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第28階 優しいダンジョン

「よいしょっと。」

 私は体をひねるような感覚で一体のモンスターを生み出した。


「ブルーコボルトだ!」

「2体居るぞ!」

「えっと……火魔法が効かないのだっけ?」

「そう、私が先制攻撃するね!」

 4人組のパーティー。後方に立つ、弓使いが弓矢を放つ。続けて魔法使いの女の子が土魔法を放った。


「よし!行くぞ!右のを頼む!」

「おぅ、左は任せた!」

 剣士2人が前へと飛び出す。

振りかぶった2人の剣は、ブルーコボルトの木製の盾によってそれぞれ防がれた。


「2人共、頑張って!」

女の子2人の声がダンジョン内で響いた。


「うわぁー」

 剣士の男の子は叫び声を上げると、盛大に吹き飛ばされた。もう一人の剣士が助けに入る。


「キャーー!」

 フリーとなった一体のブルーコボルトが弓使いの女の子に向かいこん棒を振り上げた。


「ちょっ!」

 私は思わず木の枝を伸ばした。


 ドタンッ!


 ブルーコボルトは、足を木の枝に引っ掛けて盛大に転んだ。

「えいっ!」

「ストーンバレット!」

 弓使いと魔法使い、2人は容赦なく倒れたブルーコボルトを仕留めた。


 剣士2人も、対峙していたブルーコボルトを倒す。


「ごめん、俺がヤラれそうになったから…」

 バツが悪そうに吹き飛ばさた剣士の男の子は後衛2人に頭を下げる。


「そうよ!女の子2人を危険に晒すなんてダメ!だいたい、ブルーコボルト程度に吹き飛ばされるなんて、ちゃんとご飯食べてるの!?」

 そう叫び声を上げたけど……残念ながら、この声はダンジョン内にいる初心者4人組のパーティーには届かなかった。


 私はコタツ部屋で独り言を呟くだけ……


 ダンジョンとなってしまった私。

「ユイ……必ず助ける。」

 そう言ってくれたカズヤくんの言葉を頭の中で繰り返す事が今の楽しみ。

 最初は怖かったダンジョン生活。

 だいぶ慣れたけど……やはり一人きりなので寂しさは消えない。


「誓いの黒宴さんを探しに行くって言ってたな……あぁ、早く帰って来ないかな。」

 黒宴のシイラスさんは、あのドラゴンと対峙した後、早々に私達の町を離れてしまった。

 元々、旅をしながらダンジョンに潜っているって聞いていたから、あのドラゴンとは関係ないかもだけど……


「って、あれ?あの4人組、まだ懲りずに進んでいるんだ。あきらかに初心者よね。3階層に降りるのはまだ早いと思うけど……」

「死んじゃったらどうすんのよ……私と交代になるのかな?でも、あんな冒険者になりたての子に、可哀想すぎるよね。」


「まぁ、いいわ。3階層でCランクモンスターのお出迎えよ。」

 4人が3階層に降り立った早々、私は3体のモンスターを生み出した。

 Cランクモンスター、リッチ。


 不気味に笑いながら浮遊している。


 戦う方から見ると厄介な相手だったけど、生み出した側から見ると、案外愛着が湧くわね。

 ——カズヤくんも同じように思ったいたのかな。


「ウォーターボール!」

 魔法使いの先制攻撃。続けて弓矢も放たれる。

 ——が、2人とも、威力が低い。


「無理よねー、3階層まで降りてくるレベルじゃないわ。」 

「この声が届くなら……伝えてあげられるとのに。」


 剣士の男の子一人がリッチに向かい突進。

 もう一人の男の子は後衛2人を守っている様子。


「うーん、リッチ3体は厳しかったわね。とりあえず2体にしておくべきだったかも……」

 突進した剣士の子はリッチの魔法で弾き飛ばされた。


「もう……逃げちゃいなさい。」

 そう思った時、覚えのある声が聞こえた。


「ちゃんと自分達のレベルを考えて潜るんだ!死ぬぞ!」

 声の主は……カケルさん!


 現れたのはパーティ"赤い稲妻"

初心者パーティーを下がらせて、リッチを1体すつ倒していく。


「あの……ありがとうございました。」

 この子がリーダーなのかな?剣士の男の子が、小さく頭を下げた。


「お前らにはダンジョン攻略なんて、まだ早い!地上で追いかけっこでもしてろ!」

 ——え?追いかけっこ?

「ちょっと、それは酷くない!?」

 叫びながらコタツの上を叩いた!

 (実際は叩けないけど、そんなイメージ。)


「クソッ!俺達だって、ちゃんと冒険者登録してんだぞ!」

「そうか……じゃぁ、取り消すべきだと進言しておくわ。」


「もう、行こ!」

「カケル!遊んでないで、先に進むぞ!」

 剣士の男の子は悔しそうな顔を浮かべながら2階層への階段を登って行った。

 何度も振り返るが、その度に仲間に腕を引っ張られている。


「さぁ!腹いせにモンスターでも殴ろうぜ!」

 ——何よ、腹いせって。

 確かに"赤い稲妻"も強いけど、私の子達だって……


 って、先生が居ないわね?

 もしかして、またパーティーから追い出しちゃったのかな?


「よし、あの稲妻剣が無いなら……」

 私は5階層まで引きつけた後、大熊型のモンスター、グリズリー2体とワイバーン1体を生み出した。


 グリズリーはパワー型。雷系に弱いけど今日は大丈夫。そして、もう1体のワイバーンは火魔法耐性が高い。


「レザリーさん、ワイバーンは苦手ね筈!」


 ドンッ!


 早速、"赤い稲妻"の盾役、ガイアがグリズリーとぶつかり合った。


「ファイヤーアロー!」

 もう1体のグリズリーにレザリーさんが火魔法を放つ。


「クソッ!降りてこい!」

 そして……リーダーカケルさんは、浮遊するワイバーンに向って叫んでいた。


「うん、そうなるわね。」

 ワイバーンが吐く、炎の攻撃によって"赤い稲妻"は、成す術がなく……


「撤退するぞ!」

 カケルさんの声と共に引き返していった。


 ——少年たち、敵は取ったからね!

 先程の初心者パーティーの子達の顔を思い出しながら、呟く。

「あぁ、カズヤくんって……いつも、こうやって私達を見ていたのかな。」

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