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第17階 エイレンの決意

視点:エイレン


『ちょっと、どういう事なの!

――どうして貯金が無いのさ!』

パーティー管理のお金。

困惑した顔をしたリーダーと、その傍らに居た魔法師の女の子の言葉を思い出す。


『ちょっと、投資して増やそうとしてだな…。

リーダーとして、最善の策を講じたんだ。』

『…で、その子の装備品だけ、豪華になった訳だ。』


は?投資?

――ふざけるな!

投資っていうのは。将来高額になりそうなアイテムや武具を買っておくって事。


『私の身の安全が保たれたら、このパーティーは強くなるわ…当然の投資なのよ。』

『そういう事だ、金を増やすだけが投資って事じゃないんだ…分かってくれ。』

支離滅裂な言い訳が繰り返される。


『それで、他のメンバーはこの事を知っているのか?』

『それは…これから伝える所だ。』


リーダーが全員を集め、メンバー達に説明する。

私は、壁に寄りかかって話を聴いていた。


『ご、ごめんなさい…みんなのお金を私の装備に使っちゃって――ひっく、ひっく。』

『お金はまた稼げば良いから…まぁ、泣くなよ。』

サブリーダーが、そう声をかけた時……


『いや…泣いて済む話じゃないだろ!

――ルールを破っていてたら、逆に自由が無くなるんだ!』

私はキレて、大声を出してしまった。


『まぁ、まぁ、そんなに怒らなくても…』

『反省している事だしな…』

周りのメンバーからも声が聞こえる。


――その後、私は孤立した。


『どうかしたのか?』

一人、食事をしていたところに声をかけて来たのが、カズヤだった。


色々と話を聞いてくれた。


そして、カズヤは私を連れてパーティーに乗り込み、リーダー達に文句を言った。


『――エイレンが不要なら、俺が連れて行く!文句あるか!?』

そう言葉を吐き捨てたカズヤ。


正直、厄介払いが出来たと思ったのだろう。

私は所属していたパーティーを離れ、カズヤが結成したパーティーに合流した。


とは…言っても仲間はカズヤとダイキだけ。

パーティー名、何にする?


『ちょっ、まだそんな段階なの!?』


でも、私を連れ出してくれたカズヤには感謝の気持ちが溢れた。


――気がつけば、あたしはカズヤの背中ばかりを見ていた。


『よし!パーティー名は…蒼き閃光で決まりだ!』


楽しかった。

あたしが恋愛感情を抱く日がくるなんて…

当然、それを口に出す事も出来なかった。


そりゃそうだ…

男勝りなあたしが、男の子に恋心をぶつけるだなんて、笑われてしまいそうだ。


ダイキとも仲良くやっている。

あたしは、ただ……新しく結成したこのパーティーに居心地の良さを感じていた。


「……レン、…イレン?」

「あ、何?」


過去の思いが頭の中を巡っていた。


「ボーっとしてましたよ。」

ニコリと笑うユイ。


そうだった、今はユイとデート中だった。


「ちょっと、昔を思い出していただけだ。」

「え?昔?」


「そう……ユイが初めて"蒼き閃光"に加入した時の事。」

「えーー、私、なんかおかしな事、しましたっけ?」


「いや……まったく。」

ユイの目をジッと見つめると、

彼女は顔を赤らめながら、飲み物に手を伸ばした。


貴族の娘だろうか?

上品な言葉使いに、上品な髪飾り。


お嬢様がお遊びで冒険者にでもなったのかな?

ユイと初めて出会った時は、そう感じた。


『よし、では…試しに仮加入して貰うよ。』

カズヤの提案に、あたしは良い感情を持てなかった。


だって……お嬢様のお遊びでしょ?


だけど、一緒に行動してみると、ユイからは強い意思を感じた。

絶対に冒険者として生きていくんだ。

言葉からも行動からも、その気持ちが伝わった。


『ユイ…俺達のパーティーに加わってくれ。』

カズヤは、ちゃんとダイキとあたしにも相談をしてから、ユイを正式メンバーに迎える事を要請した。


『はい…ありがとうございます。』

ユイのその言葉に、安堵と共に決意を感じた。


「で、次はどこに行く?」

「あぁ……武器屋に行って、装備を見てもらいたいのだが…」


「良いですね、エイレンの槍、傷んでそうですし。」

「付き合ってくれるか?」


「勿論ですよ!」

ユイの笑顔……女のあたしから見ても可愛い。


弾けるようで、不思議と元気を貰える。

あたしはカズヤの気持ちに気がついた。

カズヤが…好きになるのは当然の事かも知れない。


――そして、あたしは自分の気持ちを封印した。

ユイには、かなわない。

そう思った時、あたしの胸は少し痛んだ。


あたしは……このパーティー、この居場所さえあれば、それで良い。


「悪いな…せっかくの休みに。」

「いえいえ、エイレンさんの装備はとっても大事ですから。」


ユイも、きっとカズヤの事が好きなのだと思う。

だって…そうでなければ、ここまで必死に消えたカズヤの事を探さない。


ニコリと笑うユイの顔を見下ろす。

あたしは、この笑顔を守ってあげたい。

その為に…あのダンジョンで、カズヤを必ず見つけ出す。

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