第11階 揺れる水面
「ちょっと待て!」
――流石に慌てる。
何故?
あの強者三人組とユイ達の"蒼き閃光"が一緒に来るんだ?
ゆっくり寝たおかげで、マジックポイントはだいぶ復活した。
が……消費を抑えないと、昨日みたいに失敗する。
この強者パーティーに低ランクモンスターは意味が無い事は学習済。
俺は6階層からモンスターを出現させる事にした。
「今回は、ユイ達を成長させている場合じゃない。」
Bランクモンスターのオークやリッチを繰り出すもあっさりとヤラれてしまう。
7階層 《フォレストエリア》
……昨日、バジリスクを出したままだったな。
ただ、この強者パーティーには昨日ヤラれた。
今日もきっと……
「よし、あいつらを追い返したサラマンダーだ!」
マジックポイントを10使う!
俺はサラマンダー二体を送り出した。
案の定、バジリスクはあっさりと倒された。
――間に合わなかったか。
一体目のサラマンダーが近づく。
「来おったな…サラマンダーよ。」
何だ?年配の魔法使い……今日は余裕のある表情だな。
「ユイ殿、ヤツの頭上に水魔法を!」
「はい!」
「え?ユイ?
――いや、いくらユイでも無理だろ??」
水魔法を得意とするユイ……でも、まだ力不足。
サラマンダーを倒せる程の実力は無い。
「ウォーターボール!」
サラマンダーの頭上へと飛ぶ水魔法。
「サンダーストーム!」
間髪入れずに老魔法使いが雷魔法を放った。
バリバリバリッ!
水魔法が弾けるようにサラマンダーの体を覆う。
そして、そこに強烈な雷魔法。
サラマンダーの全身が震えた!!
動きが止まり、静寂となる。
ブオオオオオオ〜
「よし!二体目のサラマンダーが来た!」
「って、ダメだ!
――ユイ、逃げろ!!」
なんてこった、よりによってユイに向けて炎を放ってしまった。
バンッ!!
「ナイス!ダイキ!そして知らないオッサン!」
盾役二人がユイを守る!
「ありがとうございます!」
叫ぶユイ。
「ユイ殿、一旦下がって!」
「サイバーとエイレン殿、陽動を!」
老魔法使いが的確な指示を出した。
そう!それで合ってる!
行動不能に陥っていた一体目のサラマンダーがふたたび動き出した。
マズイな…ユイが危ない。
って、違う。
これ以上、先に進めさせちゃダメだ。
――ダンジョンとしての本能がそう告げている。
二体のサラマンダーと対峙するユイ達。
俺が繰り出したのだから、当然か。
ふたたびユイが水魔法を放つ。
「ん?ユイの魔法……こんなに広範囲だったか?」
そして、あの老魔法使いの雷魔法。
同じ手を喰らうか!
「避けろ!サラマンダー!」
そう叫んだが……
サラマンダーは同じ攻撃を喰らった。
あぁ…俺は無力だ。
モンスターを生み出す事しか出来ない。
二体のサラマンダーが崩れ落ちるのを眺めるしか無かった。
喜び合う六人。
「ダイキもエイレンも、なんか楽しそうだな。」
――ユイも、喜んでいる。
ユイの笑顔、可愛いな。
そして、魔法使いとハイタッチをしている。
ちょっと仲が……良すぎないか??
「おじいさんだから!
――その魔法師さんは、だいぶ年上だから!」
7階層を突破され、ついに8階層。
俺がここまで到達されたのは始めて。
この階層自体がトラップと言ってもいい。
8階層《水鏡の迷宮》
「何ここ?鏡??」
「これは難儀じゃな……」
ユイと老魔法使いも困惑している。
床も壁も水面で出来ている階層。
鏡の中を歩くようで、方向感覚を奪う。
ゆっくりと進む6人。
「さて……サハギンを出すか。」
この階層特有のモンスターと言っても過言ではない。
マジックポイント10使用!
二体のサハギンを生み出した。
この半魚人のモンスターは、水面の壁、床の中を移動出来る。
キャーキャキャッ
不気味な笑い声をあげながら、壁の中を進んでいった。
「ほどほどに頼むよ……」
侵入者である6人に視線を戻す。
「嫌な雰囲気だな…」
「ほんと、突然、自分の顔が目の前に現れる。」
「足元も何か不安定な気がするわ。」
ダイキ、エイレン、ユイが、それぞれの感想を口にしていた。
そこへ、サハギン達が到着。
「アレは…サハギンだ!上下左右から来るぞ!」
この魔法師……サハギンまで知っているのか。
「ファイアーアロー!」
咄嗟に火魔法を放つ老魔法使い。
「正解…サハギンの弱点は火魔法。
さて、火魔法を使えないユイは、どうする?」
ダイキはユイの前へと出た。
「ダイキ殿、上からです!」
手練パーティーの盾役の指示!
天上から飛び出すサハギン!
ガンッ!
ダイキは、サハギンの攻撃を盾で防いだ。
「クソッ!水面が鏡のようで、左右のどちらから来るのか分からない!」
エイレンは腕をヤラれたようで出血している。
「水の揺らぎを感じろ!」
手練パーティーの剣士が叫んだ。
と、同時にサハギンの一体に攻撃を加えた。
「凄いな、当てたぞ。」
って、感心している場合じゃないな。
このままだとヤラれてしまう。
「ファイアーストーム!」
何!?その狭い空間で広範囲魔法だと?
「ユイ殿!アイスランスだ!」
「はい!」
荒れ狂う炎から、抜け出すサハギン。
――を、待ち構えていたのはユイ!!
「アイスランス!」
「ギャーーー!!」
見事!サハギンを倒した!
「よし!ユイ、やったな!」
――って、違う!こっちがヤラれたんだ!
「エイレン殿、今だ!」
手練れパーティーの盾役がサハギンの体を抑えた!
「ヤーーー!!」
「ギャーーー!!」
サハギンの叫び声が水面に反響した。
「ちょっ……"蒼き閃光"なんか強くなってない!?」
……だが、試練はここからだ。




