第10階 学びの森
視点:ユイ
「ゴメンね、二人共…勝手に決めちゃって。」
「良いさ…あの三人組の力は相当と見た。共に行動する事で、学びがきっとある筈。」
「そうだな、"誓いの黒宴"さんだっけ?あの威圧感は手練だね。」
ダイキくんとエイレンの意見を聞かないままに、誘いに乗ってしまった事を詫びた。
二人共、とても前向きで良かった。
私、思い込むと前のめりになってしまう。
悪いクセ……
『すぐに相手を信用するな。』
カズヤくんに言われた言葉を思い出す。
あの時も……美味しい依頼だと思って、すぐに飛びついちゃったのよね。
「"蒼き閃光"の皆さん、準備はよろしいかな?」
「はい、大丈夫です。」
考え事をしていた私の代わりに、ダイキくんが返事をした。
"誓いの黒宴"さんを前にダンジョンの入り口へと進む。
「今回、自分の盾はお休みして、前衛に行きますね。」
「その槍の出番ですね、防御は任せてください!」
"誓いの黒宴"の盾役バーサスさんと、ダイキくんが今回の役割を確認。
「なかなか良い槍をお持ちですな。」
「そちらの剣も良い代物で。」
エイレンと"誓いの黒宴"の剣士サイバーさんは、お互いの武具の話で盛り上がっていた。
「そなたは水魔法が得意でしたね、わたくしは雷魔法と火魔法を得意としております。」
「雷魔法は難しくて私には無理です!」
"誓いの黒宴"の魔法師シイラスさんのレベルの高さが会話から読み取れる。
「今日も出ないな…モンスター。」
エイレンがボソリと呟く。
「ユイが言う優しさ?
いや…このダンジョンで何か異変が起きている気がする。」
私もダイキくんが言う通りだと思う。
一階層、今までならゴブリンやボムが出ていた。
それが……昨日から、まったく居ない。
二階層、三階層……変わらず静かなダンジョン。
「あの……何故、こんなに静かなのでしょうか?」
「分かりませんね……ただ、私はたまに経験します。
主に、2回目に入ったダンジョンで起きる現象です。」
魔法師シイラスさんが質問に答えてくれた。
六階層にて、やっとモンスターが出現。
「これは……オーク二体。」
「背後にも居る、リッチ二体!」
いきなり四体……しかも、パワー型と魔法型の組み合わせ。
「私とユイ殿でオーク二体を……倒そうとせずにまずは足止め重視で。」
「他の四人で、リッチに当たれ!
バーサスとダイキ殿の二人で盾!
隙をつく形で、サイバーとエイレン殿の二人で一体ずつ確実に相手を!」
この魔法師のおじいさん……凄い!
一瞬で相手モンスターを分析して、的確に指示をしたわ。
「「おぅ!」」
"誓いの黒宴"の二人は、即座に反応。
――そして動き出しが早い!
ダイキくんとエイレンは慌てて二人に続いた。
「サンダーボルト!」
「ウォーターバレット!」
シイラスさんの魔法に続くように、水魔法を放つ。
「リッチとの距離を開けるんだ!オークを下がらせろ!」
「はい!」
オークの右側を狙う。
さらに右側では、盾役の二人がリッチの魔法を受け止めていた。
盾役二人の背後から、エイレンの槍が飛び出す!
「ドンッ!」
やった!直撃!
同時に剣士のサイバーさんが一振り!
いつの間にリッチの背後に回った!?
「ザンッ!」
リッチ二体は、あっという間に消滅。
「気を抜くでない!オークを倒しに行くぞ!」
「はい!
――アイスランス!」
ズドドーーン!
「サンダーストーム!!」
凄まじい雷魔法がダンジョン内で瞬く。
オーク二体も撃破。
ほぼ……シイラスさんの雷魔法でのダメージだけど。
その後も"誓いの黒宴"の三人を主体に六階層を制覇。
昨日に続き、七階層の入り口に立った。
眼下にはフォレストエリアが広がる。
……昨日のバジリスクは、まだ居るのかな?
「あの……バジリスクの石化の目からはどうやったら?」
私が質問すると、剣士のサイバーさんが答えた。
簡単な事だ……目を閉じれば良い。
「えーーー!それじゃ、攻撃出来ないじゃない!」
エイレンが驚きの声を上げる。
「それに、モンスターを前にして目を閉じるなんて怖いな。」
ダイキくんも、困ったような表情をした。
「バジリスクには、魔法使いじゃな。
――魔法なら、相手を見ないでも倒せる。」
「見ないで放つなんて、当たる気がしません!」
シイラスさんの言葉に反論した。
「そうじゃな……訓練が必要じゃな。
今回は、私達を見るが良い……どう戦うかを見るんじゃ。」
「はい、そうします。」
ホント、シイラスさんの言動は勉強になる。
カズヤくんの指示も的確だったけど、やはり経験が違うわね。
「あれ、バジリスクじゃないか?」
ダイキくんが指を差す方向を見ると、黄土色をした巨体が動くのが見えた。
「間違いない。倒しましょう。」
そう言うとバーサスさんが盾を前へと突きだした。
三人は、森へと進んで行く。
「蒼き閃光の皆さんは、少し離れていてください。」
そう告げられる。
くやしいけど、目を閉じた状態で戦う自信は私達には無い。
モンスター"バジリスク"は、遠目で見た時よりも大きな体をしていた。
なるほど、ターゲットが大きいから当てやすい……かも。
早速、戦闘態勢に入る三人。
盾役のバーサスさんが、魔法師シイラスさんの前に立つ。
剣士のサイバーさんは、走り出した。
「なるほど、撹乱だな。」
エイレンが感心したように言う。
バジリスクは、その巨体ゆえにサイバーさんの動きについていけない。
――そして、完全にシイラスさんから目を離している。
盾役のバーサスさんは、じっと盾を構えたまま動かない。
「まるで、気配を消しているかのようだ。」
ダイキくんが呟く。
「サンダーストーム!!」
雷魔法が空気を引き裂いた!
バリバリッ!
直撃!
が…バジリスクは倒れない。
「サンダーストーム!!」
ふたたび、強い雷魔法!
バジリスクは、ゆっくりとその巨体を倒した。
「どうじゃったかな?」
「凄かったです!
――でも、あの広範囲魔法を連続で放つなんて!
私には真似出来そうに無いです。」
「ははは、真似しなくても良いんじゃよ。
――自分なりの対処法を見出す。
それが大切な事じゃ。」
自分なりの対処法か……私は心の中でシイラスさんの言葉を繰り返す。
カズヤくんだったら、どうするのかな?
そう考えると、少し胸が熱くなった。




