第13階 6対6
「ワイバーンが…俺のワイバーンが…」
「ユイ…やったな!ついにワイバーンを倒せる日が来たんだな!」
浮かんだ二つの感情。
――連続で口に出てしまった。
火山地帯である9階層。
水魔法を得意とするユイの経験値が上がるのは良いが、このままアッサリ突破されても良いのか?
そう考えると、何故か身震いがした。
身震い?…ダンジョン震いか?
「さて…残りマジックポイントも僅か。
どうしたものか。」
俺は考えた結果、6人を10階層まで招き入れる事にした。
10階層からはAランクモンスターを出現させられる。
「ふぅ、初めての経験だな。」
Aランクモンスターを生み出す!
消費マジックポイントは8。
生み出したのは、ヒュドラ。
三つ首を持つ蛇種。
さらに、もう一体!
ケルベロスを生み出す。
三つ首を持つ狼種。
「どうだ!合わせて六つ首だぞ!」
そしてマジックポイントの残量は5。
もうAランクモンスターは出せない。
そして――眠い。
ここを突破されたら…
15階層に眠る俺の肉体を思い出す。
ユイも一緒だから、壊される事は無いか。
俺を見つけたら、どう思うかな?
身体を覆う氷を溶かしてくれたら…俺は復活するのだろうか。
「よし、2体共、頑張れ!」
「そして…ユイも頑張れ!」
7階層から9階層までとは違い、
この10階層は平凡なダンジョン。
だが……
10階層からは、Aランクモンスターが相手だ!
ヒュドラは首をひねり、目を光らせる。
ケルベロスはヨダレを垂らして獲物を待ち構える。
「この2体……怖っ。」
ユイ達が10階層へと通じる階段を降りてきた。
「普通のダンジョンに見えるが…」
ダイキが呟く。
「警戒せよ…嫌な空気が揺らいでいる。」
流石、ヒュドラ達の気配を感じたか。
やはり、この魔法使いの老人は只者では無い。
そして……6人は、ヒュドラ達と対峙した。
「ヒュンメルとケルベロスとは、嫌な組み合わせをしおる。
どちらも警戒すべきは毒を吐く事じゃ、ワシの風魔法で対抗するが……浄化しきれるか。」
「シイラスさん、どうすれば?」
「ワシは毒霧の対処に専念する。
まずはユイ殿の魔法とサイバーの弓で攻撃。
ダイキ殿は物理攻撃に備えて二人の前に。
バーサスとエイレン殿は隙を見て槍で攻撃!なるべく距離を取るように。」
「「「はい!」」」
指示を受けた5人の返事が重なる。
「すんげぇ、的確な指示だな。」
もし俺があの立場だったら…逃げる指示を出すかも知れない。
先制攻撃は、ヒュドラ!
3本の首を一旦、後ろへとくねらせた後、一気に前へと押し出し口を開ける!
ブオオオオオオー
ドス黒い毒霧が噴射された。
「ホーリーウィンド!」
出た!老魔法使いの風魔法――七色に輝く光によって毒霧は浄化された。
が……すでに第2波が吐かれている!
ケルベロスだ!
「くっ!下がれ!」
6人は、後退する。
「フフフ、どうだ!Aランクモンスターの連係は!」
ヒュドラ達は、距離を詰める。
「逃げても、良いんだぞ…」
俺がそう言った時、氷の槍が天上から振り注いだ。
ズドドーーン!!
「何!?
――ヒュドラの首が一本ヤラれただと!?」
ニヤリと笑ったのは……ユイ!!
さらに弓が乱れ飛ぶ。
が……ケルベロスは飛んで来た弓矢をかわす。
「ユイ殿、良い感じじゃ!
――相手の死角を狙うのじゃ!」
ケルベロスは4本の足を掻きだした。
「来るぞ!」
――突進!!
ドーーーーン!
「ダイキ!!」
盾でユイを守ったダイキ!
だが、ケルベロスのパワーに勝てずに吹き飛んだ。
さらに、ヒュドラの毒霧が放たれる。
「ホーリーウィンド!」
老人の放つ風魔法と毒霧がぶつかり合い、
中央部分で黒と七色がせめぎ合う。
「うぉぉぉぉー!!」
エイレンがケルベロスに向かって槍を向ける!
ガンッ!
ケルベロスの3つの首。
そのウチの一つがエイレンの槍に噛み付いた!
そのまま勢いよく首を回す!
「うわぁ!」
槍を握ったままのエイレンは体ごと空中に舞った。
「エイレン!」
思わず声が出る。
ドンッ!!
「ギャーーー!」
ケルベロスは悲鳴のような声を上げると、エイレンの槍を放した。
手練パーティーの盾役だ!
ヤツがケルベロスの首元に槍を突き刺した!!
ブオオオオオオー
その盾役に向かって放たれる毒霧!
「クッ!」
「バーサスさん!」
難を逃れたエイレンの叫び声。
槍役は、後方に飛び退くも毒霧を喰らったようだ。
膝をついて苦しそうな表情をしている。
勝ち誇ったような顔をするケルベロスの左側の首。
毒霧を放った首だ。
ザンッ!!
ニヤリとしたような顔をしながら、床へと転げ落ちた。
「いつの間に!
――ケルベロスの背後から、首を落とした!」
手練パーティーの剣士だ。
「一旦、態勢を立て直す!ダイキ殿の前へ!」
老魔法使いの叫び声によって、6人は一カ所へと固まった。
3本あったヒュドラとケルベロスの首は、それぞれ2本に。
"蒼き閃光"の三人のウチのダイキは相当なダメージを負っている。
手練パーティーのウチの盾役も毒霧を受けて苦しそうだ。
4対4って感じだな…
そう思った時、ヒュドラの体から首が生え始めた。
――首が再生して、3本の首へと戻る。
……早すぎるだろ。
「さぁ、ユイ達……どうする?逃げても良いんだよ。
――いや、逃げてくれ!
このままだと、止められない。ユイ、お前…どこまで伸びる気だ!?




