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第33階 正論と願いの衝突

「何?この大きな建物。」

「見上げるのが疲れる程だな。」

 エイレンとダイキがポカンと口を開けながら王都の入り口に立つ。

「2人とも——落ち着こう。」

 冷静なフリをしているが、俺も同じ心情だ。言葉とは裏腹に王都の大きさに驚きを隠せない。

 

 対して、シイラスさん達"誓いの黒宴"は、極めて冷静。まるで家に帰って来たような雰囲気だ。


「シイラスさん、お弟子さんはどちらに?」


「そうじゃのぉ……王城に行ってみるかのぉ。」

「え?王城ですか!?」


 シイラスさんの言葉に背筋が伸びた。


「えっと……王城って、誰でも入れるものなのですか?」

「誰でも……は、入れんじゃろ。」


「ですよねー。」

 シイラスさん……もしかして俺が思う以上に凄い人なのでは?

 そう思ったのは……束の間。

 


「帰れ!」

 王城前、俺達6人はあっさりと追い返された。


「あの……シイラスさん?追い返さされましたけど?」

「おかしいのぉ……前に来た時は入れたのじゃが。」


「もしかして……お弟子さんが何かやらかしたとか?」

「失脚するような、ミスはしない男の筈じゃがな。」


 王城へと入ろうとしたシイラスさんは、お弟子さんの名前を伝えたが……追い返された。


「仕方ない……サイバーよ、コレを使え。」

 シイラスさんは何やら小さな袋を取り出した。

「あぁ、分かった。」

 一人で王城前へと歩むサイバーさん。

 門番の兵士と何やら話をしている。


「少し、そこで待っていろ。」

 兵士はそう言うと、王城の中へと入って行った。

 もう一人の兵士の顔はどこか嬉しそうに見えた。


「シイラスさん、何をしたのですか?」

「あぁ……金じゃ。」


「え?そんな事、許されるのですか?」

「門を守る兵士は下級兵じゃ。そんなに貰っておらんのじゃよ。」

 世の中、そんなもんじゃ……と言った顔をしている。


 しばらく待つと、俺達6人はあっさりと王城内への通された。こうなると、シイラスさんの言葉が正しかったと思わざる得ない。


「さて……のんびり、待つかのぉ。」

 「だいぶ待たさせますかね?」


「アイツが出世しとるとすれば……待たされるじゃろうなぁ。」

「そんな……早く……」

 俺はユイを思う言葉を飲み込んだ。


「カズヤよ……焦りは禁物だ。」

 待合室の中は殺伐とした仲にも、どこか上品な雰囲気が漂っていた。その雰囲気に包まれるように、俺は焦る心を押し殺した。


 ——しばらく待つと、ドアが開かれた。


 姿を現したのは白と青を基調としたローブを纏った人物。その立ち姿は、どこか俺達とは違う。

 

 俺達は、立ち上がると同時に頭を下げた。


「よう、サファイア、元気じゃったか?」

「シイラス師匠……どうしてここに?」

 サファイアと呼ばれたシイラスさんのお弟子さんは、どこか不機嫌そうな顔をしている。

 

「ちょいと用事があってな。」

「誰も通すな。と伝えてあった筈だが……」


「そうか?快く案内してくれたぞい。」

「来てしまったものは仕方ない……その用事とは何ですか?」


「ちと手伝ってもらいたい案件があってじゃな。」

「シイラス師匠の割には回りくどい言い方ですね。」

 サファイアさんは、シイラスさんだけと話をする。

 まるで周りの人物にはまったく目に入っていないかのように……そう、興味が無い。

 

「とあるダンジョンに行って、ドラゴンと対峙して貰いたい。」

「は?——何の冗談で?」

 サファイアさんは顔を歪めた。


「スミマセン!カズヤと言います!」

「……」

 突然、名乗りを上げた俺に対して、サファイアさんは不機嫌そうに俺を睨んだ。


「俺の……大切な人がダンジョンの管理人となってしまって!」

「面白い事を言う方ですね……ただ、私は冗談や曲がった事が嫌いでしてね。」


「カズヤ殿、冷静になるんじゃ。サファイアよ。わざわさ遠方から来たのじゃ。話だけでも聞いてくれぬか?」

 シイラスさんがそう言うと、サファイアさんはゆっくりと腰を下ろした。


「こう見えても私は忙しくてね……手短に頼む。」

 サファイアさんに対して、これまで起きた経緯を話した。俺の話を興味深そうに聞いてくれている。


 一通り話終えると、サファイアさんが口を開いた。


「君の言う事を信じるとして……ダメなのですか?」

「え?ダメというと、何がですか?」


「そのユイという女性がダンジョン管理者では、ダメなのですか?」

「いや……ユイは、今、一人ぼっちで苦しんでいる筈なのです!」

 俺は思わず大きめの声を出して立ち上がろうとする。

 ——それを隣に座っていたエイレンが抑えた。


「君はユイさんが死んだと言ったが、そうでは無い。実際は生きている。現に死んだ君は今、ここに居る。」

「それは、そうなのですが……」


「ダンジョンの管理者は……そのユイさんが次を選べば良いだけの話では?——そうだな、その隣の女性が代わってあげれば良い。」

「え?そんな……。」

 俺は何も言い返す事が出来なかった。


「サファイアよ……相変わらずじゃな。」

「人間、そうは変わりませんよ。」


「——そういう訳です。お引き取りください。」

 立ち上がったサファイアさんは、手を出入り口の方へと向けた。

 まるで俺達の事を疑っているような目をしながら。

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