第39階 戦いの行末
「では、私が……」
ボソリと呟くと、サファイアさんが前へと出た。
『何?自ら管理者となる気か?』
「いや……タダでは倒されん。文献で見た大魔道士モンドルに興味がある。一対一で勝負だ!」
『ふっ、面白い……受けて立とう!』
「アイスブリザード!」
「なんと……皆、下がるのじゃ!」
シイラスさんの指示。
サイバーさんとバーサスさんが、怪我人を岩陰へと運び始めた。俺達も怪我人の手当てを手伝う。
そんな中でも、サファイアさんとサタンとの戦闘が繰り広げられる。
『グラビティクロス!』
サタンの魔法、空間が歪む……
「凄い魔法じゃ……」
シイラスさんが食い入るように見ながらも土魔法で防御壁を作製した。
『フレイムストーム!』
「ウォーターウォール!」
「ストーンブレイム!」
『ウィンドウォール!』
火魔法を放てば水魔法で防ぎ、土魔法を放てば風魔法で防ぐ。
「サファイア隊長!頑張ってください!」
王都軍から声援が飛ぶ。
——が、サファイアさんは徐々に押され始めた。
「ぐわぁ!」
サタンの重力魔法を受けて、サファイアさんの体が吹き飛んだ。
立ち上がるサファイアさん……が、その表情はとても苦しそうだ。
『ダークマター。』
サタンの大技……あの黒い球だ。
——弾けると、マズい!
サファイアさんは……一瞬、笑ったような気がした。
「サファイアさん、防御魔法を!!」
叫ぶと、サファイアさんは俺の方を見た。
その目は、とても優しく……
(君の大切な人は私が助けてやる。)
そう、伝えてくれているように感じた。
——黒い球が、弾けた。
その瞬間、岩陰から飛び出す影。
ズドドーーン!!
再び、黒い煙に包まれる空間。
「師匠!シイラス師匠!!」
この声は、サファイアさん……
——黒い霧が晴れる。
サファイアさんの腕の中には、シイラスさんの姿があった。
「ほれ、言うたじゃろ……弟子は、守るもんじゃ。」
サファイアさんの顔に腕を伸ばすシイラスさんの体が……ゆっくりと白い光に包まれていく……
「……なんで……なんで、師匠が……」
消えていくシイラスさんの体。
「師匠!!」
悲痛な声がダンジョン内に響き渡った。
「そんな……シイラスさん……」
俺は……ただ、立ち尽くすしか出来なかった。
『いつの時代も……望んだ結果には、ならぬものか。』
そう言葉を発したサタンの足元が光に包まれる。
白く淡い光はキラキラと煌めくと……形作られていく。
——ユイ復活。
久しぶりに見るユイの姿。
それは、まったく変わらずに……俺が好きなユイ。
一本、また一本と足を前へと進める。
ユイまでの距離は、実際よりも遠くに感じる。
ユイは顔を上げて、俺を見ると……
その目からは涙が溢れ出した。
「シイラスさんが……シイラスさんが!」
泣き叫ぶユイ。
もつれそうになる足を必死に動かし、ユイの傍まで辿り着いた。
「ワシは、もう十分生きたからって!」
「管理者として生きるのも面白いって!」
ユイの顔は涙でくちゃくちゃとなる。
サファイアさんも駆け寄ると……膝をついた。
「サタン、いや大魔道士モンドルよ……完敗を認める。」
『今の時代の片腕よ……お主もなかなかだった。』
「認めた上で、提案がある……いや、願いだ。」
サファイアさんは、そう言うと頭を下げた。
『聞こう。』
「ここを……罪人の監獄とさせて欲しい。」
『罪人……に管理者をさせる気か?』
「そうです!罪を償わせる手段として、ダンジョン管理者の責務とします。」
『無理だ……ダンジョンは、この国の各地にある。とても足りない。』
「いえ……それは300年前の話です。この国は今、罪人で溢れており、牢獄が足りないでいます。」
『なんと……300年前はモンスターで溢れていた地上だが、今は罪人で溢れていると?』
「その通りです……なので各ダンジョンに牢獄を建てます。」
『うむ……理にかなっておるが、お主に出来るのか?』
「はい……必ず、国王を説得してみせましょう。」
『……人は変わったな。だが……悪くない回答だ。』




