第38階 ダンジョンの答え
視点:ユイ
「——ちょっと、12階層も突破されちゃったじゃないの!」
——にしても、カズヤくん強くなったわね。
ダイキくんも、エイレンも。
何だか、私だけ取り残されちゃってる気分。
「そして——眠い。もう残りのマジックポイントは5だけ。」
次、出せるとしても……もうBランクの一体。
思考を巡らして、勝てるモンスターを探す。
「ダメ……Bランクで、あの強烈な魔法使い、黒宴さん、そして蒼き閃光を倒すなんて、無理よ!」
13階層へと降りていくカズヤくん達。
「あれ?あれは……」
13階層に居たのはドラゴン!!
「あの時の……ドラゴンだわ!」
「逃げて!カズヤくん、ダイキくん、エイレン、逃げて!!」
大声で叫んだつもり……でも、今の私の声は声にならない。届かない!
『管理者よ……安心しろ、次を見つけてやる。』
「何?……誰なの?」
頭の中に直接話しかけられたような感覚に、私は思わず周りを見渡した。
『我は……ドラゴン。』
「え?ドラゴン!?」
『そうだ……ダンジョンの理を守る者。』
「あの……助けてください!」
『あぁ、そろそろ管理者交代としよう。』
「交代って……次の人を選ばないといけないのですか?」
『そうだ。何百年もの間、そうやって管理されてきた。』
「そんな……終わらせられないのですか?」
『ダンジョンの管理が終われば……モンスター達は地上へと湧き出る事になるだろう……』
「——え?」
『では、選ぶとしよう。』
「待って!待ってください!」
「もし……ダイキくんや、エイレンと交代なんかになったら……」
そう伝えたけど……ドラゴンとの念話は、途切れていた。
「ドラゴンだ!!」
カズヤくんが叫ぶ声が聞こえた。
——ダメ、早く逃げて。
◇◇◇◇◇
視点:カズヤ
「サンダーボルト!」
サファイアさんが魔法を詠唱。ドラゴンの頭上に雷が落ちた。
「待って、待ってください!俺が話をします!」
「A班は左、B班は右から攻めろ!」
「サファイアさん!」
「悪いが君の話は信用出来ないと言った筈だ。我々は脅威を排除しなくてはならない。それが仕事だ。」
「——そんな。」
俺は、サファイアさんが再び詠唱を始めるのを見るしか無かった。
「カズヤ殿……軍とは、そう言う物じゃ。じゃが……隙はきっと生まれるじゃろうて。」
「シイラスさん……分かりました。」
「ダイキ、エイレン……」
「分かった、隙を作れば良いんだな!」
「お礼は弾んでね!」
——俺は、ダイキとエイレンがドラゴンに向かって走り出すのを見つめた。
王都軍の兵士達は、ドラゴンにも屈せずに戦っている。黒宴の皆さんも……次々と連携技を繰り出す。
「「サンダーストーム!!」」
シイラスさんと、サファイアさんが声を揃えた!
同時に放たれた電撃が凄まじい嵐となってドラゴンに向かう!
ズドドーーン!!
静まり返る洞窟内。
ドラゴンの体からは……煙が立ち上った。
ピクリとも動かない、ドラゴン。
「え?倒した??」
そう思った瞬間……ドラゴンの体は光に包まれた。
「——人型?」
ドラゴンの体が……小さくなり、人の形となった。
が、その姿は普通の人間じゃない。
黒く、人よりも大きく、その背中には黒い翼?
「あれは……サタンじゃ。」
「え?サタン!?」
「簡単に言うと……悪魔の王。最強の魔物じゃ。」
『ドラゴンでは、魔法耐性が弱かったのでな。サタンとなりて戦おう。』
「え?しゃべった??」
俺にだけじゃない……サタンの言葉はその場に居た全員の耳に届いた。
『さぁ、来るが良い……今の管理者が待っておる。』
「ユイが!ユイが望んでいるのか!?」
俺は咄嗟に叫んだ!
『望むも何も……そう言う理だ。来ないなら、我から行こう。』
『ダークマター。』
サタンの前に黒い球が渦巻いて……大きくなっていく。
「下がれ!」
サファイアさんの指示!
俺達は、すぐさま防御姿勢を構えた。
大きく渦巻いた黒い何か……
ズドドーーン!!
割れたかと思った瞬間、四方八方に飛び散った!
爆発に巻き込まれたかのよう。
地面から……足が離れた。
転げるように、俺の体は後方へと吹き飛ばされる。
「痛って……」
周りは黒い煙に包まれ——あちこちからうめき声が聞こえた。
「ダイキ……エイレン……大丈夫か?」
俺の問いかけに返事は無かった。
黒い煙が去り……
倒れているダイキとエイレンを見つけた。
何とか体を動かす。ヨロヨロとよろめきながらも、2人の元へと辿り着いた。
「大丈夫か?」
「あぁ……」
「何とか……ね。」
良かった……無事だ。
「ファイヤーストーム!!」
背後から……声。サファイアさんだ。
凄い……あの攻撃を受けても、まだ戦っている。
「ふっ……効かないか。」
『我が倒れる訳にはならぬのでな……王の片腕よ。』
「俺を王都軍の指揮官と認識しているのか?」
『我も……300年程前は、その立場だったのでな。』
「は?300年前だと?どういう事だ?」
『王の片腕までもが……知らんとはな。我は王都軍の魔道士だった。』
「文献に残っている名前がある……確かモンドル。」
『そうだ……懐かしい名前だ。』
「何故?そんな英雄がこんな真似をしている?」
『失わられている……とは、思っていたがな。我にダンジョンを作らせたのは、その時の王だ。』
「——何だと?どういう事だ?」
『説明しよう……あの時代、平原や森にモンスターは溢れていた。時には、モンスターは町にまで来て、人を襲った。
王都軍は、モンスターと何度も戦闘したが、終わりは見えなかった。
そんな中、我は洞窟にモンスターを閉じ込める空間魔法を発明した。
王は、喜び……我は応えた。
さらに研究を重ね……洞窟を大きくし、ダンジョンとなったのだ。』
「それで!ユイは……管理者は、何故必要なのですか?」
話に割り込むような形になった。
——けど、俺は聞かずにはいられなかった。
『モンスターは各地に居た。なので、我はダンジョンを各地に作った。
だが、我は一人……ダンジョン内にモンスターを閉じ込めておくには、それぞれに管理者が必要だったのだ。』
「——やはり、管理者が居なくなると、モンスターが地上に溢れ出ると?」
『そうだ……だから、我は死後、モンスターの体へと寄生し、各地の管理者の管理をしている。
——あれから、もう300年近くになるか。』
俺は頭を抱えた。
終わらない……管理者は必ず必要だ。
ユイを……助け出すには次の犠牲が必要。そうでないと、地上がモンスターで溢れる。
——あの森のように。




