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第29階 北の森の異変

「ダメだな、まったく手がかりが掴めない。」

「あぁ、黒宴の痕跡がまったく見えない。」

森を探索し始めてから3日が過ぎた。


「にしても、モンスターが出過ぎよね。」

「あぁ、これでは木を仕事にするのは難しい訳だ。」


「ギルドからの依頼も、なんとか達成したいな。」 

「そうだな……カズヤ、明日はもう少し奥に行ってみようか。」


 他に数人が居るだけの静かな食堂で、俺達は相談していた。

 すると、食堂の店主らしき人物から声をかけられた。


「お前さん達が探しているのは、魔法使いの爺さん達、3人組かい?」

「そうだ!何か知っているのか?」

 ダイキは勢いよく立ち上がった。


「よくここに来ていたが……北の森に入ると言った後、さっぱり来なくなってしまったんだ。」

「北の森ですね!」

 エイレンの声が少し明るくなった。


「はいー、無事だと良いのですが……」

「あの3人なら、きっと大丈夫です。」

 黒宴の3人とは、実際に会った事は無い。

 だけど、モンスター達と戦う姿を見ていた俺は確信するかのように、そう告げた。

 


 翌朝、日が昇ると共に俺達は北の森へと入った。

 その森は、どこか他の森とは雰囲気が違う。


「——霧?」

 早朝だからじゃない……その霧からは何となく重たさが感じられた。


「何か……来るぞ!」

 ダイキが示す方向を見ると……


「何故、地上にコカトリスが?」

 エイレンが驚くのも無理は無い。

 コカトリスはBランクのモンスター。

 ダンジョン五階層より下でしか出せない筈。


「毒攻撃に気をつけろ!」

 俺は2人に散開するように指示。

 固まると毒攻撃の格好の的となる。

 

 エイレンは左に、ダイキは右へと展開した。

 俺は中央で様子を見る。

 コカトリスは——エイレンに首を向けた。

 大きく息を吸い込むと、毒の霧を放った!

 エイレンは、距離を取って身構える。


「ダイキ!攻撃を!」

「おう!分かった!」

 コカトリスの背後から、ダイキが剣を振るう。


 ザンッ!


 羽根をバタつかせながら、ダイキの攻撃をかわすコカトリス。

 今度はダイキに向って毒霧を放った!


「くっ!」

 毒霧を吸ってしまったのか、苦悩の表情を見せるダイキ。慌てて距離を取った。


 俺は……剣を構えた。

「もう少し……こっちに。」


 コカトリスがダイキの方へと歩み寄る。


「今だ!」


 ドンッ!!


 木の上から飛び降りた俺はコカトリスの頭上に剣を突き立てた!

 コカトリスは、ゆっくりとその体を地面へと投げ出した。


「カズヤ、流石ね!」

「コイツの特性は、よく分かっているからな。」

 

「えーっと、ペットみたいなものか??」

「毒を吐くペットは……勘弁してくれ。」

 俺は、思わず苦笑を浮かべた。

 ダイキにはそう答えたが、確かに俺はコカトリスに対して、以前よりも愛着が湧いていたのは間違いなかった。


 薄く霧がかかる森を進む。

 昨日まで探索していた森よりも、明らかにモンスターの数が多い。

 俺達はモンスター達を倒しながら進んだ。

 幸い、Bランクのモンスターは、あのコカトリスだけだった。


 「ここは……」

 しばらく進むと、開けた場所に出た。

 そして、岩壁には大きく開いた洞窟。そこからは霧が吐き出されていた。


「もしかしてダンジョン!?」

 ダイキの言葉に俺はそっと頷く。

 ——ただの洞窟じゃない。ここは、ダンジョンの入り口だ。


「このダンジョンから、モンスターが溢れ出ているとか?」

 そう、疑問を投げかけたエイレン。

「そんな事が……あるのか?」

 俺はエイレンの言葉を否定したかったが、賛同するに値する予想だった。

 ここからモンスターが出ているとしたら、森の中に彷徨うモンスターの多さに納得がいく。

 ——だが、俺が管理していたダンジョンも含め、モンスターはダンジョン内にとどまるのが常識だ。

 それに……こんなにも霧を吐くダンジョンは、見たことが無い。


「ギルドの依頼……ここに秘密があるかもだな。」

「そして、その依頼を達成するべく、"誓いの黒宴"も、この洞窟に入って行った……」

「そう考えるのが普通ね。」


「「「よし、行こう。」」」

 3人の声が揃った。


 俺達3人は、未知なる洞窟へと足を踏み入れる。

 ——このダンジョン、ただじゃ済まない。

 胸の奥がザワつくのを感じた。

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