第30階 森のダンジョン
森のダンジョンへと、一本足を踏み入れた。
そこは俺が管理していたダンジョンとは、何かが違っていた。
「何か違和感を感じないか?」
「え?そうね……ちょっと分からないわね。」
「俺も……分からない。」
気のせいか。
違和感を持ったまま進む。
2階層……静かすぎる。
3階層……気配すら無い。
4階層……疑問を口にする。
「どうなってんだ?」
「モンスターが全然居ないじゃないの…ここ。」
俺が感じた違和感の正体はコレだったのか。
「黒宴の皆さんが全部、倒しちゃったとか?」
「それは……あり得るわね。」
「いや、MPが回復したら次を生み出せる筈なんだ。」
「MP?何なの?それ……」
「えっと……モンスターを生み出す時に必要なポイントだな。」
「よく分からない話だが、とにかく黒宴の仕業では無いという事か。」
「上手く説明出来ないけど、そう言う事だ。
あ……もしかして、MP不足で管理者が寝ているとか?」
「カズヤ……悪いがサッパリ分からない。」
「うん……あたしも。」
ダンジョン管理者の事情など知る訳も無いか。
モンスターに出会わないまま、俺達3人は10階層まで来た。
「ドラゴンは……管理者の意思に関係無く現れると思うから気をつけてくれ。」
「いや、ドラゴンが出たら逃げるしか無いだろ。」
「ドラゴンに対抗する為に黒宴さんを探しているんだもんね。」
確かに……エイレンの言う通りだな。
だが、俺はドラゴンと話をしたい。
12階層
13階層
14階層
——15階層
俺達は何も戦わないまま、
信じられない程あっさりとダンジョンの最深部に辿り着いた。
冷やりとした空気が漂う。
「誰だ!?」
——声の主は。
「シイラスさん!」
エイレンが叫んだ。
"誓いの黒宴"の3人の姿があった。
「はじめまして、蒼き閃光のリーダーのカズヤです。」
俺が手を出すと、3人が驚きの表情を見せる。
「キミは確か……亡くなったと聞いていたが。」
シイラスさんは恐る恐る俺の手を握った。
「実は……ダンジョンの管理者をしていまして。」
混乱させる事は分かっている。
だが……説明しないとユイを助けたい話も出来ない。
「すまんが……何を言っているのか分からないのじゃが。」
「ですよね…」
「あの……信じてください!」
「俺も信じ難い話だったけど……信じて欲しいです!」
エイレンとダイキが叫んだ。
「ダンジョンには管理者が居て、交代制なのです。ダンジョン内で死んだ人が次の管理者となる。
——そして、今はユイがあのダンジョンの管理者となっています。」
「なんと……」
シイラスさんは、しばらく無言となった後、口を開いた。
「では……あの氷漬けとなっている人物がこのダンジョンの管理者という事か?」
シイラスさんが、指を差す方向を見ると……
そこにはダンジョン15階層で眠る管理者の姿があった。
氷漬けとなっていたのは——弓使いの女性。
「——管理者。」
「この女性が……このダンジョンの管理をしていると?」
「はい……その筈なのですが。」
「ダンジョンの管理というのは、一体何をするのじゃ?」
「モンスターを生み出して、ダンジョンに来る冒険者を奥に進ませないようにする仕事です。」
「はて……それなら、何故、このダンジョンにはモンスターが居ないのじゃ?」
「黒宴の皆さんも15階層まで、まったく出会わなかったのですか?」
「まったくじゃ、外の森には溢れていたのにな。」
確かにそうだ……
ダンジョンにはモンスターがまったく居ない。
なのに……何故、森には居た??
それも……本来、ダンジョンに居る筈のモンスターが……
「もしかして……ダンジョンのモンスターが外へと出た!?」
俺はハッと思い浮かべた予想。
黒宴の3人と、俺達蒼き閃光の3人の目が合う。
「となると……この女性はどういう状況なのじゃ?」
シイラスさんは、ジッと俺を見つめた。
「スミマセン……分かりません。」
俺は……そう答えるしかなかった。
「えっと……黒宴の皆さんはここで何を?」
ダイキが恐る恐る尋ねた。
「わし達は、モンスターが森に溢れる理由の調査じゃ。そして、このダンジョンを見つけて中に入った。
2日前にこの最深部まで辿り着いたのじゃが……この狩人のお嬢さんを助ける術を考えておったのじゃ。」
「色々と……試したのですか?」
おそらく今、ユイも同じ状況。
この狩人を助ける事が出来れば、ユイも助けられる。
俺は希望を抱いた。
「あぁ、出力を抑えた火魔法を試したり。」
「物理的な事も試した。」
「だが……まったく答えが見えない。」
黒宴の3人が答える。
「森にモンスターが溢れるのも抑えないとじゃが……」
「おそらく、この狩人さんに……そのヒントがあります。」
俺は……氷漬けの狩人の女性に近づき、
そっと、その氷に触れた。
冷たいが……鼓動を感じる。
「くっ!!」
突如——目の前が光に包まれた!!
眩しい……そして……
意識が遠のく……
すると……声が聞こえてきた。
これは、この女性の声……なのか?




