第18階 新顔の魔法師
ドラゴンの言葉を思い出す。
『お前はダンジョン管理者だろ?』
『お前は…生き返りたく無いのか?』
コタツに突っ伏して考え込むも何の事か分からない。
俺が……ダンジョンの管理者?
生き返りたく無い?
ダンジョンの管理者という事は、何となく分かる。
実際、やっている事がそうなのだ。
ただ……管理しているという程、このダンジョンの事を理解していない。
謎なのは、生き返りたく無いのか?という言葉。
――何故、そんな事を聞いた?
ドラゴンの言葉の意味は何なのだろうか?
俺が生き返る為には、15階層で氷漬けとなった俺の体を見つけて貰う。
――違うのか??
10階層で石化させたドラゴン。
俺が意識を失っている間に、その姿は消えていた。
もう一度、あのドラゴンと話してみたい。
もしかしたら、俺が生き返る方法を知っているのかも。
「よし、倒したぞ!」
5階層から声が聞こえる。
この声は…カケルか。
パーティー"赤い稲妻"
Bランクモンスターのサラマンダーを倒したようだ。
今日も紳士風の剣士を連れている。
「流石、先生です。」
調子の良いセリフ……カケルの奴、本心で思っているのか?
いつもの魔法師の女性、斧使いの盾役。
「あれ?もう一人連れているな。」
"赤い稲妻"は、見知らぬ女性魔法師を連れていた。
紳士風の剣士、あの雷を纏った剣が厄介だ。
俺はBランクのモンスターを生み出した。
"リッチ" 空を浮遊するアンデッドモンスター。
一気に三体を生み出す。
このアンデッドモンスターは雷系魔法に強い。
あの剣にも耐性がある筈だ。
「ファイアーアロー!」
赤い稲妻の魔法師が得意の火魔法を放つ。
ヒラリとかわすリッチ。
――間合いを詰め、その手に持つ鎌を振り下ろした。
「少々痛い思いをするかもだな。」
俺がそう言った時、聞き覚えの無い声がダンジョン内に響いた。
「ストーンバレット!」
杖から繰り出された無数の岩石がリッチを後退させた。
「あの新顔……土魔法使いか!?」
まぁ…弱いな。
たとえ当てられたとしても、リッチのダメージは少ない。
「あんたこのダンジョンに詳しいんだろ?
――何とかしろよ!」
カケルの声…仲間割れか?
「騒がしいわね、今のは肩慣らしよ。」
「ストーンハーデン!」
新顔の魔法師は聞いた事も無い呪文を唱えた。
杖からは、何も発っされない。
「ん?不発か?」
そう思った瞬間、リッチに異変が起きた。
浮遊するリッチの背中に石!?
――その石は数が増え、どんどんと広がっていく。
「何だ、この魔法は!?」
そう言えば、俺は土魔法に詳しくなかった。
だが……こんな魔法は聞いた事も無い。
リッチは、背中に無数の石を生み出され…
その重みに耐えられず、徐々に降下していく。
「ファイアーアロー!」
「ソードスラッシュ!」
身動きが取れなくなった三体のリッチは、カケルと魔法師によって、あっさりと倒された。
「ぐぬぬぬ〜」
くやしい…
さらに進む"赤い稲妻"の5人。
「くっ、また、ヤラれた。」
にしても…あの新顔の声、どこかで聞いた事があるような。
7階層…フォレストエリア。
「この前は、ここでバジリスクに石化されたんだ。」
「バジリスクは確かに厄介ね。まぁ、石には石よ。」
カケルに応える新顔の魔法師…その声は透き通るような声だった。
うーん…誰だったかな?
知り合いかな?
だが、顔を見ても思い出せない。
「にしてもあの新顔、バジリスクへの対策が出来るって事か?」
じゃぁ…出してやるよ。
出でよ……バジリスク!
バジリスクは、黄色い目をクルクルとさせながら、森を徘徊し始める。
「お手並み拝見だ。」
巨体を揺らしながら、バジリスクは"赤い稲妻"の5人へと近づいた。
「ストーンハーデン!」
新顔の魔法師が杖を、バジリスクに向け…ない!
空中!?
一つ、また一つと空中に石が生み出され、
そしてバジリスクの頭部へと落下していく。
「石が…次々と溜まっていく…」
大量の石が、バジリスクの頭部へと蓄積されていく。
その無数の石は、まるで磁石のようにバジリスクから離れない。
「あ、バジリスクの目が、石で塞がれている!」
「ファイアーアロー!」
火魔法を得意とする魔法師が炎の矢を放った。
「やーーー!」
盾役の男が走り出し、その後に紳士風剣士とカケルが続いた。
「サンダーブレード!」 バリバリッ!
「バスターソード!」 ザンッ!
「ロールアックス!」 ドンッ!
三人の攻撃がバジリスクの体を攻める。
新顔の魔法師は、手を広げたまま集中している。
バジリスクの目を塞いだ石を、留めているんだ。
ドーーーーン!
バジリスクは、その巨体を投げ出すかのように倒れた。
"赤い稲妻"から、歓喜の声が聞こえる。
「リーン、あんたを雇った甲斐があったぜ!」
「当然の結果です、ちゃんと報酬を払ってくださいね。」
カケルらに、リーンと呼ばれた魔法師。
その魔法師は、空を見上げる。
――彼女と目があった気がした。
「頑張ってるわね。」
この声……忘れる訳が無い。
思い出した声の主。
――天使様だ。
俺が死んだ時に頭の中に響いた声。
あの時の……天使様の…
『――でも、生き返れるわ。』そう俺に言ったあの声だ。




