↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/40

第26階 オブジェクトの向こう側

 ユイ……会いに来たぞ。


 俺はそう思いながらダンジョンへと入った。

 薄暗く、ジメついたダンジョン。

 普通なら嫌悪感を抱く所だが、俺は懐かしさを感じた事で愛おしさえ覚えた。


「カズヤ……ダンジョンの管理者というのはどこに居るんだ?」

「分からない……手も足も、すべてがダンジョンというか……不思議な感覚だった。」


「でも……15階層に体はあるんでしょ?」

「あぁ、あるのは分かるのだが……自分の体を遠くから見る感じかな。」


 質問した2人は顔を見合わせて不思議そうにしている。俺が逆の立場だったとしてもそうなるだろう。


「来たぞ。」

 ダイキの声で前を向く。


 現れたのは、ウェアウルフ3体。

 牙を生やした狼男たちは、ヨダレを垂らしながら近づいてきた。

「なるほど。」

 

 素早いが、物理攻撃が効きやすいモンスター。

「一人、一体で。」


「了解、あたしは右に行く。」

「じゃぁ、俺は左。」

 俺の指示に従い、エイレンとダイキは自身のターゲットを選んだ。


「真ん中……請け負った。」

 姿勢を低くして、走り出す。

 うん……体が軽い。

 ダンジョン管理者になる前よりも、動きやすい。


 ザンッ!!


 水平に剣を振るうと、ウェアウルフの体は2つに分かれた。


 左右のウェアウルフも、ダイキとエイレンによって倒された。


5階層に到達。

「ここからはBランクモンスターが出現する。マジックポイントを5、消化するんだ。」

 

「モンスターがランク分けされていたなんてな。」

「あぁ、まったく知らなかったわ。」

 冒険者の常識では知らない話をすると、2人は驚きの声を上げていた。


 出てきたのは、トロント。

 植物型のモンスターだ。


「やはり、ユイは優しいな。」

「ん?そんな事が……分かるのか?俺には普通のトロントに見えるが。」


「あぁ、今の俺達3人には魔法師が居ない。だから物理攻撃耐性の高いモンスターを出せば苦しいんだ。」

「なるほど、そう言えば今までの階層、魔法師が居ないと苦労するようなモンスターには出会わなかったわね。」


「おっと、来るぜ!」

 トロントから伸びるツルが上下左右と鞭のように放たれる。


 バンッ!


 ダイキが盾でその攻撃を防ぐ。

「よしっ!」

 ツルを掴んだダイキの背後から飛び出す!


 右からエイレンと左から俺の突進!


 目の前に伸びて来たツルを俺は薙ぎ払った!


 ドンッ!

 ザンッ!


 エイレンの槍がトロントの体の中心に突き刺さる。

 俺の剣は、脇から胸にかけてを引き裂いた。


 トロントはゆっくりと崩れ落ちた。


「よし!」

「やったね!」


 俺達3人はハイタッチをかわす。

 そして――俺は天井に向けて叫んだ。

 

「ユイ!ありがとうな!」

 

「どうした?カズヤ。」

「ユイがいるの!?」


「実際、どこに居るかは分からない。

 けど……ユイはさっきの戦闘を見ていた筈だ。」

俺がそう答えると、2人も叫んだ。


「ユイ!元気か!?」

「ユイーー!」

 2人の悲痛な叫び声……

 その声は、ダンジョン内に響き、木霊する。

 が……暗闇の奥へと消えるだけだった。


「聞こえているかな?」

「あぁ、聞こえている筈だ。」

 そう、エイレンに答えると、彼女の顔が急に柔らかくなるのを感じた。


 ダイキも前方を゙指差し……笑った。


 ――木の枝。


 ゆっくりと揺れている。

 トロントの腕じゃない……オブジェクトだ。

 それはあきらかに自然な動きでは無かった。


 ユイ……オブジェクトの動かし方を覚えたんだな。

 そう確信した俺は叫んだ。


「誓いの黒宴さんを探そうと思うんだ!」

 ダンジョンの深層でドラゴンと渡り合う為に必要なパーティー。どこかに旅立った黒宴さんを探す事をユイに伝えた。


「ユイ……少しの間、待っていてくれ!」

「絶対、戻ってくるから!」

 ダイキとエイレンも続けて叫んだ。


 ――すると、

 1本だった木の枝が2本に増えた。

 そして、ふたたび揺れ出す。


 まるでユイが両手で手を振っているように感じた。


 ――ユイ、絶対に戻って来るからな。

 俺は決意を胸に込め、ダンジョンを後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。