は……そうだ!骸骨!」
これなら恐怖心を掻き立てられるに違いない。
殺気とは違うかもだが……やってみよう。
俺はオブジェクトも生み出す事が出来る。
ダンジョン内にトラップっと。
マジックポイントは一つ減る。
その下には沢山の骸骨。
ちなみにオブジェクト作成には、マジックポイントは必要無い。
おっ早速、冒険者が来たぞ。
5人組のパーティーか…見ない顔だな。
モンスター、スケルトンを生み出す。
「上手に誘導してくれよ…」
一体、倒される度に、次のスケルトンを生み出した。
そして、自然とトラップの床がある方へとパーティーを誘導する。
カチッ!
「よし、踏んだ!」
床が崩れて、骸骨で埋め尽くされた穴下へと落ちる!
「何だ!骸骨!」
冒険者の一人が声を上げる。
「良かった……」
「この骸骨がクッションになってくれたね。」
「どこも怪我無いね。」
「ありがたい。」
しまった…恐怖心の"恐"の字も出ていないじゃないか!?
5人組の冒険者達は、骸骨に向けて祈りを捧げだした。
感謝の言葉さえ………聞こえてくる。
「殺気のあるダンジョン……難しい。」
しばらく経過。
今日は"蒼き閃光"のみんな、来ないかなー?
と、思っていたら来た。
ダイキ先頭に歩いて来る。
「ユイなら……怖がってくれるかも知れない。」
ふたたびスケルトンを生み出した。
即座に槍使いのエイレンが粉砕する。
「エイレン……強くなったな。レベル上がった?」
と……ユイが何やら叫んでいる様子。
「グリーンゴブリンさーん、どこー?」
「………え?」
もしかして……まだ、勘違いしている?
「カズヤくーん。」
ユイの叫ぶ声……ダメだ、完全に間違えられている。
これ……いったい、どうしたら良いんだ??
とりあえず、今日のテーマである、
スケルトンを出し続ける。
その度にエイレンが粉砕。
その間に……俺は考え込んだ。
「よし……やるか。」
意を決して、グリーンゴブリンを生み出す。
生み出すのは良いが、俺はモンスターをコントロール出来ない。
動かす事も……勿論、喋らす事も……
「ほら、よーく見て!俺とは全然違うから!」
盾役のダイキがグリーンゴブリンに突っ込む!
「え?倒すの?俺……と思っているモンスターを倒しちゃうの?」
エイレンもダイキに助太刀。
「ユイ!今だ!!」
「ちょっと……何してくれてるんだ!?」
ユイは……
ロープでグリーンゴブリンを縛り上げた。
「ゴメンねカズヤ君…乱暴な事して。」
ユイは、グリーンゴブリンに話しかけている。
「違う違う、俺はこっち!
――それは、ただのモンスターだから!」
「フヌー、フヌー。」
グリーンゴブリンは、言葉を発しない。
――当然だけど。
「言葉を忘れてしまっているのか?」
「カズヤ……忘れっぽいからなぁ。」
エイレン、ダイキ……俺の事、何だと思っていたんだ?
「仕方ありませんね…連れ帰ってお医者様に診てもらいましょう。」
「えーーー?ユイ、モンスターをお持ち帰りするつもりなのか??」
「ほら、お前の好きなパンだ!これ食って思い出せ!」
エイレンがグリーンゴブリンの口に、俺が好きだったハチミツ入りのパンを押し込んでいる。
「あの時は楽しかったよな…」
ダイキ、グリーンゴブリンには、そんな思い出は無いから。
グリーンゴブリンは、諦めたかのようにトボトボと歩いている。
「このままだとグリーンゴブリンが誘拐されちゃう。」
俺はスケルトンを生み出した、
エイレンが応戦する。
――そして。
カチッ
「「「わっ!」」」
床が抜け落ち、三人は骸骨の上へと転げ落ちた!
ロープを手放されたグリーンゴブリンは、一目散に逃げ出した。
――このパーティー怖い。
そんな目をしている。
「トラップ成功っと…
ゴブリンを助ける為に使うとは思いもしなかったわ。」




