第21階 ダイキの過去
視点:ダイキ
「あの、蒼き閃光の方ですか?」
ギルドの受付で報告書の提出をした直後、そう問いかけられた女性に俺は見覚えが無かった、
「あぁ、そうですが……何か?」
警戒心を持ったまま返事をすると、その透き通ったような声の持ち主は不思議な事を問いかける。
「カズヤという男性はどのような方でしたか?」
「えーっと、カズヤの知り合いですか?」
質問に質問で返してしまう。
「はい……知り合いと言えば知り合いですね。」
はっきりと答えない目の前に居る女性。
その服装から察するに魔法使いだろう。
本当に知り合いなのか疑問に思い、ジッと見つめる。
「何度か意思疎通は交わしましたけど、どうにも本心が分からなくて……まぁ、これても一応、罪悪感的な感情は持っていましてね。」
「ごめん、何を言っているのかサッパリ分からないな。」
「そうですよね……私の名前はリーン。土魔法を得意とする魔法師です。」
「俺の名前はダイキ。カズヤとは仲間であり、昔からの友人だ。」
「そうですか………昔からの………」
「あぁ、同じ村の出身だからな。」
――で、カズヤの何を知りたいんだ?」
「知りたいのは……そうですね、性格ですかね。」
「アイツは……いい奴だ、仲間思いの……本当、頼りになる存在。」
カズヤの事を話すうちに俺はうつむき加減になってしまった。
もしかしたら、もう二度と会えないかも知れない。
そう思うと、真っ直ぐ前を見れなかった。
「仲間思いなら、また貴方達に会いたい筈ですよね?」
「そんなの……決まっているだろ。」
リーンとか言ったか、この魔法使いは何が言いたいんだ?
「そうですよね……まぁ、また会えると思いますよ。
――きっと"中"で。」
「ん?お前、カズヤの事、何か知っているのか?」
「知らないですね……私は。」
「そうだよな……」
不思議な雰囲気を持つ女性リーンとは、その場で別れた。彼女は、まるで何年も生きているかのように冷静で、感情を持っていないかのようにさえ感じた。
「ふう……」
俺は飲み物を注文した後、ギルドの片隅のテーブルへと着いた。
「カズヤ……どこに行ってしまったんだ。」
カズヤとは同じ村の出身だった。いわゆる幼馴染だ。
よく木刀で剣士ごっこをしたな。
――懐かしい情景が目に浮かぶ。
俺はいつもカズヤに負けていた。
たまに勝ったが……あればカズヤが手を抜いた時だ。
だが、常に勝っていた事もあった。
それは……力比べ。
腕力では、俺の方が上だった。
ある日、村近くの森で遊んでいると、そこにモンスターが現れた。
逃げるには近すぎる距離まで詰め寄られていた。
俺はその時、咄嗟に拾った木材で、モンスターを押し戻した。
必死に力を込めて、モンスターを押さえつけた感触は今でも覚えている。
そして、カズヤが木刀で倒した。
あの日、俺はカズヤの盾になる事を決めた。
俺がカズヤを守り、カズヤが倒す。
2人で1人前。
カズヤもそうしようと言い、俺達はこの町に来て冒険者となった。
立派な冒険者となって有名になろう。
――そう、誓ったのに。
俺はカズヤを守れなかった。
――あの時、俺が後詰めを務めていたら。
「お待たせしました。」
店員さんが注文した飲み物を無造作に置く。
そういえば……さっきのリーンとかいう女性。
――また会えると思いますよ。
適当な事を言っていたのかも知れない。
だけど、何故かその言葉を信じても良いような気がした。
「ダイキくん。」
「一人で何しているんだ?」
声をかけて来たのはユイとエイレン。
「ちょっと、カズヤとの事を思い出していてな。」
そう伝えるとユイが食いついた。
「知りたいです!
――私、カズヤくんの事、もっと!」
「あたしも、聞きたいな。」
「そんな、楽しい話ばかりじゃないけどな。」
そう伝えた後、俺はユイとエイレンに俺達が子供の頃の話をした。
2人は、俺の話を楽しそうに聞いていた。
過去の話はこれ以上増えない。
だけどな、カズヤ……未来の話は、いくらでも増やせるんだぞ。
――そう、信じたい。




