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第12階 ユイの思い出

視点:ユイ


「シイラスさん、ありがとうございました!」

「いえいえ…ユイ殿のアイスランス、お見事でしたよ。」

お世辞だと分かっている。

けど……やはり、強い方から褒められると嬉しい。


ゆっくりと水面の回廊を進む。


たまに映る自分の姿に驚きを隠せない。


しばらく進むと……


「何……歌声??」


どこからか歌声が聞こえて来た。


「きれいな声……」

胸の奥まで染み込むような美しい女性の歌声。

何だろ……ゆったりとした気持ちになってきた。


「耳と塞げ!セイレーンだ!」

シイラスさんの叫び声が聞こえる。


けど……嫌、この歌声を聴いていたい。


「あたたかい……気持ちになる。

――お母さん、会いたい。」


『待って……行かないで!!』

そう叫んだら、お母さんは振り向いてくれた。


あれ?お母さんは、亡くなった筈。


でも……また、私の前に居る。

私は、お母さんの胸に飛び込んだ。


そして……私を優しく抱きしめてくれた。


――いい匂い。

あの日々と変わらない。


お母さんのエプロンの感触を顔に感じる。

貴族の家のお手伝いさんだった母。


料理が上手で、働き者。


そして……その貴族の家のご主人様との間に産まれたのが私。


ご主人様の本妻から、嫌がらせを受けても…

私の為に頑張ってくれた。


けど……頑張りすぎた。

倒れたお母さんの肩をずっと揺さぶり続けた事を思い出す。


お母さんが亡くなって……

私は魔法学校の寮へと入った。


お母さんが亡くなった時、ご主人様(お父さん)は、何故か安堵したかのような顔をしていた事を、私は忘れない。


そう……忘れない。


私は、私の力で生きていく。


『――の、―イ―の!』


遠くの方から声が聞こえてくる。


お母さんは……亡くなった。

働きすぎて……


じゃあ、今、私を抱きしめている人は誰??


私は負けない……たとえ一人きりになっても

『生きていく!』


『ユイどの!』

ハッキリと声が聞こえた。


「シイラスさん!」

私の肩を揺らしていたのは、シイラスさんだった。


「あの……私は?」

「セイレーンの歌声にヤラれていたんだ。

――大丈夫、もう私達で倒しましたよ。」


「ありがとうございます。

スミマセン……足手まといになってしまいました。」

私の言葉にシイラスさんは黙って首を横に振った。


「あ!ダイキくんとエイレンは??」

「まだ、倒れていますね。」

指を差す方向を見ると、ダイキくんとエイレンに、

それぞれ"誓いの黒宴"の二人がついてくれていた。


「セイレーンの精神攻撃は、弱い心の隙をついて戦闘不能に追いやります。

――よく耐えましたね。」

私の心にある弱い部分か……お母さんの思い出は、私が頼ってしまう部分。

でも、お母さんの事を思い出すと私は強くなれる。

ギュッと拳を握りしめた。


「はい、私は……負ける訳にはいきません。

――必ず、私の居場所を、そして仲間を守り抜きます!」

「ユイ殿は…とても良い目を、してますね。」

シイラスさんの目も、とても優しかった。


しばらくして、ダイキくんとエイレンも目を覚ます。


「次の階層への入り口は見つけておいた。

行きましょう。」

盾役のバーサスさんの背中に続く。


第9階層。


ここは……火山??

山からは煙が立ち登り、きな臭い匂いに包まれていた。


「火山地帯っと言ったところでしょうか。」

「こういうエリアのモンスターは火魔法が効かない事が多い。」

「そして、水魔法に弱いモンスターが多い。」

"誓いの黒宴"の皆様の意見。


「私の出番ですね!」

手に持つ杖を握り締める。


「さっきの水面のエリアよりマシだな。」

「あぁ、そう思う。」

ダイキくんとエイレンの感想。

確かに、歩きやすい。


が……現れたモンスターは厄介だった。


「来たぞ!ワイバーンだ!」

空を飛ぶモンスター。


剣や槍は届かない。


「炎を吐いてくるぞ!盾役は防御に専念を!

サイバーは弓装備を!」

剣士のサイバーさんは弓を構えた。


ウチの槍使いエイレンは…弓など持っていない。


「ユイ殿、水魔法を頼みます!」

「はい!」


「ウォーターボール!」

「サンダーストーム!」

私の水魔法と、シイラスさんの雷魔法が放たれる!


――が、寸前のところでかわすワイバーン。


そして、大きな口を開け、火球を吐き出した!


ドーーーーン!!


盾役のダイキくんとバーサスさんが受け止める。

「あっつ!!」

ダイキくんから声が漏れる。


サイバーさんから放たれた弓も、ワイバーンはかわした。


宙を舞うワイバーン。


「厄介ですな…ユイ殿、まずは私が雷魔法を放ちます。

ワイバーンが態勢を崩した所に水魔法を!」

「はい!」


私は……魔法使いになるしか無かった。

貴族の屋敷にとどまる事は出来ない。

幼いながらも、そう感じた事を思い出す。


魔法学校に通って身に付けた水魔法……みんなの為に、自分の為に!

「アイスランス!!」


いつもと同じように放ったアイスランス。

だったけど……いつもとその大きさが違った。


直前にシイラスさんの雷魔法と、サイバーさんの弓をかわしたワイバーン。


その翼を私のアイスランスが貫いた!


悲鳴のような声を出しながら落下するワイバーン。


「ヤーーー!!」

落下地点に向かい走り出すエイレン!


ラスト、つけ足し…


ドンッ!!


ワイバーンの胴体にその槍を突き刺した。


勝利に沸く"蒼き閃光"と"誓いの黒宴"のみんな。

けど……私は何か違和感のようなモノを感じた。

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