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第25階 交代の代償

 あの真っ白な空間で俺は確かにユイの意識と交わりあった。

『俺が助ける。』そう伝えた言葉を俺は忘れない。

 


「それは……夢か何かを見ていたんじゃないのか?」 

「まぁ、そう思うわな。」

 ダイキの台詞に対して、俺はそう答える他には何も言えなかった。

おそらく、歴代のダンジョン管理者達も同じ思いをしたに違いない。


 ここは俺達のホーム。

 俺がダンジョンになってから何日、経過したかは分からないが、この場所は以前と何も変わっていなかった。


 ただ、ユイが居ない事を除いて……

 

「で、今はユイがそのダンジョン管理者というモノになっていると……カズヤは、そう言うのか?」

 困惑の表情を浮かべながら問いかけるエイレンに対して、俺はその通りだと返事をする。


「ふぅ……」

 大きく息を吐くダイキとエイレン。


「今、伝えた事が真実だ。俺にはこれ以上の説明をする事が出来ない。」


「確かに、あの時ユイは光に包まれて消えた。

 あんなに不思議な光景は見たことが無かった。」

エイレンは祈るかのように手を合わせ、机の上に肘を置いた。


「だが、何故……カズヤは再び俺達の前に現れる事が出来たんだ?」

 ダイキの問いかけに、俺は答えを言うのを躊躇《ためら》った。

「どうしたの?カズヤ。」


「――あのダンジョンで死んだ奴が管理者となるんだ。

 そして、前任の管理者はダンジョンから解き放たれるんだ。」


「何だと!!」

 ガタン!と大きな音を立てて椅子が倒れた。 

 ダイキは立ち上がって、俺の胸ぐらを掴む。


「お前は!ユイを殺して、生き返ったのか!?」

「そうだ……そう言われても仕方ない……」


「待って!!」

 俺に殴りかかろうとしたダイキの腕をエイレンが掴んだ。


「ヤメて……冷静になって!」

 エイレンの瞳から一粒の涙が溢れ落ちた。


「だってよ……カズヤは……」 

「分かる……ダイキの言いたい事も分かる。」


「でも……カズヤが、わざとユイを殺す訳無いじゃないの。」

「それは……そうだが……」


「納得出来ねえがよ!」

 ダイキは怒りながら、俺の胸を突き離した。


「はぁ……」

 倒れた椅子を戻し、ダイキはゆっくりと腰を降ろす。


 立ち上がっていたエイレンも座った。


 ――しばらくの間、静けさがリビングルームを包む。


 その静けさに耐え兼ねたようにダイキが真剣な表情で尋ねた。 

「一旦、カズヤが言っている事を真実だとしよう。

 それで……俺達"蒼き閃光"は、どうしたら良いんだ?」


 俺は真っ直ぐに2人を見つめて答えた。

「――ユイを取り戻す。」

 

 そう伝えると、

 2人は頷き、俺の続きの言葉を待った。


「ユイを助ける手段だが、あのドラゴンが何かを知っていると俺は考えている。」

 エイレンがビクリと肩を震わせた事が分かった。


「あのドラゴンと会話するとでも言うのか?」

 エイレンの鋭い目が俺へと向けられる。


「そうだ……実際、俺は管理者の時に話をした。」

「…………。」

 俺の言葉に2人は無言となる。

 どうにも信じられない。

 ――俺が逆の立場だったら、そうなるだろう。


 一呼吸置いた後、ダイキが懸念を口にした。

「例え、ドラゴンに再会しても、すぐにヤラれてしまうんじゃないか?」


 そう……そう簡単な話じゃない。

 無策では、ユイを助けられない。

 

「俺もそう思う。なので……その為にはあの強者パーティーの力が必要になる。」 

「強者パーティーとは……誓いの黒宴の事か?」


「そうだ、きっとあのパーティーなら、ユイを助けて欲しいと頼めば手伝ってくれる筈。」

「カズヤは、まるで……見ていたかのように話すわね。」


「そうだ、俺はずっと見ていた。あのグリーンゴブリンを俺と間違えて拉致しようとした場面もな。」


「ぶっ!」

「ははははは!」

 2人の笑い声――やっと聞く事が出来た。


「あんなのと間違えるなんて、おかしいだろ?」

 

「いやいや、ユイだって。真剣な顔して『カズヤくん!』って叫んでいたのは。」

「ユイも、思い込みが激しいところがあるからねー。」


「でも……今の話で、俺はカズヤの話を信じる事が出来た。」

「そうね、まだ半信半疑な部分もあるけど……夢にしては長すぎる話ね。」

 2人は、俺の話を信じてくれた。

 完全にとは言えない――が、これで前へと進める気がした。


「だが……」

「黒宴の皆さんは、この町を離れてしまったんだ。」

 エイレンの悪い知らせ。

 ――俺は思わず頭を抱え込んだ。


「どこに行ったか分かるか?」


 2人は顔を見合わせた後、答えた。

「分からない。」

「聞き込みをすれば分かるかもだが……」


 少し考えた後、俺はこれからの予定を伝えた。

「よし、まずは聞き込みをしながら、あのダンジョンに潜る。」

「え?ダンジョンに潜る必要があるのか?」


「ユイは……寂しい筈なんだ。俺がそうだったように。」

「…………。」


「分かった……ユイに会いに行こう!」

「モンスターと間違えないようにしないとね!」


 エイレンの台詞に思わず笑ってしまった。

 真剣な表情をしなくてはならない場面かも知れない。

 だが……俺達は笑い合う。

 それが、俺達"蒼き閃光"の良いところかも……久しぶりに2人と笑い合った事で、改めてそう感じた。


 ここからだ――ユイを取り戻すための、本当の戦いは。

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