第37階 師匠の教え
「10階層ですね……ここからはAランクモンスターが出ます。」
「ここまで、まったく脅威を感じなかったが、どうなっている?」
「ユイは、マジックポイントを温存していました。ここからが本番です。」
「そうか……私には分からない話だが、警戒して進もう。」
サファイアさんが、凄く真面目な方である事がこの短時間で分かった。
「ちょっと真面目すぎるのが問題じゃがのぉ。」
「そうですね、俺には合わないです。」
「あたしも……ちょっと無理かな。」
シイラスさんの意見にダイキとエイレンが賛同した。冒険者から見れば、型にはまった指導者は息が詰まるのだろう。
——が、兵士から見れば別。
王都軍の皆さんからの信頼は絶大に感じた。
「来たぞ!ギガンテス2体と、ラミアー2体!」
前衛の兵士が叫ぶ。
「一気にマジックポイント32とは、ユイは本気だ!」
「A班とB班はラミアーに集中!C班は私と共にギガンテスを叩く!」
「「はい!!」」
それぞれの班の隊長達が返事をすると共に陣形を整えた。
「——足りんな。」
シイラスさんが呟く。
「俺達も手伝った方が良いのでは?」
「サファイアはプライドが高くてのぉ。冒険者に手伝ってくれとは言えんのじゃ。いや、王都軍がそれを許さんのか……」
「では、勝手に参戦しましょうか?」
サイバーさんが剣を構えた。
「いや、少し押されてからじゃ。こういう事はタイミングが大切なのじゃ。」
シイラスさんの読み通り、王都軍はモンスターに押され始めた。
「そろそろ頃合いじゃな。蒼き閃光の皆さんは、魔法耐性の高いラミアーの方に。逆に物理攻撃が効く。
ワシらは……ギガンテスが相手じゃ。まずはワシの魔法で先制攻撃、すぐにサイバーを飛ばすのじゃ!」
——シイラスさんの的確な指示。
俺は頷くと共に走り出した。
「一体づつ確実に倒そう!ダイキ、まずはラミアーの魔法を弾いてくれ!」
「おぅ!任せろ!」
戦っていた兵士の間をかいくぐって前へと出るダイキ。ラミアーが放った水魔法をその盾で弾く。
「よし!エイレンは右から!」
「はいよ!」
俺はダイキの背中から左へと飛び出す!
「ヤーーー!!」
ザンッ!
「ちっ、浅い!」
切り込んだが、ラミアーの動きは速く……踏み込みが足りなかった。
ドンッ!
右から回り込んだエイレンの槍!
「惜しい!」
——確実に胴体を捉えたかと思ったが、ラミアーは自身の左腕で槍を止めた。
腕を犠牲にして止めたか……
下がったエイレンの前にダイキが入り込む。
ラミアーは、傷口を舌で舐めながら、不気味に笑った。
「——来る!」
ラミアーは大きくその尻尾を振った。
と、共に呪文らしき言葉を口にする。
「——アイスランス!」
ズドドーーン!!
複数本の氷の槍が頭上から落下!
——これは、ユイの得意魔法!
俺は剣で必死にアイスランスを受け流した。
「ぐわっ!」
何人かの兵士が悲痛の声を上げる。
——食らったか!
ダイキとエイレンを確認……無事だ。
すると、エイレンと目が合った。
「——分かった。」
ラミアーに向かい、走り出す。
右からはエイレン。
ラミアーの目の前で交差し、入れ替わる……俺が右、エイレンが左だ。
ラミアーは体を反転させると、尻尾を振り回した!
——その攻撃を、後へとステップしてかわす。
エイレンも同じように、後方へとジャンプ。
——ズンッ!!
ラミアーの体の中心、そこに矢が突き刺さった。
苦痛の表情へと変わるラミアー。
ラミアーの正面には、弓を引き終えたダイキの立ち姿。バーサスさんから指導を受けた弓矢!!
——ザンッ
——ドンッ
俺の剣とエイレンの槍が同時に突き刺さった!
「目眩まし、上手く行ったな。」
「ええ、練習通りだったね!」
言葉を交わし終えると……ラミアーは力無く地面へと崩れ落ちた。
ドーーーーン。
左舷から大きな音。
ギガンテスの巨体がゆっくりと倒れる姿が目に入った。
「俺達は……ラミアー、もう一体だな。」
「あぁ、ダイキ……隙を作って、もう一回、弓だ!」
数分の戦闘後、残るラミアーとギガンテスを倒した、
——が、王都軍の兵士の中には多くの怪我人が出てしまった。
「傷が深い者はこの階層の入り口付近まで後退。そこで待機だ。」
5人の兵士が、後方へと下がるとサファイアさんは班を組み直していた。
「——助かった。ありがとう。」
残った兵士の一人が俺に声をかけてきた。
「いえ、だけど怪我人も多く出てしまいましたね。」
「君達が居なかったら、もっと多くの兵が傷ついただろう。下手したら死人が出ていた可能性も……」
(もし……そうなったら、ユイは生き返る……)
よぎったその思いを俺は首を横に振って、頭から追い出した。
「サファイアさんからは、お礼の言葉は無いな。」
「大丈夫じゃ、感謝ならしておる。」
ダイキの言葉を否定するシイラスさん。
「どうして分かるのですか?」
「そりゃ、師匠と弟子だからじゃ!あれは、ワシらに最初から手伝いを要請していたらと後悔しとる顔じゃぞ。」
そう言うと、シイラスさんは豪快に笑った。
俺達も自然と笑みが溢れる。
「シイラス師匠、進みます。ついて来てください。」
サファイアさんは、ぶっきらぼうに伝えると、さっさと歩き出した。
俺は、天井を見上げた。
——ユイ、俺も負けないからな。




