第35階 信じるまでの時間
「出発するぞ!」
サファイアさんが高々と杖を掲げた。
王都軍の皆さんが、馬車や馬に乗り込む。
俺達6人も一つの馬車へと乗り込む。
サファイアさんと話をしたかったが、残念ながら別の馬車だ。
「まずは森のダンジョンのアマネさんを助けたいところじゃが……」
「王都軍なら、何とかなるものなのでしょうか?」
「正直に言うと……難しいじゃろう。」
「やはり……そうですか。」
シイラスさんが面白い過去話をしてくれる。
が、馬車の中はとても明るい雰囲気とは言えなかった。
町を中継し、休憩を取りながら進軍する。
◇◇◇◇◇◇
「モンスターだ!1番隊、2番隊で対処を!」
サファイアさんの指示で、2つの馬車から飛び出した10人程の兵士がモンスターを取り囲んだ。
「勉強にならんのぉ。」
王都軍はモンスターを圧倒、あっさりと現れたブルーゴブリンを倒した。
「数の勝利ですね。」
「安全第一なのは正解かのぉ。」
「我々とは戦う意味が違いますからな。」
サイバーさんの言葉の意味がわからず、俺は質問した。
「戦う意味って、どういう事ですか?」
「あぁ、そうだな……軍は国や民を守る為に戦う。対して俺達は自分達の為に戦う。」
「自分達の為に戦う……ですか?」
「そうだ、だから俺達は攻める為に戦う。」
「自分の成長の為に、という意味ですね。」
「正解だ。」
俺達"蒼き閃光"の3人はサイバーさんの言葉に小さく頷いた。
「森の入り口で、こんなにもモンスターが出るとはな。」
数組のモンスターと対戦した後、サファイアさんが俺達冒険者に声をかけてきた。
「ダンジョンに近づく程、強いモンスターが出現します。」
「そうか。」
顎に手を添えながらサファイアさんは答えた。
——森の町リュウリーンへと到着。
サファイアさんは早速、ギルドマスターの部屋へと向かった。
「正直……逃げちゃったのかと思いました。」
そう伝えて来た受付嬢さんの目には、薄っすらと涙が見えた。
近くにダンジョンが無いとされていたこの町のギルドは、人員がとても少ない。
俺達が去った後も、この子は苦労していたのだろう。
「第一、第ニ部隊は、森のモンスターの駆逐を行ってくれ。第三部隊と第四部隊は私と共にダンジョンへと向かう。」
ギルドマスターと話を終えたサファイアさんは兵士を集めると、そう声を発した。
「では……君達、案内をしてもらおう。」
20人程の兵士と共に俺達はダンジョンへと向かった。
道中のモンスターは兵士の皆さんが倒していく。
サファイアさんと俺達は一切、戦闘に参加する事は無かった。
「あの……サファイアさん、良かったら俺達も手伝いますが?」
「君達は冒険者といえども民間人だ。我々、王都軍は民を守るのが仕事なのでね。」
「じゃぁ……ユイも、アマネさんも助けてください!」
俺が訴えかけると、サファイアさんは無言となった。
ダンジョンに到着。
見張り役を二人残して中へと入る。
今回もダンジョンの内部では、モンスターの気配すら感じなかった。
「ダンジョンが……息をしていないようだ。」
サファイアさんの感想。
兵士達もこの異様なダンジョンに動揺している。
——15階層に到着。
サファイアさんは氷漬けとなっているアマネさんに触れた。が、何も起こらない。
「君は……会話が出来るのか?」
「やってみます。」
俺はアマネさんの体に手を伸ばした。
——が、今回は何も感じる事が出来なかった。
まるで何もかも諦めたかのように、アマネさんの体がそこにあるのみ。
「スミマセン、何も感じません。」
「そうか……それで、ドラゴンは何処に居るんだ?」
「ドラゴンは、このダンジョンでは会っていません。ユイが居る場所で一度だけ。」
サファイアさんは少し考えた後、兵士達に周りを調べさせた。
「お師匠様、このダンジョンが異常だという事は分かりました。」
「そうか、相変わらず人を信じる事に時間がかかるのぉ。」
「性分ですので。」
「それで……どうするのじゃ?」
「部隊の半分をこの森に残らせてモンスターの討伐をします。そして、残りの半分でドラゴンが住むというダンジョンに向かいます。」
その言葉を聞いて、俺達"蒼き閃光"は喜びあった。
「あのドラゴンは強烈じゃ……安心するのはまだ早いぞい。」
シイラスさんの言葉に気を引き締める。
——ユイ、もう少しで迎えに行くからな。




