第23階 白い光
あのドラゴンは……どこだ?
知能を持ったあのドラゴンは知っていた。このダンジョンの実態……管理者交代制を。
「おーい!どこだ!ドラゴン出てこーい。」
叫ぶも単なる独り言に過ぎない。
ダンジョンになってから独り言となるのは毎度の事。
分かっている事だが虚しい。
集中し、10階層から15階層を探る。
が……ドラコンは居ない。
おかしな部分も、変化した部分も、何も見当たらない。
一体、どうしたら出現するんだ?
あの時、ドラゴンが出たのは10階層。
強者パーティーと、蒼き閃光の2つのパーティーが攻めてきた時だった。
その時の事を思い出すも、突然現れた事しか思い出せなかった。
「うーん。」
唸り声をあげていると……ユイ達、"蒼き閃光"がやって来た。
昨日は来なかったな……まぁ、休みも大事だ。
――にしても、ユイは今日も可愛い。
ダイキも元気そうだな……一緒に村を飛び出した事を思い出す。
「さてと……サラマンダーを出すか。」
すでに6階層まで来ていた"蒼き閃光"にBランクモンスターをぶつける。
強力な炎を吐くサラマンダー。
だが、水魔法には弱い……ユイには良い相手だ。
「ユイ、頑張れよ!」
先手を撃ったのはサラマンダー!
蒼き閃光を見つけると同時に体を回転させ、尻尾を振り回す。
――ガンッ!
ダイキが盾で尻尾を受け止めた。
「ほぉ!あの一撃を止めるか!」
ダイキの影から……現れたのはエイレン!
――突進!
サラマンダーが首を曲げ、エイレンに口を向ける。
――開いたその口内には炎が渦巻く!
ドーーーーン!
バーーーーン!
2つの音が当時に聞こえた。
サラマンダーの首が上を向いていた。
――その口から放たれている炎。
天井部分に向けて一筋の柱が立っているかのよう。
サラマンダーの顎には、エイレンの槍が突き刺さっていた。下段から突き上げたままの姿でエイレンが叫ぶ。
「ユイ!トドメ!」
「はい!――アイスランス!」
ズドーーン!!
エイレンが離れると同時にユイの水魔法がその胸に突き刺さる。
――サラマンダーはゆっくりとその体を地面に投げ出した。
「つ、強い……」
俺が居た頃の"蒼き閃光"とは違う!
めちゃくちゃ強くなってる!
ハイタッチしながら喜び合うユイ達。
「シイラスさん達からの特訓が役立ったね。」
「あぁ、バーサスさんに貰った力の腕輪も凄い。」
「サイバーさんに教えて貰った初動の感覚、やっと身に付いて来たわ。」
そうか、あの強者パーティーの"誓いの黒宴"だったかな……指導を受けたんだ。
それにしても、凄い成長だ。
それに比べ、ダンジョンとなってから成長をしていない俺。もうこの3人とハイタッチするレベルには、無いかも知れない。
「まぁ、いいさ……俺はしばらくダンジョンのままで居る覚悟も出来た。」
第7階層のフォレストエリア。
第8階層の氷の迷宮。
それぞれを突破される。
次は第9階層……ここを突破されたら10階層。あの知能を持つドラゴンが出てくるかも知れない。
が……流石に強くなった"蒼き閃光"もドラゴンには敵わないだろう。
ドラゴンとは話をしたいが……ユイ達を危険に晒す訳にはいかない。
ここまで来たのにゴメンな。
俺は9階層にワープトラップを設置した。
「待て……」
エイレンが右手にはめた指輪を見た。
「ん?もしかして……」
嫌な予感がする。
「トラップだ……」
指輪は薄く光を放っている。
――エイレンは、トラップを見抜く指輪を装備しているのか!?
「くそ、ドラゴンと戦う事になったらどうするんだ!」
俺は、1体のモンスターを生み出す。
バジリスク……ユイ達を石化させてくれ。
仕方ないんだ、これ以上進ませるのは危険だ。
目の前に現れたバジリスクに対し、ユイはすぐに呪文を唱えた。
「水魔法……アイシング!」
みるみるウチにバジリスクの顔面を氷が覆っていく。
「何!?これでは……」
バジリスクは混乱状態に陥った。
黄色い目は氷によって塞がれている。
石化……されられない。
エイレン、ダイキ、ユイ、3人の連携によって、バジリスクはあっさりと倒された。
第10階層……広い空間が広がる。
「早く……追い返さないと。」
ドラゴンが現れる前にユイ達には撤退して貰わないと……
マジックポイントを8使用。
俺はAランクのモンスター、グリフォンを生み出した。
前半身は鷲、後半身は獅子の姿。
四本の獅子の足で地面を叩いた後、鷲の翼を広げた。
バサリと翼を動かすと、その巨体が宙に浮く。
一瞬で"蒼き閃光"の3人の前へと現れたグリフォン。
「ウォーターアロー!」
ユイがすぐに対応――空中に浮かぶグリフォンに対して水魔法を放つ。
――が、グリフォンは空中を舞うようにして、魔法をかわすと……3人の前へと降り立った。
「ユイ……気をつけろよ。」
グリフォンはその翼を大きく広げた。
――ブォン!
という音と共に凄まじい風が吹いた。
咄嗟にダイキが前へと出、盾を構える。
「ふぅ、何とか……防いだか。」
突風が止まった瞬間をエイレンが見逃さない。
一気に前へと出た。
「ウォーターアロー!」
ユイが魔法で援護する。
水魔法の後に続く形で、エイレンが槍を前へと向けた。
バリバリバリッ!
階層内が眩い光で包まれる。
「これは……雷魔法!」
光が収まると、エイレンが倒れる姿が見えた。
「「エイレン!」」
ユイとダイキが叫ぶ。
ダイキは急いでエイレンへと駆け寄り、盾を構える。
が、グリフォンは倒れたエイレンを無視して、前へと飛び出した。
――その先には、ユイ。
「え!?」
グリフォンの目が光ると……
バリバリバリッ!!
――ユイに雷魔法が直撃。
一瞬だけ、ユイの目がこちらを見た気がした。
ユイは、煙を上げながら……その体をゆっくりと地面に投げ出した。
右腕に装備した腕輪が一瞬、光る。
「ああああぁぁぉぁーーー!!!」
俺が叫んだその瞬間、目の前が真っ白に輝いた。
――あの時と、同じ白い光。
「ユイ!起きて!ねぇ……ユイ!!」
エイレンが叫ぶ声が聞こえるも……俺の意識は遠のいていった。
――何かが、切り替わるように。




